過去記事はこちら 
http://hatori.or.jp/chosaku_0310/1001_/touhokujishin_1103/touhokujishin_top.html

INDEX
1.聖マリアンナ医大放射線科中島康雄教授 神奈川県医師会会報から
2.ボランティア活動 軽度の外傷処置について 東北大鈴木先生から

3.地震がきたら、、、救急のMLから

5.東京電力の福島第一原発の事故の賠償案がひどすぎる。河野太郎
6.電力を市民の手に取り戻そう!エネルギーの民主化を 田中優
7.チェルノブイリ 20年後の真実
8.東京電力 原発補償  青森本田先生から
9.電力自由化案

 

 

 

1.聖マリアンナ医大放射線科中島康雄教授 神奈川県医師会会報から
放射線被ばくの考え方(福島第一原発事故を通して考えること)聖マリアンナ医科大学放射線医学講座 中島康雄 
詳細は 5月号の会報をお読みください。

、、、、、、、、、、、、、、、
、、、、、まとめ、、、、、、、
今回原稿執筆の機会を与えて頂いた神奈川県医師会の諸先生方に感謝申し上げます。被ばくについて勉強することによって自分自身緊急時の放射線被ばくについてまだまだわかっていないことを再確認させられた。一般の方も感覚的に怖がって福島産の農作物を避けたり、転居あるいは屋内に閉じこもったりすることはそのような行動によるデメリットも考慮した上で行動されるよう期待したい。放射線は数ある人体への影響因子の一つに過ぎず測定可能であることも重ねて強調したい。従って今後は食品汚染、被ばく状況の厳重なモニタリングを続けることが必要な施策と考える。
いずれにしても今回の大震災と原発事故は日本国民だけでなく世界にも多大な影響を及ぼした。とりわけ中曽根政権時代から長い間続いた自民党政権と産官が国策として進めてきたエネルギー政策の根幹を揺さぶるものとなった。幸か不幸かこの大惨事が民主党政権に変わった後に起こったことは我が国のエネルギー政策の根本的見直しを可能にする絶好のチャンスとも言える。過去に何度も国際原子力機関IAEAは日本の老朽化した原発を査察してきたがそこで何が指摘され、またそれによって何かもたらされたのかを公開して議論を深める必要がある。いずれにしても、原発の耐用年数が10―30年という中で初期投資、廃炉費用も含めると40年以上(60年とする意見もある)旧式の原子炉と施設を使用し続けなければ採算の合わない原発を国の政策として推進してきたことを冷静に検証し新たな政策転換に進むべきであろう。幸い最近政府は成長戦略の中で重要な位置づけをしていた原子力エネルギー政策の転換方針を打ち出されたことは注目すべきである。そのためには電力供給に関する様々な規制撤廃が必要条件となる。我が国の経済は当分苦しい状況が続くと思われる。しか
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2.軽度の外傷処置について 東北大鈴木先生から
■ 鈴木隆哉:東北大学病院 呼吸器外科
■軽度外傷の対応について
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4月30日、仙台市が運営する夜間急患センターで診療しました。いつにもまして軽
傷外傷患者が多かったがのですが、その中に被災地でのボランティア活動中に受傷し
た例が多数ありました。慣れない作業ということもあり、これからも不意の怪我は多
いと予想されます。受診時に誤った応急処置を施してくる方も見受けられたため、軽
傷外傷(切り傷、刺し傷、擦過傷など)の簡単な対応についてまとめてみました。

■適切な装備をする。

 瓦礫撤去作業は過酷で、危険度の高い仕事です。足場もわるく、転倒しやすい状況
です。先の尖った建材やガラス片など危険物も散乱しています。怪我を未然に防ぐた
めには適切な装備が必要です。日常的な傾向として、外傷の8割は顔・頭部・手に集
中しますが、被災地での活動にはこれに足の外傷が加わります。底や足首の保護が十
分でない靴のせいで受傷してしまうこともあります。厚底で足首まで保護できる登山
靴のような靴が望ましいと思います。また手袋は必須ですが、いわゆる白い軍手は容
易にほころんでしまうため、過酷な作業には不十分です。ぜひ丈夫な建設作業用手袋
を装着してください。装備だけでなく、コンディショニングも大切です。単調な作業
を延々と続けると、それだけ集中力が途切れたり、脱水になったりして怪我をしやす
くなります。マメに休憩をとることはもちろん、交代で作業できるようにグループを
マネージメントする必要があります。

■受傷したら患部を真水でよく洗う。

 傷の大きさや受傷機転に関わらず、怪我をしたらまず患部を真水(できれば流水)
でよく洗ってください。患部を強くこすったり、勢いの強い流水で洗う必要はありま
せん。傷の表面についたゴミや出血の際の凝血が適度に洗い流されれば十分です。患
部だけでなく周囲の汚れもよく落としてください。また比較的大きな破片が創部に
残っていたら、注意深く取り除いてもらって構いません。細かいガラス片などは無理
にとらないでください。洗う水は水道水で構いません。濁っていなければ井戸水でも
構いません。ただし海水やアルコール飲料は使用しないでください。傷の消毒は必要
ありません。汚れが落ちれば十分です。この段階であまりにも汚染・異物混入の程度
がひどい傷、また出血の多い傷については次の段階を飛ばしてタオルなどでかるく患
部を覆い、医療機関を受診してください。

