第10回 日本臨床スポーツ医学会 総会 ワークショップ 1 地域医師会のおけるスポーツ医学 1999.11.6 医師会におけるスポーツ医の役割について 神奈川県 川崎市医師会 健康スポーツ医部会 部会長 羽鳥 裕
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写 【目的】実地医家のスポーツ医の実践活動を紹介し、今後の課題を検討します. 本日、ここにお見えの先生の半数以上が、勤務医、または公的な病院の先生が多いと思いますが、おそらく、このなかの多くの先生が開業というスタンスの診療になると思います.そのとき、開業医・実地医家のスポーツ医が、どのような形でスポーツの現場とかかわりをもてるのか不安である先生も多いと思います.その一端を紹介したいと考えます. 【方法】郡市医師会における健康スポーツ医の活動の実態を調査しました.
表2
スポーツ医としての仕事 % こなしきれない
0 十分に仕事がある
6 ある程度はくる
12 ほとんどこない
70 スポーツ医の活動をレベルで分類しますと、 1.JOC,日本体育協会のナショナルチームのチームドクター、 2.見体育協会スポーツ医学委員会、スポーツ医科学委員会など、国体選手のメディカルチェック、ならびに、ジュニア選手の競技力向上のサポートなど. 3.都道府県・群市医師会レベルで行う地域スポーツ、健康スポーツ、学校・教育委員会など行政主催のマラソン、体育行事の救護、衛生局・保健所での運動処方の指導、特に疾病を持つ人の運動療法、高血圧、糖尿病、肥満症、高脂血症、腰痛症、骨粗しょう症など腎障害、肝障害、虚血性心疾患などまで手が広がってきています. スポーツ医の多くが、日本体育協会公認スポーツドクター、日整会スポーツドクターを持っていると考えますが、さらに医師会に所属すると、健康スポーツ医を取得することになります.しかし、この資格は、医師会産業医、学校医と異なり、なかなか、収入に寄与する環境になりません. また、行政の長、教育委員会、体育協会など行政サイドの意向も強く反映されます. 幸いなことに川崎市は、健康都市かわさきを 宣言していることもありまして、行政側も好意的であります. 医師会における具体的活動 神奈川県体育協会スポーツ医学委員会 神奈川県教育委員会 川崎市体育協会 スポーツヘルパー(生涯スポーツ指導者)講習会・資格証明発行 スポーツ現場での救命救急処置・実地講習 スポーツ医学 シリーズ講習 川崎市教育委員会 中学校、高校におけるスポーツ活動の注意 死亡事故 市民マラソンにおける救護活動 中学校駅伝、小学校連合体育祭における救護 横浜市消防局 川崎市衛生局 保健センター、スポーツセンターにおける運動処方 高血圧、糖尿病、高脂血症、喘息、 高齢者、介護者のための教室、腰痛症、骨粗しょう症 市民対象講習会 例 1.神奈川県体育協会スポーツ医学委員会 における活動 メンバーは、大学、病院勤務医が多い 国体出場選手の短期集中メディカルチェック スポーツ手帳 県医師会との共同制作 ジュニアスポーツ選手の競技力向上・育成強化 スポーツ現場でのメディカルチェック ビクトリーサミットイン神奈川 スポーツトレーナー部会の発足 スポーツテキストの作成 例 2.運動処方の具体例 高度の肥満症、高脂血症、心筋梗塞後のリハビリ 図示 医師会スポーツ医活動における特徴 臨床・実地医学の知識、手技が豊富 複数の科の医師が協同で活動しやすい 地域では選手、受診者の背景も理解しやすい 平日の競技開催ー個人医院の場合は診療に支障 最先端の知識を得られる場が少ない 遠征などに帯同しにくい 長期休暇 比較的高齢の医師が多い 考察と今後のあり方について スポーツの選手、監督など現場の方から見ると、開業医・実地医家のスポーツ医は、競技の練習・チームの遠征などに帯同できないことも多く、いざというときに役立たないという評価があります.しかし、多くの先生が分業しての活動は可能であり、昨年のかながわゆめ国体・身障者スポーツ大会のリハーサル大会および本大会の救護に出動した医師は、川崎市医師会全会員の約25%の協力申し出があり、そのうち10%に相当する102名に出動を依頼しています.神奈川県はほぼどこも同じぐらいの割合でした. 地域のスポーツクラブでは、ラグビー、剣道など選手として活躍する医師もありますが、恒常的にチームドクターなどのスポーツ医活動をしている医師は少なく、多くは、知識を生かす場がないと考えています. 