内科疾患における運動療法の実践的な方法      

     羽鳥 裕  yutaka@hatori.or.jp

 

神奈川県体育協会スポーツ医学委員会 川崎市医師会健康スポーツ医部会会長

 

はじめに

高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満症、心筋梗塞後に運動療法が有効とされ一部保険適応となり、労働省のトータルヘルスプロモーションでも、健康診断の事後指導に食事・運動療法を積極的に取り入れるよう求められます。しかし、個々の症例で、必要な運動の種類、頻度、強度、時間は異なります。まず、メディカルチェックで安全を確認し、フィットネス測定をして適切な運動処方を作ります。運動はからだに良いのかという議論もありますが、統計から見れば、身体活動量が多い、運動を継続的に行う、体力レベルの高い人では虚血性心疾患、高血圧、肥満、脳卒中、死亡数などで優れています。ロンドン二階建てバスの運転手と車掌、ホワイトカラーとブルーカラーの循環器疾患発症の差、ハーバード大学卒業生追跡調査の運動習慣有無による検討などがあります。

 

メディカルチェック

病気の種類・病期によっては運動は有害になりますので、メディカルチェックは必要です。会社健診、人間ドック、老健法の健康審査などの古すぎないデータを効率よく用います。体型、循環器疾患、代謝疾患のみでなく、肝機能、腎機能、呼吸機能が運動制限の要素になりますのでチェックします。運動負荷は必須ですが、欧米での統計では、最大強度負荷で、死亡は負荷中・直後で0.01%以下、心筋梗塞は0.04%、入院を必要とする合併症は0.1%とあります。有疾病者・高齢者がスポーツクラブで体力評価の目的に、安易にモニターなしで運動負荷テストをおこなっていますが、心電図モニターと判定評価に医師は必要です。

(図―1 Dukeノモグラム)

12年前におきた国体選手の競技後の急死をきっかけに、10年前から神奈川は国体候補選手にメディカルチェックを義務付け、6年前から県スポーツ医部会と県体育協会で作ったスポーツ手帳を携帯するよう求めています。一般のスポーツ愛好家・有疾病者にも持っていただいて、主治医とスポーツコーチなどの往復カルテのようにしています。問診、既往歴、家族歴、現病歴などほかにスポーツの記録、運動に影響を及ぼす薬の記入します。また、運動負荷心電図、血液、尿などのほか、呼吸機能、体脂肪率(原則は水中法)、呼気ガス分析、心臓超音波などのデータも記入します。

 

フィットネスの測定

1・エルゴメーター、トレッドミルの機械には、速度、抵抗、傾斜、受診者の体重等から仕事率を算定し、酸素消費量を推定するデータが出てきますが実測でないため信頼性は限界があります。

2・多段階運動負荷呼気ガス分析法は、1分1METsの漸増法で負荷を増加しRPE、血圧、心電図などをモニターし、直接呼気ガスを、時間あたりの酸素摂取量、二酸化炭素排出量、換気量、換気閾値を測定し、最大酸素摂取量、呼吸商、嫌気閾値(AT)ポイントを算出します。被験者をオールアウトまで追い込んで、酸素摂取量が増加しないレベリングオフするまで調べる最大運動負荷試験ですが、被験者の安全を確保するために、熟練したスタッフと、被験者をトレッドミルの巻き込まれないように空中に引き上げる装置を備えていなければいけません。

3・臨床医が外来で普通に行っている症候限界性最大下運動負荷は、血圧、心電図変化、呼吸状態、胸痛、疲労などの症状を目安に負荷量を決めます。2と同じように検査をしますが、オールアウトまでは行わず、外挿法により最大酸素摂取量を推定します。ただし、ある年齢で最大心拍数は同じである、負荷中の心拍数と、酸素摂取量には正の1次相関があるなどの仮定があります。( 図―2 年令からの推定方法 ) 結核、肺癌などで片肺切除、COPDなど高度の換気障害、β遮断薬を服用中などでは、最大心拍数の推定が難しいので、実測のピーク最大酸素摂取量を目安にします。このとき、呼吸商の変化から脂肪燃焼の効率も見られますので、糖尿病の運動指導、減量プログラムには至適運動強度を決めるのには、最もふさわしい方法です。( 図―3 Time trend法 神奈川県予防医学協会 小野寺由美子氏提供)  最近は、リュックを背負うようなタイプのポータブルな機械もありますので、陸上選手、バスケット、サッカー選手などフィットネスデータが必要な場合や、COPD患者さんなどでは24時間心電図などと同じように計測できます。(当日はVTRで見ていただきました。) また、最近は、5万円ぐらいで、耳た・指先の毛細血10μlで乳酸測定による嫌気閾値(乳酸閾値LT)、頻回の測定もできるので、たとえば、陸上長中距離スポーツ選手の、疲労度・フィットネスの測定して現場ですぐに練習メニューの変更などが機敏に行えます。