■患部のみを「軽く」圧迫して止血する。

 2cm程度までの切り傷・刺し傷であれば、ゴム手袋などをした指で傷を塞ぎ軽く圧
迫して止血してください。また2cm以上の大きな傷、創面が広い擦過傷、挫滅創など
についてはきれいなハンカチ・布などで覆い、手で軽く圧迫してください。もし使用
していないオムツ・生理用品などがあれば、吸水面を創部に当てて軽く圧迫すると非
常に効果的です。圧迫止血の際は、あまり強く抑えないことが大事です。ある程度患
部に血流がないと、血小板や凝固因子など生体の止血機能が働きません。創部から血
が流出してこない程度の圧迫で十分です。同じ理由で、包帯もあまり強く巻かないで
ください。血が滲みてきても已むを得ないくらいに考えてください。また患部より中
枢側(例えば指であれば指の付け根、手であれば手首など)を強く縛って来られる人
がいますが、どのような傷であってもこれは決してやってはいけません。体表から縛
ると静脈の血流が鬱帯し、かえって出血を助長します。また患部以外の血流も悪くな
り、虚血傷害が出てくる可能性があります。神経を圧迫して、神経障害が出る可能性
があります。止血は患部を圧迫が原則です。

■受診は遠慮無く。

 圧迫止血は5分以上、できれば10分連続してやってください。途中で圧迫を解除し
てしまったら、またはじめから5分以上数えてください。圧迫をして止血すると、速
やかに血小板が凝集して出血点を塞ぎ、凝固因子が固まって止血栓が完成します。そ
のため途中で圧迫を解除するとこの過程をまたはじめからやり直す必要があるからで
す。傷の大きさ・性状に関わらず、出血が止まらない場合は「迷わず、速やかに」医
療機関を受診してください。また瓦礫撤去の際に受傷したものは、以下の理由により
受診された方が良い場合があります。遠慮無く受診してください。

・ガラスの破片など、細かい異物が創内に残ってしまうことがあります。

・釘などをさしてしまった場合、表面は小さくとも傷が深くなりがちです。深い傷は
洗浄が十分に行われないと、容易に膿瘍(うみ)を形成します。

・汚れた物で負った傷は、破傷風菌感染のリスクがあります。

・目の外傷は、全例眼科医の受診を勧めます。

■(補足)破傷風について。

 報道のとおり、被災地での破傷風感染症の報告が増えています。宮城県では、年間
3~4例の報告が通常ですが、震災後の3週間ですでに5件の報告があります。破傷
風は破傷風菌が産生する神経毒素により強直性痙攣(手足を突っ張るような痙攣)を
起こす病気で、全身性痙攣を起こす場合は20~50%が死に至ると言われています。破
傷風菌はあまねく土壌に広く分布しており、芽胞の形で存在します。この芽胞が傷口
から侵入し、感染が成立します。破傷風に関する詳しい情報は感染症情報センター
( http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02_g1/k02_15/k02_15.html )を参照して
ください。日本では生後3ヶ月から1年の間に三種混合ワクチンの形で免疫されていま
すが、成人するころには免疫もなくなってきています。そして多くの人はワクチンの
追加接種をしていません。ですので瓦礫など、「汚い」現場での外傷には破傷風のリ
スクがあると考えられます。破傷風になりやすい創として一般的に言われているもの
は、

・受傷後6時間以上たった傷

・挫滅創(組織がめちゃくちゃになった傷)

・深さ1cm以上

・鈍的外傷(刃物以外の傷)

・土、糞便などの汚染あり

 といったものです(Tetanus prone woundsと言われています。メルボルン小児病院
のガイドライン http://www.rch.org.au/clinicalguide/cpg.cfm?doc_id=5221 )。
瓦礫撤去における外傷はこの種の傷に当てはまることが多く、ワクチン接種が推奨さ
れる場合があります。自分のワクチン接種歴を確かめ、よくわからなければ受診する
ことをおすすめします。

 最後になりますが、被災地の一人の医師として、各地からのご協力に大変感謝して
おります。今後とも被災地へ入られる方が安心して活動できるよう、バックアップし
てまいります。
東北大学病院 呼吸器外科   鈴木隆哉

 

 

3.地震がきたら、、、救急のMLから

アメリカのレスキューチーム隊長が60カ国で875件の救命活動をした経験か
ら、大変重要で興味深い事例を紹介しています。ご参考になれば。

命を救う三角の空間2011年04月18日(月)
http://www.nagaoclinic.or.jp/doctorblog/nagao/2011/04/post-1478.html
引用>いざ地震の時に、最も安全な場所はどこか。
引用>これを知っているかどうか、防災意識を持つか持たないで、運命が違ってくる。
引用>伊勢さんのブログから、勝手に引用させていただく。これはとても大切な情報。

 

