TAC LIFE
冬号
特集/冬こそ効果的なスポーツを
今年もかぜの季節がやってきました。気温が下がり、空気が乾燥する冬は、かぜのウイルスが蔓延しやすい季節です。また、高血圧や心臓病が気になる人が注意しなければいけないのもこの季節。忘年会や新年会などで飲酒の機会も増え、摂取カロリーがいつもより増えるのもこの季節。
こんな冬こそ、スポーツで基礎体力をつけて、健康維持に努めたいもの。
効果的でじょうずなトレーニングで、病気しらずの冬を送りましょう。
冬に気をつけたい
呼吸器疾患と高血圧・心臓病
万病のもとと言われるかぜ。絶対にかからないようにするのは至難の業ですが、こういう時にものをいうのが、日頃から鍛えている基礎体力や免疫力です。
もう一つ、この季節にとくに気をつけたいのが、血圧です。室温と外気温の差が大きいために、普段から高血圧の人はもちろん、血圧値が正常の人でも、冬には上がりやすい状態になります。
かぜにかからない基礎体力をつけたり、血圧をコントロールするには、運動、とくにエアロビクスやウオーキング、ジョギング、エアロバイク、水泳などの有酸素運動がたいへん効果的なことは既に周知の事実といっていいでしょう。
基本的には、自分の体力や体調にあった運動をいつもどおり続けていくことがいちばんなのですが、実は人間のからだの反応は夏と冬とで異なってくるのです。まず、本格的な冬になる前に、もう一度メディカルチェックを受けて、健康状態を確認しておきます。
そして、次に述べるような点に留意して、じょうずな冬のトレーニングを実行してください。
こんなことに注意して
トレーニングする
ウオーミングアップは夏よりも時間をかけて行ってください。筋肉も寒さで縮こまっていますし、関節も硬くなっています。念入りな準備運動で十分温めてからトレーニングに入ります。温め方が十分でないと、運動の効果も上がりません。
運動中には、まず鼻呼吸を心がけること。乾燥した空気が直接咽頭や気管支や肺に入ると、かぜをひきやすくなります。空気は鼻を通る間に、約90%も加湿されますので、必ず鼻で空気を吸うように。どうしても息があがって口呼吸になってしまう人は、薄くてもいいのでマスクで加湿するのもよいでしょう。
また、運動中の血圧にも気をつけて。冷気(外気)に剥き出しになっている部分があると血圧が上がりやすいことがわかっています。首にはタオルなどを巻いて、手には手袋をして、必ず保護してください。
運動によって血圧が上がるのは自然な反応ですが、運動直後に測ってみて、上の血圧値が180以上になっているようなら要注意です。一度医師の診断を受けて、運動を続けていいかどうか、相談しましょう。
そのほか、運動後に自分で手首や頸動脈で脈拍を測る習慣をつけておくといいでしょう。正常な心臓は、運動直後に脈拍がたとえ200近くまで上がっていても、5分もたてばほぼ運動前の脈拍数近くに戻ります。しかし、潜在的に虚血性心疾患や心不全などがあると、脈拍数がおちません。それをチェックするために、運動直後、1分後、2分後、3分後…と定期的に測って、自分の脈拍の戻り具合を知っておきましょう。
循環器系の疾患を防ぐには、運動後の水分の補給も大切です。夏に比べて汗の出も少なく、喉も渇かないかもしれませんが、運動後は必ず、最低コップ1杯、200ccの水を飲みましょう。そして、運動した日はとくに、夜寝る前にもコップ1杯の水を飲んでおいてください。これは、夜間に血液の濃度が上がるのを防ぐための対策です。明け方トイレに起きた時に脳卒中や心筋梗塞で倒れた、とよく聞きますが、この発作は就寝中に血液の濃度が上がっていることに加えて、朝10時くらいまでが「朝の自律神経のあらし (morning serge)」と呼ばれる交感神経と副交感神経の変わり目に当たるために起こるのです。
クーリングダウンもストレッチなどを必ず行いましょう。筋肉に疲労物質が蓄積するのを防ぎ、脈拍、血圧などをゆっくりともとに戻してやります。
おろそかになりがちなのが、運動後のシャワーのあと。かいた汗を十分引かせて、髪の毛はきちんと乾かして外に出るように。外気温が低いことを忘れてはいけません。
そして終わったあとは必ずうがいを。
ちょっとした注意点を知らなかったために効果的なトレーニングできなかったり、かえってからだをこわしてしまったのでは、なんのための運動かわかりません。
冬のトレーニングのポイントをおさえて、効率のよい運動を実践してください。
羽鳥 裕《はとりゆたか》/医学博士
医療法人社団はとりクリニック
神奈川県予防医学協会精密総合健診部部長、日本体育協会公認認定スポーツドクター、
川崎市健康スポーツ医部会会長、循環器専門医