 

体脂肪の測定方法

水中体重測定法が最も正確ですが、深いプールと息を吐き出して潜る技術が必要です。インピーダンス法は、簡単に測定できますが、再現性に問題がありますので、±5%ぐらいずれることを説明します。皮下脂肪をつまんではかる方法(キャリパー法)で熟練者が計れば再現性も良く安定した方法です。

 

内臓脂肪量の推定方法

 臍の高さでCTをきって、皮下脂肪、内臓脂肪を測定するのが最も信頼性がありますが、レントゲン被曝の問題もありますので、臨床的には超音波で剣状骨直下でAFIを求めます。

 (図―4 超音波内臓脂肪量の推定 羽鳥 実測データです。)

ウエスト・ヒップの測定(W/H)は、ヒップは最大周囲、ウエストは臍囲で測定します。W/H比が男性1.0、女性0.9を超えたら要注意で、りんご型、洋ナシ型などとも表現されます。内臓脂肪を考慮して体型を6つの形に分けると、標準体重以下でありながら体脂肪率が多いというダイエットを頻繁に繰り返してヨーヨー現象を起こした除脂肪体重が落ちてしまう若い女性の隠れ肥満タイプ、若い時に痩せ型で中年になって内臓脂肪が増えた見かけ正常中年男子タイプなどに注意が必要です。

 

運動処方の原則

運動理論に基づき、合併症に注意し、個人の処方が原則になります。ウオーキング、水泳、水中歩行など運動が長時間、四肢の大筋群、規則的、好気的運動を持続すれば最大酸素摂取量は改善して行きます。ウエイトトレーニングなどのレジスタンス運動は、最大酸素摂取量を増やす要素は少ないですが、全体の体力アップには必要です。筋の繊維構成とインスリン抵抗性などを見ると、速筋は遅筋に比べて、インスリン感受性が低く、脂肪利用が少ないといわれます。Wadeによれば、体脂肪率は、速筋の多いほど、呼吸商が高いと述べています。

持久力は、中等度の運動でも強い運動と同じ程度の効果が得られます。一方、腰、膝、足関節などにかかる負担は強い運動ほど増加します。持久力増加のための運動は中等度の運動で十分になります。

 持続時間は運動をはじめたばかりのときは、短時間の運動を、一日数回からはじめます。ウオームアップとクールダウンを除いて、20から30分の疲労を残さない運動が勧められます。さらに、心筋梗塞後などデコンディショニングされた例、運動耐容能が3METs以下の場合は、10分以内の短時間運動を一日の中でも数回、毎日行うのが良く、5METs以上の耐容能があれば、一日1回30分で1週間に3回程度でも十分となります。

 運動コンディショニングのすすめかたは、低レベルの好気的運動(最大酸素摂取量の40%)と、低レベルの筋持久力運動から始めます。疲労を持ち越さぬよう、関節・筋肉の障害を起こさぬようはじめます。

改善期は、中から中高度の好気的運動を行いますが、二次予防の人、運動から遠ざかっていた人、高齢者は、低めの目標で、時間をかけて目標に近づけます。

維持期は、運動能力の適性レベルを維持するために行いますが、飽きないようにする工夫が必要です。

内科的運動療法でも筋骨格系の柔軟性の確保は重要です。上肢、頚部、大腿後部、背筋を含めたストレッチを必ず入れます。静的ストレッチは自分の徒手で他動ストレッチを、等張性抵抗運動は頚部、腰部関節の柔軟性に必要です。動的爆発的ストレッチ、PNFストレッチは関節可動域拡大、柔軟性を増すのに有効ですが、理学療法士などの指導の元に行うべきです。好気的運動は、下肢筋群の運動が多いため、上肢・体幹の筋群、筋持久力への改善が少ないので、体力アップには、レジスタンストレーニングを付加することが勧められます。筋持久力だけでなく、除脂肪体重の増加(主に筋肉、結合織、骨量)がみられます。また、サーキットウエイトトレーニングなどの連続運動が、血圧の低下、耐糖能の改善、体脂肪の減少、脂質動態の改善、呼吸循環動態の改善などがしめされています。筋力の増加には最大に近い重量を少ない回数、筋持久力の増加には軽い重量を回数多く、血圧に影響しないよう息こらえをしないように行います。