5.河野太郎のツィッターはこちらから! @konotarogomame

 菅内閣なのか民主党政権なのかわからないが、東京電力の福島第一原発の事故の賠
償案がひどすぎる。

 5月3日の朝日新聞が一面トップでとりあげているが、なぜ、東京電力が起こした
事故の賠償を国民が負担しなければならないのか。

 まず、経営陣、株主、貸し手の金融機関がそれぞれの責任を果たさなければならな
い。経営陣は総退陣すべきだし、株主価値を残したまま国民が負担を求められること
があってはならない。金融機関も自分達がリスクをとって貸したお金を、国民に負担
をさせて回収してもよいとは思わないだろう(思うかもしれないが、それは許されな
い)。

 事故が起きてから作った仕組みで、他の電力会社に拠出をさせれば、それぞれの電
力会社のステークホールダーが、「事故の後から」負担を迫られることになり、これ
もおかしい。

 さらに、再処理を前提とした2兆4000億円の電力会社の積立金(もとは電力料
金だ!)には全く手をつけないというのも恣意的すぎる。

 賠償は、1兆円ずつ4年間で4兆円としているが、果たして4年で全ての事故処理
が終わっているだろうか。漁業や農業が4年間で元に戻っているだろうか。

 賠償のためには東電の資産売却は避けられない。事故の被害規模を考えれば当然だ。
スッカラカンになった東電を国有化し、原発部門を切り離し、送電と発電に分割して
売却しなければならないかもしれない。

 東電が、逆立ちしても鼻血も出ないようになって、2兆4000億円の積立金がき
ちんと活用されて、それから初めて税の投入の議論を始めるべきだ。

 東電の株を大量に保有したり、貸し込んだりした金融機関が、この事故の賠償で大
きな影響を受けるかもしれない。政府は、その影響をきちんと予測した上で、必要な
らば、システミックリスクを起こさないように、その対策を立てなければならない。
もちろん、その金融機関を助けるためではなく、システミックリスクの波及を防ぐた
めの対策だ。

 経産省と東京電力、それに電気事業連合会は、毎日、議員会館を歩いている。議員
1人1人に面談して、なにやらいろいろと訴えている。「東電を分割したら電気の供
給が滞ります」「東電に賠償を押しつけたら金融危機が起こります」

 議員に一方的な話だけを聞かせてはいけない。政治は正義を行う必要がある。報道
されているような賠償案が本当に提案されてきたら、国民が立ち上がらなければなら
ない。こんな政府とそれを支えている与党はつぶさなければならない。もちろん、こ
んな賠償案を支持しようとしている自民党の電力族も。

6.電力を市民の手に取り戻そう!エネルギーの民主化を 田中優
神戸の大竹先生からです。
環境活動家 田中優さんの、これまで多くの講演をしていますが、 彼のこれま
での思索と活動の集大成ともいえる講演が
2011年5月5日に「電力を市民の手に取り戻そう!エネルギーの民主化を」と題して、
豊田市文化会館で行われ、その動画がアップされてますので、 原発必要派の方
も。脱原発派の方も、もしおられたら御用学者の方も、みなさん、是非ご覧くだ
さい。
長いですが、最後までご覧になることをお薦めします。
http://ustre.am/:YP0H

田中優さん緊急講演会 高画質版:
http://www.ustream.tv/recorded/14146884
0:00~0:22:原発の話
0:23~1:06:被曝の話
1:07~2:02:電力の話

 

 

 

7.チェルノブイリ 20年後の真実  東京安藤先生から

1)NHKスペシャル 汚された大地で~チェルノブイリ 20
年後の真実:
http://www.nhk.or.jp/special/onair/060416.html
1-1)YouTube 20年後の真実 1~5:
http://www.youtube.com/watch?v=PHeq8TfSRBM
http://www.youtube.com/watch?v=8hXmoNuJHKs&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=Fgx1mcUgHnA&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=BiFTMaApEpw&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=ZK7T6BDiB1c&feature=related

2)BS世界のドキュメンタリーシリーズ チェルノブイリ
事故 25年:
http://www.nhk.or.jp/wdoc/index.html
-----------------------------------
午前0:00-0;50
5/9(月):「永遠のチェルノブイリ」
5/10(火):「被曝(ばく)の森はいま」
5/11(水):「見えない敵」
-----------------------------------
*http://blogs.yahoo.co.jp/tankou_2008/34548727.html

 

 

 

 

 

 

 

滋賀県田口先生から

日本よりフランスの方が情報量が多い!
フランス放射線防護原子力安全研究所
http://www.irsn.fr/EN/Pages/home.aspx
Earthquake and nuclear crisis in Japan
http://www.irsn.fr/EN/news/Pages/201103_seism-in-japan.aspx

Impact on marine environment of radioactive releases resulting
from the Fukushima-Daiichi nuclear accident
http://www.irsn.fr/EN/news/Documents/IRSN_Fukushima-Accident_Impact-on-marine-environment-EN_20110404.pdf

Information note n°2 for the French citizens in Japan
- 8th April 2011 : situation at the Fukushima-Daiichi site,
general recommandations for residents, general information on
environmental radiological pollution and its consequences
http://www.irsn.fr/EN/news/Documents/IRSN_Information-note-for-french-citizens-in-japan_N2-08042011.pdf

