第10回日本臨牀スポーツ医学会総会 1999.11.6 PM

(医)はとりクリニック 羽鳥 裕 

一般演題

高脂血症における多メモリー加速度計測機能付歩数計の有用性の検討

セクション 1
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目的】高脂血症において運動が重要であり、単独・食事療法・薬物併用にかかわらず、 日常生活の中での運動実践が求められる。運動の効果は、エネルギー消費の促進、筋肉内の血流亢進によりリポ蛋白リパーゼ(LPL)の活性賦活化による.運動継続の難しさは、運動量、運動強度、運動 継続時間などの評価が、主治医と受診者の双方が納得できる容易な方法がなく、このための脱落例も多数見られる。今回、多メモリー加速度計測機能付歩数計(ライフコーダ)により客観的評価が可能であるかを検討した。

 

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【方法】某製造業における検診で、家族性高脂血症の可能性の低い総コレステロール220mg/dl以上または中性脂肪250mg/dl以上の女性21名(51.1±9.1歳)に、運動習慣の把握、体力測定、運動処方を行い、ライフコーダをつけ、平均運動量、運動強度、10分間以上の運動継続頻度、ステップレートなどを計測し、およそ4週間ごとにパソコン画面にグラフ表示し、フィードバック運動処方を行った。11から17週後に再計測ならびに血液生化学検査を行った(A群)。 その対照として万歩計のみによる従来型の指導(B群)と比較検討した。男性については、前後で検査できた症例数が少ないので検討から省略した.また、LDLコレステロールは、健診の場では計算から求めるため実測でないので省略した.

.一部の症例については、トレッドミルによる呼気ガス分析を行い、ATポイントの酸素摂取量、ATポイントにいたる到達時間、ならびにピーク酸素摂取量の測定も行った.

 

 ライフコーダは、4秒ごとの信号を10段階の運動強度とし、その2分間の最多値を4段階の身体運動レベル 無、微少(運動レベル1未満)、軽度(運動レベル1,2,3)、中等度以上(運動レベル4から9)に記録をし、約7週間分の記録を保持でき、パソコンに赤外線で転送したあとは、24時間の身体活動のトレンドグラムを表示させることができる.平均歩行数、運動強度1以上の歩行時間、歩行数/歩行時間のステップレート、運動量、総消費量/基礎代謝量の%BMRなどが求められる.また、イベントボタンを利用すると、食事時間と運動開始時間の関連が求められる.

 

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症例1.を示す.前半の3週間には平均200kcalの運動量であったが、後半の3週間においては平均400kcalの運動量が増加しており、5.13からは、赤い印で示されるようにジョギングも一定の時間はじまったことがわかる.また週1回スポーツクラブに通っているために火曜日だけ運動量が多いこともわかる.このようにフィードバックが有効であった症例もある.

 

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症例2.を示す.この方は、フィードバック無反応例で、運動量は平均をる.145Kcal、4700歩、最大でも288Kcal、8300歩で、ジョギング相当運動もきわめて少ない。

残念ながらこのような例もあるため、早めに投薬治療開始せざるを得ない例も見られる。

 

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ライフコーダをつけたA群と、従来万歩計のB群比較を示す.X軸は、もともとの一日あたりの歩数、前のコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪である。Y軸には、運動後にどれだけ変化したかの実数値を示す.前の歩数はA,B群ともに大きな差はないが、A群のほうが歩数の増加が大きいことを示している.(p<0.01)また、コレステロール、中性脂肪についても前の値は差がないが、減少効果が見られ前の値の大きいほど減少が大きいという傾向にあった.

 

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体重、BMI,体脂肪率は、A群、B群ともに平均では減少傾向にあるが、A群の体重の減少のみ有意であったが、その他は有意差は出なかった.

 

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総コレステロールと中性脂肪のA群、B群の比較を示す.コレステロールについてはA群が有意に減少しているが、中性脂肪については、前の値がA,Bで差があり、従来型の万歩計でも降下している.

 

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HbA1Cについては、A群のほうが減少が大きいが、統計上は有意差が出なかった.また、尿酸については、運動により上昇する報告も多いが、今回の検討では、体重減少などの効果もあって、変化はなかった.

 

 

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一部の例について、呼気ガスならびにDPBP法によるトレッドミル負荷検査を行ったが、

運動耐容能時間(秒で示している。)の延長が見られた.しかし、A、Bでは差はなく、ここには示していないが、ATポイントにおける酸素摂取量にも差は出なかった.

 

【結果】A群は、体重は、61.7kgから59.9kg(p<0.05)、BMIは25.7から24.9、体脂肪率は31.7から30.2%となった。総コレステロールは、240.1から230.9(p<0.01)、中性脂肪は224.0から182.0(p<0.05)であり、HbA1Cは減少傾向にあるが、HDL、尿酸には差がなかった。B群は、体重の減少は4週目まではA群と差がなかったがそれ以降は減少は緩慢で、総コレステロールも低下したがその程度は小さかった。

A群は、運動の脱落も少なくライフコーダは運動処方に有用と考えられた.

 

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【考案】高脂血症は、受診者の病識も少なく、高脂血症の指摘があるまでは運動の習慣のあるものが少ない

 JLITなどの、補強検診で。Sony健康管理室から、企業検診などで、しばしば、運動療法の、食事指導による生活変容プログラムが提案あされるが、3月の観察で、Tchoが5%程度下がるが、降下を維持することが難しく、リバウンドもあることが示唆されている.

 

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【総括】高脂血症において、運動量、運動強度、継続時間の評価を加えることは、運動処方の質的改善に有用である。パソコン画面上に運動の量、強度の日内変動、曜日ごとの表示ができるので、運動実践のコンプライアンス改善に有用である.