 

疾患別運動療法

高血圧

JNCYでも規則的好気運動は、体重減少、虚血性心疾患発症の減少、全死亡率が下がることが報告されています。正常血圧の人も運動量が少ない人は20―50%高血圧になる率が高くなります。運動量は中等度の運動30分できるだけ毎日が推奨されますが、極端に運動量不足の人には軽い運動からはじめます。正常血圧の基準は、130−85と低めになり、軽症高血圧の運動療法が積極的に求められています。過体重を減らす、塩分制限、アルコール制限、飽和脂肪酸・コレステロール摂取制限、Ca,K,Mgの摂取などを行い、運動を行います。適切な運動持続は、収縮期、拡張期とも10mmHg程度下げます。高齢者では中等度、あるいは低い運動強度で降圧の効果が見られます。血管拡張薬を使用しているときは、血液再配分の点からクールダウンの時間を長く取ることを勧められています。

 

糖尿病

糖尿病患者は、非糖尿病にくらべて、虚血性心疾患の発症頻度が3倍高いといわれます。NIDDMの40%に大血管障害をひきおこし、そのうちの60%が虚血性心疾患です。高血糖が糖毒性により酸化LDLを増加させ、インスリンの作用不足はLp(a)リパーゼ産生減少のためHDL活性の低下につながります。Lp(a)は線溶機能を阻害し、血管内皮の泡沫細胞にとりこまれ、心筋梗塞発症のリスクを増やします。未コントロールのIDDMの場合は、眼底出血、腎症の進行、高血糖、低血糖、血圧の異常反応等があり運動は原則禁忌です。運動時のインスリン不足は、筋肉、脳へのグルコース輸送が不足し、遊離脂肪酸がつかわれるためケトンが発生し糖尿病性ケトーシスとなります。運動中の血糖が400mg/dlであれば運動は禁忌です。運動にはインスリン様効果があり運動誘発性低血糖が生じます。低血糖は、運動直後だけでなく数時間後におきることもあり、運動前に炭水化物の摂取を増やしておくなどの注意が必要となります。進行した糖尿病性網膜症がある場合は、網膜症が寛解してから運動に取り組みます。コントロールされたIDDM,ケトーシスのないNIDDMならば運動療法を毎日行うことがすすめられます。糖尿病患者の運動療法導入には、血糖の頻回チェック、運動前に炭水化物の摂取、インスリイン注射を行っているものは2IUぐらい減らす、インスリン活性がピークになるときは運動を避ける、運動が長いときは、運動中に炭水化物の摂取、低血糖による事故を避けるために複数で運動をする、周囲に低血糖の処置を知らしめるなどの注意をしましょう。

NIDDMは、インスリン抵抗性の増加がありインスリン過剰分泌となって、血管壁のコレステロールを蓄積して粥状硬化を起こします。インスリン抵抗性の増加は、耐糖能異群(IGT)、肥満、過食が続く人にもみられます。

 

肥満者

最大酸素摂取量の改善、高血圧、高脂血症、糖尿病のリスク改善、体重減少を目標とし、1週間あたり1,000kcalの消費をめざします。300kcal/回であれば週3回、200kcal/回であれば週4回以上となります。エネルギー消費(キーワード*5)を参考にして計算します。エネルギーバランスがプラスの状態が慢性的に続いたとき、体脂肪が増加し、肥満症となり生活習慣病のリスクが確実に増えます。運動習慣は、安静時の基礎代謝も亢進するため、減量に有効です。運動習慣のない、または運動に興味を示さない肥満者(特に高齢者)の運動様式の選択は重要です。膝、足関節、脊椎などの関節などに負担がかからないようにします。心肺系のコンディショニングも良くなく、血圧・心拍数の異常な上昇や心電図変化もおきますので、機械的な設定にならないように軽い運動から、減量に必要な1,000−1,500kcal/週に持って行きます。このため、軽い運動で、頻度を増やし、持続時間を長くすることからスタートします。最近、6週間記録できその場でパソコン表示できる万歩計が発売されていますが、1月に1回外来にくるような人には、よい動機づけになります。まずは、現在のエネルギー消費を100Kcal増やすため、歩くと30分、歩数で3,000を増やします。 通勤を、車からバス電車に、昼食を外で、買物を遠くへ、自分でお茶を入れる、部下を呼びつけずに自分で行く、などがすすめられています。慈恵医大の大野先生の、一無(喫煙)二少(アルコール、塩分)三多(睡眠、運動、多趣味)、慶応大山崎先生の5Sを避けよ(salt,sugar,snack,sitting,smoking)を参考にしましょう。