青森本田先生のまとめから
前提
-----
原子力が必要かどうかからはじめるのではなく、「原子力がない」前提での
お話とするべき
三原則
---------
「原発なし」を大前提ですべて行う必要がある。
1)代替エネルギーの活用を図る
現時点で使用可能なものを徹底して活用。かつ普及策を出す。
2)今後の方針の明示:原発の廃止
原発の安全性の向上。かつ縮小廃止していく。
3)現状追認は避ける必要あり。
ずるずる現状追認再開は到底世論のご理解は得られない。
まず無理。

論点整理
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/entaku/H11/teigen/ronten.html

原発は今後も伸び続ける 公開 柏木 孝夫(東京工業大学教授)
2011年4月号 連載〈巻頭インタビュー〉
http://www.sentaku.co.jp/interview/post-1598.php

細川弘明と学ぶ「環境問題」の見方
http://www.kyoto-seika.ac.jp/hosokawk/class/2002/assessment/email_04.html

 雑誌「選択」5月号より。
----------------------------------
「ダムなら二千億、空港は五千億。原発なら一基で六千億だ」
これは日本の原発利権をよく知る、ある中堅ゼネコン元会長の発言だ。
「原発のカネは麻薬。『麻薬のようなもの』ではなく、禁断症状も引き起こ
すクスリそのもの」
納める固定資産税は、原発自体の価値が落ちることで、年々減少していく。
原発マネーの旨味を存分に味わわせ、電力会社が新たな原発が必要になるころ
に、住民が禁断症状を感じる程度に「投与量」が絞られる仕組みなのだ。
-------------------------------------------------------------------------
「日本の原子力業界全体を把握している人間なんていないのではないか。大き
いこともさることながら、複雑すぎる」
福島第一原子力発電所の事故以降、取材を続ける記者の言葉だ。
最近、メディアでしきりと「原子力村」という言葉が使用されている。しか
しこの業界は、知れば知るほど「見えない部分」の巨大さに気付かされる世界
なのだ。
制度の上で、この「村」を司るのは内閣府の原子力安全委員会だ。電力会社
のように原子炉を持つ事業者を直接指導することはできないが、規制監督官庁
(原子力安全・保安院や文部科学省など)を監視する立場にある。また、電力
会社などへの調査権限も持つ。
しかし、過去繰り返されてきた原発事故と同様、今回もその指導力のなさが
浮き彫りになった。たんなる学者の寄せ集めであり、「原子力村」の指導者で
はない。

「東京電力が日本の原発を主導してきたのは間違いない」
原発や来電の取材を続けるライターの一人はこう語る。日本の商用原子炉が、
それまで独自で行ってきた研究を無視し、中曽根康弘氏らの「政治主導」によ
り米国技術を導入することでスタートしたのは既に報じられている通りだ。

 国策として始まった原子力発電を引っ張ってきたのが東電である。日本初の
商用原子炉は、十電力会社(電源開発を含む)の出資によりできたが、この中
で東電の力が突出していることは言うまでもない。既存原発保有数でも他を圧
倒している。

 その東電内部で、原子力部門は特に閉鎖性が強い。原発取材経験のあるフリー
ライターは、昨秋、来電幹部OBに会った際にこう言われた。
「日本の原発稼働率は六五%しかない。しかし、そこで何か起こっているの
か、本当のところは私のようなポストにいても見えない」
他部門出身の、ある東電OBも原子力部門の特殊性を語る。
「うちはセクショナリズムが強いが、中でも原発組は火力に代わり自分かち
が東電を引っ張っていくという白負も強く誰も寄せ付けない。コアのメンバー
は百人ほどだが、極めて強い独立性を保つ」
単体でも三万六千人あまりの社員を抱える東電全体からみれば、ほんの一部
だ。そこは原子炉技術者の「城」であり、専門性の高さもあって、外からは内
部を把握できない。もし仮に、経営者が原発事業の路線変更を考えようにも、
実態がわからず、手を突っ込むことができないのだ。

 東電をけじめとする電力会社や、東芝、日立製作所といった原子炉メーカー
の技術者の集まりをもって、「日本の原子力村」ととらえる向きがある。しか
しそれは事実の倭小化だ。彼らは確かに「頭脳」であるが、村の中の「技術者
集団」にすぎない。

 日本の商用原子炉の危険性を誰よりも知り尽くしながら、「無謬の安全性」
の偽装に加担してきた技術者の罪は重い。人材を送り込み、陰に陽に支えてき
た大学、特に東京大学原子力工学の人間も批判を受けるべきだ。しかし、原子
力村の肥大化は、彼らの与り知らぬところで進行したのも事実だ。

  日本原子力産業協会(原産協)という社団法人がある。一九五六年、日本
の「原発の父」のひとりである正力松太郎氏が提唱し設立された団体だ。会長
は、今井敬日本経済団体連合会名誉会長、副会長に東芝の西田厚聡取締役会長
が就き、理事には原発メーカーや電力会社の幹部、大学教授などが並ぶ。「常
勤」ということで元職が公表されていない、理事長の服部拓也氏は、東電出身
だ。

