人食いバクテリア の記事です。
一般に「人食いバクテリア症」と呼ばれる劇症型溶血性連鎖球菌感染症は、脚などの筋肉が急にはれ、数時間から数日のうちにどんどん腐っていく病気。1980年代に米国で初めて見つかった。
日本では厚生省研究班の調査で、91年以来150人以上の患者が確認されており、死亡率は約30%。研究班メンバーの旭中央病院(千葉県)の宇田川秀雄・産婦人科部長によると、妊婦の患者は14人おり、うち13人が発病から1日以内で死亡した。
全員が経産婦で、妊娠後期の30週ごろまでは順調だった。症状は共通しており、38度を超す熱を出し、吐き気や下痢を訴え陣痛が急に起きる。
妊婦の場合は進行速度が速く、筋肉が腐る間もなく命を失ってしまう。死亡した人を調べると、のどと子宮が溶血性連鎖球菌による炎症を起こしていた。
この菌はどこにでもいる菌で、感染しても、たいていはのどがはれる程度ですむ。宇田川部長は、妊娠末期の子宮は血液が大量に流れ込んでいるため、菌の生育が速く、通常型よりも急激な症状を起こしているのではないかという。
国立感染症研究所の渡辺治雄・細菌部長の話
抗生物質がよく効くので、早めに診断できれば、治療が間に合う。臨床現場の医師が、発熱やおう吐、筋肉痛などの症状を見過ごさない注意が必要だ。
「発熱やおう吐、筋肉痛などの症状を見過ごさない」ことが必要であるとコメントされておりますが、これだけの症状で「劇症型溶血性連鎖球菌感染症」を疑いなさい! というのは少し辛いものがありますね。発熱・おう吐・筋肉痛だけなら冬に毎年大流行する「インフルエンザ」と何ら症状は変わりないからです。
「溶血性連鎖球菌:この菌はどこにでもいる菌」はその通りです。風邪の原因の80〜90%はウイルスが原因で、残りがマイコプラズマ、クラミジア、細菌(バクテリア)などが原因です。その細菌の1つが、溶血性連鎖球菌(pyogenes , pneumoniae , anginosus , agalactiaeなど)です。
劇症型溶血性連鎖球菌感染症の厚生省研究班診断基準案として、A群連鎖球菌の分離検出、血圧低下、腎障害(クレアチニン2mg/dl以上)、凝固障害(血小板10万以下など)、肝障害(GOT、GPT、ビリルビン等の上昇)、成人型呼吸窮迫症候群(=ARDS)、落屑を伴う全身性の紅斑様皮膚発赤疹、軟部組織壊死(壊死性筋膜炎・筋炎)などがあげられております。
治療は、アンピシリン12g/日というペニシリン系抗菌薬の大量投与が推奨されております。
なお本症の前駆症状としては、咽頭痛・発熱・筋肉痛が指摘されておりますが、実際には明確に確認できない例が多いとも報告されており、まだまだ本症の解明は進んでおりません。