 超肥満者・精神科領域などで、超低カロリー療法などがありますが、代謝異常、ケトーシスをおこさぬよう脱水や筋たんぱくの崩壊がないように厳密に行います。好気的運動によりエネルギーバランスを負に、インスリン感受性を良くし、レジスタンストレーニングにより、筋量を増加させるようにします。しかし、例えば170cm、100kgの人が,運動だけで減量しようと、ランニングを毎日1時間行っても、消費できるのはおおくて500kcal(普通の人ならば300kcal)ですから、1kgの脂肪を取り除くには2週間以上かかります。1日1,600kcal以下の摂取、間食・脂肪食をさける食事療法、行動修正療法などの心理学的な手法も必要です。

 

虚血性心疾患

心筋梗塞後の早期離床、早期社会復帰プログラムの有効性が証明され、心臓リハビリの概念が定着しました。急性発症、入院連続モニター期、外来リハモニター監視期、外来リハ非モニター期にわけますが、最大運動能力が7METs以上、AT時は4METs以上あれば日常生活に不自由はなくなります。AT処方は、不整脈誘発、虚血、心機能の面から安全で有効であるとされます。二次予防の面からも、心臓リハビリが重要ですが、再発因子の除去と長期にわたる日常生活に取り込んだ運動療法が求められます。京大第3内科では、心筋梗塞の慢性期だけでなく心不全にも応用できるとしています。卓球、バドミントン、ミニテニスなどを週3回うち1回は二時間行い、ウオームアップ、20分の運動(たとえば60m/分のスピード)、5分休憩を繰り返し3セットの後クールダウンとします。心筋梗塞3月以内は、ホルター心電図、モニターを行い、心拍数が120/分を超えないようにします。心室の拡張能の改善、冠血流予備能の改善が見られます。アメリカ心臓協会、Boston大学のClaudia Choe MDによると、2,500人の医師を対象にして、週1回の運動で虚血性心疾患のリスクは3分の1、週5回行えば45%減少すると報告されています。1回の運動の長さ・強度と頻度を比べると、一日11分から24分の運動でも十分で、頻度が多いことが重要であるとされています。

 

脳血管障害

脳血管障害と虚血性心疾患の危険因子は一部異なります。くも幕下出血の原因は、血管分岐部の血管構造の脆弱による脳動脈瘤が原因となりますが、脳硬塞の原因は細動硬化性、アテローム血栓性とにわけられます。脳底動脈から直角に枝分かれして大脳基底核にゆく穿通枝があり、硬塞はラクーナと呼ばれ、細動脈硬化が原因で、高血圧、多血症、血小板凝集機能の亢進が基礎疾患となります。2分枝を繰り返して脳内に入る皮質枝の場合は、硬塞はアテローム血栓性のことが多く、高脂血症によるものです。冠動脈の内皮細胞が疎であるのに比べ、脳動脈は内皮細胞が密にあり、物質の選択的透過性の血液脳関門と抗血栓作用を有します。血中のLDL濃度が高まると内皮細胞の透過性が上昇して、動脈壁内に入り込みやすくなり、マクロファージに取りこまれて泡沫細胞を作って動脈硬化巣が完成します。さらに、Lp(a)はプラスミノーゲン線溶を阻害して、血栓をできやすくしさらにマクロファージに取りこまれて進展させます。

したがって、脳血管障害の運動療法は、血圧を下げる、凝固能を亢進させないようにする、高脂血症の予防をすることがゴールになります。2次予防は、ADL,IADLの自立にあり、歩行能力、上肢の運動能、認知障害異常を取り除くことにあります。

 

肺疾患

慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺繊維症などでは運動時のぜん鳴、息切れなどがあります。肥満の進行、呼吸器感染症、薬物負荷なども増悪します。自覚的呼吸困難度、最大換気量(MVV)、1秒率(FEV1.0)、肺活量(VC)、、非観血的オキシメーターによる酸素飽和度(Sao2)測定が容易です。安静時のSao2は、動脈血のPao2と良く相関しますが、強度の運動時、Sao2が85%をきると信頼性はなくなります。COPDなどの呼吸障害があると慢性の低酸素血症のため正常呼吸機能の人よりも7割以上脳血管障害になる率が高くなります。呼気ガス併用式運動負荷試験を行い、息切れの原因、重症度を求めます。運動誘発性喘息(EIA)は、運動中にぜん鳴、呼吸苦がつよく出現します。負荷後に、FEV1.0の15%以上低下したものは陽性とします。間質性肺炎、肺繊維症では換気障害は高度で運動制限を行います。原発性肺高血圧症では、シンチ、心臓超音波、血行動態を調べて慎重な指導を行いますが運動禁止となることが多いでしょう。呼吸苦があっても、呼吸予備能が正常で、運動中にSao2の低下が起きない場合は心因性呼吸困難も考慮します。