 原産協の会員名簿が、原子力村を見渡す上での参考になる。年間十三万円(一
口)の会費を払う会員の数は約四百八十に上り、居並ぶのは間違いなく日本の
原子力に群がる組織ばかりだ。電力会社はもちろん、原子炉メーカー、プラン
ト・メーカーが主要メンバーだ。
そして、ゼネコン、銀行、各種財団、社団法人などと並んで、原発立地自治
体も会員となっている。
今回の事故の一義的な責任を問われるのは、「原子力村」の意思決定を行っ
てきた「川上」に存在する電力会社や経済産業省の連中である。しかし、「原
子力村」の大きな問題点のひとつは、「川下」の原発立地自治体に染みついた、
拭い難い依存体質だ。

 「東電からカネをもらっていた連中は、文句の一つも言わない」
福島県浜通りの町に長年住み、現在は他県へ避難している男性はこうつぶや
いた。彼が住んだ町には、「電源三法交付金」をけじめとする多額の金が舞い
込んだ。
「現地対策費」と称される交付金については説明の必要はないだろう。また、
これとは別に、電力会社から住民への「直行汪入」もされ、中でも大きなもの
は、漁業補償だ。前出の男性は農業を営んでいたが、漁民との格差は信じられ
ないほど大きかったと言つ。
「そもそも、あの地域の漁港はどこも規模が小さく、漁獲高もたかがしれて
いる」

 にもかかわらず、東電からは漁協組合員一人当たり五千万円とも、六千万円
ともいかれる金が、「漁業補償」として支払われた。
漁師に手厚いのは、どの電力会社にも共通している。補償以外にも、継続的
に漁師にカネを流すシステムも存在する。新潟では、「環境調査」とい万名目
で、定期的に海藻などを採取する仕事を漁師に発注しているという。
「ある会社は定期的に原発内で放射線量を計測するという簡単な仕事だけで
食っていける」(事情通)という福島の話もある。こうして一部住民は東電と
「べったり」になっていく。
原発のカネはきめ細かく投人される。福島では原発マネーで補填された、格
安親子旅行が定期的に行われていた。「電力の現状を知ってもらう」といラ名
目をつけて、川崎の火力発電所などの施設を少し見学し、都内のホテルに宿泊。
翌日はディズニ上フンドで遊んで一人五千円程度。また、地元の組合などが会
合を開けば、付け届けがあり、地域のホールにはグランドピアノを寄贈するな
どのケースも枚挙に暇がない。

 「原発城下町は、建設業の就業人口が平均より大きい傾向がある」
原発取材を続けるライターはこう語る。原発自体の建設と、三法交付金特需
による「ハコモノ」が建設されるからだ。そこでは杜撰な工事が行われること
もある。新潟県刈羽村に一九九九年に完成した生涯学習センターは、総工費八
十億円以上、うち七十億円あまりを三法交付金でまかなった。この建物では、
安い建材を使い、都合数億円にも上るカネがどこかに消える「手抜き工事」が
発覚した。

 立地自治体におけるハコモノ建設などの「振興策」には、「電源地域振興セ
ンター」という財団法人が関与する。同センターの現在の会長は東電の清水正
孝社長だ。

 「ダムなら二千億、空港は五千億。原発なら一基で六千億だ」
これは日本の原発利権をよく知る、ある中堅ゼネコン元会長の発言だ。この
場合の「空港」とは海上埋立型のものだ。個別具体の数字ではないが、原発利
権の大きさをよく言い表わしている。ダムや空港といった「巨大土木工事」と
比較して、原発一基でこれだけかかるのはすんなりと合点がいかない。埋め立
てもなく、中に燃料棒を差し込むまではただのプラント工事にすぎないのだ。

 こうした原発マネーによる「汚染」の根深さを端的にあらわしたのが、四月
に行われた統一地方選挙の結果だろう。直前に、これだけ深刻な原発事故によ
る被害を目の当たりにしながら、「反原発派」が躍進どころか、議席数を減ら
した原発立地自治体もある。
「原発の是非」は争点にもならず、危機感を持った「推進派」の結束に結び
付いただけだった。

 新潟県議会議員選挙に立候補し敗れた武本和幸氏が語る。元刈羽村議の武本
氏は、長年この地で原発反対運動を続けている。
「原発のカネは麻薬。『麻薬のようなもの』ではなく、禁断症状も引き起こ
すクスリそのもの」

 実は地元に落ちるカネは、立地当初のほうが多い。三法交付金は完成前後に
支払われ、電力会社が「分厚い」とされてきた壁だって、水素爆発で吹き飛ん
でしまう程度なのが明らかになった。原発建設費自体が、カネをばらまくため
の「どんぶり勘定」ではないのかという重大な疑惑が浮かぶ。

納める固定資産税は、原発自体の価値が落ちることで、年々減少していく。原
発マネーの旨味を存分に味わわせ、電力会社が新たな原発が必要になるころに、
住民が禁断症状を感じる程度に「投与量」が絞られる仕組みなのだ。
前ぺージで、原産協の会員について原子力村を把握するうえでの「参考」に
なると記述した。なぜなら、この会員の下に、まだ「村人」が多数ぶら下がっ
ているからだ。そしてこの中には「隠れ村民」とも呼ぶべき人間たちもいる。