現在、教育委員会、体育協会、各種スポーツ団体との協同活動を行いつつあります. 1.市民マラソンの救護に3名の医師派遣、循環器、整形、外科医師および看護職員、後方病院の確保 コンタクトスポーツに対しての現場待機についての相談が寄せられてきています. 2.中学校駅伝大会の救護 3.小学校連合体育祭(全市の6年生が等々力アリーナで全競技をおこなう)の救護. などがあります. 4.また、市の体育協会のスポーツ指導者派遣事業として、スポーツ指導者にスポーツ医学の最近の知見を知ってもらおうということから、指導者講習会を開いてます.そこでは、必ず、救命救急の人形実習もいれて、現場で役立つ指導者になっていただいてます. 5.また、講習会は、本年は医師を対象に行いましたが、 A 約2時間、コンピューター動画を使っての説明とモデルを使ってのスポーツ現場でのテーピングの実習、 B さらに、トレッドミルなどを使った肥満症などの呼気ガス運動処方の実習をおこないます. C また、糖尿病、虚血性心疾患など、医療と密接にかかわる高度の運動療法の研究をテーマに行う予定です. 6.市民講演会としては、年二回の予定です. 1.勝つための箱根駅伝 順天堂大学のノウハウ チーム監督 沢木教授でたいへん好評でした. 2.中高年の登山の医学 東京女子医大 今井通子講師におこなっていただきまして、約220名の参加を頂きました. 7.年1回、部会誌の発行は、パソコンを駆使して、Pagemakerのデスクトップパブリッシュメントという形で、版下までつくるという方針です.写真、図表、本文 A4版 42ページで、2,000部つくって約15万ぐらいです.約3分の1ぐらいの金額かと思います. 8.今後、学校医部会、産業医部会、内科医会、外科・整形外科医会などとは、互いに研究テーマを持っての連携が期待されます. また、他の医師、トレーナー、運動指導士などとグループを組んでのスポーツ活動のあり方も考えられます. 医師会スポーツ医活動における問題点 1.第一に経済的な裏づけです. 医師会には、医会と部会があります.医会は、内科、外科、産婦人科、小児科などそれぞれ独自の活動が許されると同時に講演会などに医師会からは直接のコントロールを受けず、メーカーなどのスポンサーを求めることも可能です.一方、部会は医師会直属です. 学校医部会、産業医部会、保育園部会などが行政からかなり大きなまとまった金額が援助されます.例えば、学校を一つ持てば年間20万として3校すれば60万になりますし、産業医、保育園も同じでしょう. 一方、健康スポーツ医部会に対しては、金銭的な裏づけがありません.したがって、医師会からの援助が中心になりますので、会長、理事会、執行部の方針で金額が決まります.また、健康スポーツ医部会部に所属すると会員は、県に3,000円、郡市に3,000円、計6,000円の年会費を払います.6,000円のもとを取れるようにしてあげないといけません.これは、産業医部会などとほぼ同じ金額です.また、川崎の場合、大変熱心ですので、950名のA会員数規模で医師会執行部の予算約5,000,000円の補助を頂いております. 2.もう一つの問題点は、医師会の他の部会などと仕事が競合する面があります.今までほかの部会で行っていた仕事を奪う、あるいは下請けになるということがあります. 例をあげますと、直近の例ですが、今年、9月になってから、相次いで、中学校、高校で体育祭の1,500m走でゴール直前に倒れて、的確な救急処置を行っているにもかかわらず、心臓死をされた例が続きまして、学校で行う心臓検診の意味を問い直されている面、あるいは、この競技の必要性などが議論されています.本来学校医がいるわけですが、なかなか、対応できないということで、全校集会、PTA,生徒、教職員、教育委員会などの先生の前でお話をせざるを得なくなっています.今後、クラブ活動のバーンアウトなどを含めて共同事業をしようという計画を立てています. また、産業医部会から、健康スポーツ医部会に対して、社員・従業員の生活指導、運動療法を求められたときに、栄養士、運動療法士などと組んで、集団指導にあるいは、疾病を持つ個人には個人指導が必要となり、具体的な運動処方が要求されています. 【総括】ナショナルチームや競技団体に帯同するトレーナー、スポーツドクターとは異なるスポーツ活動を行う地域医師会の健康スポーツ医の活動を紹介し、21世紀のスポーツ医のありかたを考えました.
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