 

睡眠時無呼吸症候群

高血圧、肥満、糖尿病、内臓脂肪蓄積とならんで、死の5重奏ともよばれ、睡眠時の無呼吸が細胞レベルの低酸素とし夜間高血圧、持続高血圧をひきおこし、インスリン拮抗物質、インスリン利用阻害から耐糖能異常をおこします。高度の肥満がこの病態を起こすひとつで、鼻マスク(CPAP酸素吸入)、口腔マウスガード、手術などのほかに運動療法による減量が積極的に薦められています。

 

骨粗しょう症

運動により、直接骨量が増える量はわずかですが、筋力、柔軟性、協調性などが改善して、転倒しにくくなります。

 

高齢者

高齢者は、若年にくらべて個々の基礎疾患、運動耐容能、活動性がさまざまで、負荷に適応する時間が遅延し、定常状態に達せず、バランスが悪く、症状だけ見ていると、しばしば過負荷となって疲労困憊してしまいます。低い運動強度から、負荷の増加量を少なくし、ウオームアップ、クールダウンに時間をかける必要があります。女性では骨粗鬆症の影響が大きく、身長が縮みますので体型、体力評価に工夫が必要です。日常活動の、信号をすばやく渡れる、階段で転ばない、つまずかない、息切れしない、関節などが痛くならないなどを目標とし、視力、聴力、筋力、心肺機能、判断力の低下を補えるような体力維持、運動指導をおこないます。

 

おわりに

慢性肝炎、腎不全などでも運動がすすめられ、直腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌などいくつかのがんで発症予防効果があります。そして、慢性疾患進行予防の運動量は、以前いわれていたよりも強くなくて良いのですが毎日継続できることが重要です。スポーツ医学、一般医療、産業医活動だけでなく高齢化社会の介護法の始動などで、かかりつけ医としてデータに裏打ちされたコメントがもとめられます。

最後に、講演の機会を与えていただきました横浜市医師会、横浜スポーツ医会の鳥山会長         はじめ内藤先生、久能先生、古谷先生など多大の感謝を申し上げます。

 

 

 

 

 

参考キーワード

1.karvonenの式

目標心拍数の下限 = (最大心拍数 ― 安静時心拍数)× 0.5 + 安静時心拍数

目標心拍数の上限 = (最大心拍数 ― 安静時心拍数)× 0.85+ 安静時心拍数

 

2.%最大心拍数   = 運動強度 × 最大心拍数 × 1.15

 

3.最大心拍数    220 − 年齢           低めに出る

     または 210 − ( 年齢 × 0.5)    高めに出る

 

4.1METs = 3.5 ml/kg/min (体重1kgあたり1分あたりの安静時酸素消費量)

 

5.1kgの脂肪 = 7,700kcal

6.1lの酸素消費   =  約 5Kcalのエネルギー消費

   1分間あたりの運動によるエネルギー消費

       kcal/min = METs × 3.5 × 体重(kg)× 5 / 1,000

 

7.運動強度  酸素摂取量  =  R+H+V

     R  安静時の基礎代謝

     H  水平移動要素  あるく  0.1×移動速度(m/min)

ランニング 0.2×移動速度(m/min)

     V  垂直移動要素 0.9×移動速度×角度(%)

 

8.自覚的運動強度 (rate of perceived exertion)Borg Scale

補助手段として、運動のフィットネスをしめす、

およそ   原型RPE = 心拍数 / 10  

      原型RPE11(まだ楽)、12(やや強い)、13(ややきつい)がATレベルに近い。 

      ベータブロッカー使用中等心拍数では客観的評価が難しいときには参考にする

 

9.呼吸商 (RQ)

   細胞レベルのエネルギー利用される基質の組成を推定する

               炭水化物の酸化は、1.0 脂肪の酸化は、0.7

 

 

10.運動によるエネルギー消費 (60kgの人が100Kcal消費する時間)(日本体育協会)

あるく    ゆっくり    30分

       はやあし    20分

ジョギング          12分

自転車    平地ゆっくり  16分

階段     のぼりゆっくり 12分

       くだり     25分

掃除     掃く・拭く   25分

水泳     平泳ぎ     10分

ゴルフ            20分

 

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