 「暴力団が、右も左もわがらぬような原発現場作業員を送り込む」「原発建
屋内で作業すると日給が四十万円」
今回の事故後、ありとあらゆる真偽不明の情報が飛んだ。これについて、暴
力団関係の取材が多い雑誌ライターはこう話した。
「昔はあっただろうが、最近は暴対法もあり、入れないはずだ」
なるほど「都市伝説」の類かと思いきや、そうではなかった。反社会勢力は
今でもたしかに「原子力村」に巣食っていることの一端が、浮き彫りになった
のだ。

 関西に「本社」を構える会社がある。仮にX社とする。規模はそれほど大き
くなく、社員数は百名前後だ。同社は原発内や火力発電所内での作業などを得
意とすると宣伝している。そしてこの会社の取締役に名を連ねる一人の人物が
いる。この人物はほかにもいくつかの会社に関与しているのだが、そのうちの
一社の取引先に、あからさまに「暴力団フロント」然とした企業が並ぶのだ。
X社は、原発内作業を中堅プラントーメーカーの下請けで受注しているとみ
られる。そして、X社はその仕事を、Y社を下請けに使って処理するのだ。Y
社は、ある原発城下町に本社を置く。
「作業員の多くは、地元住民だ」 前出原発ライターがこう語るように、地
元の人間はY社を通じて原発に足を踏み入れるのだろう。

 こうした多重下請けのシステムは、建設業にも存在する。ただ、原発は被曝
リスクのために電力会社が支払う労働単価が高く、「中間手数料」の旨味は大
きくなる。
原発、もしくは核燃料処理場の立地に絡む部分に、暴力団の影が見えるのは
当然だ。過去には、暴力団が原発予定地の漁協に名を連ね、内部の反対派を切
り崩す工作を担ったうえで、高額の漁業補償をせしめるケースがあった。

 そして、原発が存在する全ての土地で、同じことが繰り返されている。「協
力会社」や作業員の数はそれこそネズミ算式に増える。
問題は、盛んに「安価」だと喧伝される原子力発電で、実はランニングコス
トが異常にかかっているといケ点だ。
かつて、日本の電力供給の主力だった水方発電の発電能力はほぼ横ばいだ。
ダムといえば巨大上木建築物であり、利権の集合のようなものだ。それなのに、
出力の面で劣るという点はあるものの、「水力村」はあっさりと屈服している。
「維持」の部分でカネを生みださなかったのが一つの要因だろう。ダムは造っ
てしまえば、ランニングコストはさはどかからない。
一方、原子力の場合、立地、建設はもちろん、建設後もカネを周囲に落とし、
また、使用済み核燃料の処理という新たなコストが生じる。つまり「存在し続
ける」こと自体が利権となっている以上、それを貪る人間が居座るのは道理な
のだ。仮に解体しようとすれば、相当な困難が伴う。
「原子力村」の上位にある人間はまず、全容を詳らかにするところから始め
なければならない。このまま「ものわかりのいい」国民を騙すことは許されな
いのだ。
今必要なのは、原理主義的な反対論でも、無分別な推進論でもない。資源の
少ない地震国家で、原子力の恩恵に与っていた、すべての日本人につきつけら
れた課題だ。
「原子力村」で起きていることを客観的にみつめなければ、この国の「原発」
は前にも後ろにも進めない。

海洋汚染
-----------
1)量は4700兆ベクレル
2)南北に広がっているがまだ広範囲ではない
-----------------------------------------
福島原発周辺海域においては、「最初は沿岸を南北に広がり、東西にはす
ぐに広がらないこと」なお海流は南へがメインだが北にもいっている。

3)浅い表面にある。
4)チェック箇所は近辺に限られている。
プルトニウムのチェックも始まった。

現状
-------
出した4700兆ベクレル…海洋汚染は深刻
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=39802
2号機の取水口付近から海に流出した放射性物質の総量の推計値4700兆
ベクレル
推計値は、その際の放射性物質の総量の3万倍。
大気中推定放出量37万テラ・ベクレル
東電は流出の始まりは4月1日としているが、放射性物質の濃度は3月3
1日に最高を記録しており、1日以前にも流出していた可能性が高い。

平成23年4月22日評価結果
http://www.nsc.go.jp/nsc_mnt/110422_1.pdf
4.環境試料(参考資料13ー30 ページ)
・ 海水の測定結果に関しては、新たな情報提供はありませんでした。なお、
本件に関する昨日の見解は以下のとおりです。
・ 4 月19 日に採取された海水中のI-131、Cs-137 それぞれの最大の放射能濃
度は、表層でI-131 が18.8Bq/L(1.88×10-2Bq/cm3)、Cs-137 が31.6Bq/L
(3.16×10-2Bq/cm3)、下層(深さ52ー170m)でI-131 及びCs-137 が不検
出でした。また、海上の塵中のI-131、Cs-137 はいずれも不検出でした。
・ 海水については、海水中に放出された放射性物質は、潮流に流されて拡散
していくことから、実際に魚、海藻等の海洋生物に取りこまれるまでには、
薄まると考えられます。

福島第1原子力発電所周辺の海域モニタリング結果
http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1304148.htm

海洋学者のブログ
http://blogs.dion.ne.jp/hiroichiblg/archives/10083045.html

沖合で基準の4倍の放射性ヨウ素(4月17日 5:15更新)
http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20110417/10.html

汚染水放出 海水のモニタリング強化(4月16日 13:10更新)
http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20110416/10.html
新たに加える調査地点は、原発の東の沖合3キロが4か所、8キロが2
かの、あわせて6か所で、これまでの沿岸部と沖合15キロに設けて
いた調査地点の間で、データの収集が行われます。

測定内容問題
----------------
武田氏;測定項目問題4月12日
http://www.youtube.com/watch?v=RkwiglzrS-U

海底でプルトニウムの調査へ(4月19日 6:00更新)
http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20110419/02.html

福島県内での原発事故にかかる我が国水産物の検査(輸出業者の方へ)
(更新日:4月21日)
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kakou/kensa/index.html

海流
---------
気象庁
http://www.data.kishou.go.jp/db/pollution/dbindex.html

日別海流(気象庁)
http://www.data.kishou.go.jp/db/kaikyo/daily/current_jp.html

太平洋岸の海流図(海上保安庁)
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/index.html

放射性セシウムの海洋汚染が人体に及ぼす影響を数理モデルで試算してみた
http://katukawa.com/?p=4198
海洋汚染調査データ 
http://polaris.nipr.ac.jp/~dbase/900/hod/900_HOD(J)-osen.htm

対策
-------
高濃度の汚染水処理、ロシア製装置で 政府調整
http://www.nikkei.com/news/headline/related-article/g=96958A9C93819481E3E7E2E7958DE3E4E2E6E0E2E3E39F9FEAE2E2E2;bm=96958A9C93819695E3E4E2E6988DE3E4E2E6E0E2E3E39191E3E2E2E2
シルトフェンス
http://www.asahi-kasei.co.jp/agt/kankyou/jp/siltfence/

魚介類についてのご質問と回答 ~4月22日更新~
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kakou/Q_A/index.html

放射性物質が検出された野菜等の廃棄方法について(Q&A) ~4月12日更新~
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/seisan_haiki.html

日本放射線影響学会福島原発Q&A(ver14) 平成23年4月12日午後6時現在
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jrr/gimon/gimon.pdf

地下水汚染
-----------
井戸水等のモニタリングは必要。
土壌汚染が進行すれば地下水に浸透する。しかし地下水の滞留時間は長いの
で短半減期核種は減衰してなくなる。また地上から滲みこんだ地下水の経路を
通じての90Srや137Csによる被ばくは、食品よりの内部被ばくおよび外部被ば
くに較べてきわめて小さい。

対策
-----
地下壁を、水を通さない地中深くの地層まで埋め込む。原発1ー4号機の全体
を取り囲むように設置し、汚染した地下水を敷地内にとどめる。

現状
-----
13日に1号機や2号機の地下水から比較的高い濃度の放射性物質が検出されま
したが、18日の調査では、濃度はほぼ横ばいか減少した。今月13日、最大
で1cc当たり610ベクレルの放射性のヨウ素131が検出されるなど、放
射性物質の濃度が1週間前に比べ大きく上昇した。18日の地下水の調査では、
ヨウ素131が1cc当たり、▽2号機で450ベクレル、▽1号機で43ベ
クレル、検出。

平成23年4月22日評価結果
環境試料(参考資料13ー30 ページ)
陸水(池水又は雨水)、陸土、降下物及び海水についてモニタリング結果
が得られています。雑草、陸土などで比較的高い値が依然観測されておりま
す。なお、引き続き上水(蛇口)、食物の測定を継続することが必要です。

--------------------------------------------
汚染水;東京電力の推計では
1号機から3号機だけで合わせて6万7500トンある

流れ
-------
地下水に溶出した放射性核種は,半減期の比較的短い核種は,この間に減衰
するが,岩盤の中には,地下水の移行経路となる亀裂のような間隙が存在して
おり,核種は,地下水によってこの中を移動する。深部岩盤中での,地下水の
動きは小さく,また,岩石に収着することによって,核種の動きは緩慢なもの
となる。この間に,核種の放射能は減衰するとともに,複雑な構造をもつ間隙
によって,様々な方向に分散され,次第に希釈されていく。そのような過程を
経た後,比較的透水性の高い,断層破砕帯のような地質構造に達した核種は,
帯水層に入り,最終的には,河川に到達する。河川水は,飲料や灌漑に利用さ
れ,これによって人間に取り込まれる。

基礎
---------
土壌は、一般的に地表から、不飽和層→飽和層→地下水→粘土層(不透水層)と
いう構造になっている。(ただし地下水は不飽和層、飽和層の内部を通ること
もある)。
福島第一原発周辺は、砂利や砂などが積もった厚さ5メートルほどの堆積(た
いせき)物があり、その下層には水を通しにくい厚さ約20メートルほどの泥
岩層がある。敷地内に大量にまき散らされた放射性物質が地中に入っても、地
下深くには浸透せず、地下水とともに5ー10年ほどで海に流れ出るとみられ
る。

 原発から30キロ圏内でも、地下水の大部分が阿武隈山地から海に流れてい
ることが分かった。ただ、30キロ圏の境では一部の地下水が南側と西側から
圏外に流れ出る結果となった。この地域の土壌が汚染されていた場合、内陸部
の水源に影響する可能性も否定できないという。

 30キロ圏内外とも放射性物質による汚染は地表から数メートルの表層に限
定されるため、深い井戸を掘れば安全な地下水が得られ、復興のための工業用
水などに使うことは可能だという。研究グループは、今週にも30キロ圏内か
らの地下水が圏外で実際にどう流れているかの調査を始める。

 丸井敦尚グループ長は「雨水に混じって地中にしみ込む放射性物質の影響は
ほとんど表層にとどまるため、地下水が広範囲で汚染される恐れは少ない。表
層の土壌を入れ替えたり、深い井戸を掘ったりすることで、影響を抑えること
が可能だ」と話している。

セシウム137 のような核種は、土壌に強く吸着され地表の土壌に留まりますの
で地下水に混入することはほとんどありません。一方、水に溶けて陰イオンと
なるヨウ素131 などは、雨水と一緒に土中に染み込みますが、核種が地表から
地下水面まで移動するにはかなり時間がかかります。一年あたり1.5ー2.0m程
度と非常にゆっくりと地下水面に向かって移動しています。ですから、通気層
の厚さが3ー5mあれば、雨水が帯水層にたどり着くまでに少なくとも2ー3 年
程かかります。その間に半減期が8日間と短いヨウ素131 は減衰してなくなっ
てしまい地下水に混入することはありません。

一方、セシウム137 のような陽イオン核種は、土壌と強く結合するので、雨水
の地中浸透速度の1/1,000ー1/10,000 の速さでしか浸透しません。そのため、
半減期が30 年のセシウム137 でさえも、帯水層まで移動する間に大部分が壊
変してなくなってしまい井戸水には出てきません。

帯水層中での地下水の動きは、通常年間に数mー数10mと極めてゆっくりして
いますので、井戸水を取水している場所まで移動する間に壊変してなくなり井
戸水には出てきません。一般的に井戸水として使われる深さ100m程度までの
浅層地下水は、1m 移動するのに数年ー数100 年かかるので、ヨウ素131 はそ
の間に放射壊変してなくなります。したがって、河川水を原水としている水道
水よりも、地下水の方が、はるかに安全と言えます。
-----------------------------------------------------------
参考
対策
-----
チェルノブイリ事故における環境対応策とその修復
原子力システム研究懇話会 村主 進
http://www.enup2.jp/newpage35.html
4) 地下水
放射性物質が地表に沈着すれば、これに対する地下水給水系を人工的に防護
する手段はない。しかし地下水の滞留時間は長いので短半減期核種は減衰して
なくなる。また地上から滲みこんだ地下水の経路を通じての90Srや137Csによ
る被ばくは、食品よりの内部被ばくおよび外部被ばくに較べてきわめて小さい。

 チェルノブイリ発電所近傍の立ち入り禁止区域については、地下水を、石棺
や廃棄物処分施設からの放射性核種の漏出から守るための処置がとられている。
このために局所的な高汚染スポットの廻りに工学的な、且つ、地球化学的なバ
リアを築いている。
また、発電所周辺の地下水を汚染から防ぐために、石棺の地下室に集まった
雨水の浸出を止める予防対策も必要である。
----------------------------------------------------------
ファイトレメディエーション
http://tenbou.nies.go.jp/science/institute/region/journal/JELA_2902013_2004.pdf

汚染水遮断へ地下壁、1ー4号機囲み設置へ(読売新聞) 4月22日 19:36
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/world/20110422-567-OYT1T00885.html
汚染水遮断へ地下壁、1ー4号機囲み設置へ
読売新聞2011年4月22日(金)19:36

 東京電力福島第一原子力発電所の事故処理について馬淵澄夫首相補佐官は2
2日、原発の汚染水が、地下水を通じて敷地外に漏出するのを防ぐため、地下
に大規模な遮断壁を埋め込む方針を明らかにした。

 日本記者クラブ(東京・内幸町)で開かれた講演で語った。地中の汚染拡大
防止の具体策が示されたのは初めて。

 馬淵補佐官によると、地下壁は、水を通さない地中深くの地層まで埋め込む。
同原発1ー4号機の全体を取り囲むように設置し、汚染した地下水を敷地内に
とどめる。馬淵補佐官は、政府と東電が設置した「事故対策統合本部」で、放
射性物質の封じ込めを目指す「中長期対策チーム」の政府側責任者を務めてい
る。

現状
-----
・水道水中の放射性物質の検出について(第42報)ー福島県ー
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001a3hi.html
・水道水中の放射性物質の検出について(第43報)ー福島県ー
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=162963

下水の放射性物質 ほぼ横ばいか減少(4月20日 5:35更新)
http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20110420/03.html

東京電力福島第一原子力発電所では、1号機や2号機の地下水から比較的高い
濃度の放射性物質が検出されましたが、18日の調査では、濃度はほぼ横ばい
か減少したことが分かりました。東京電力は、タービン建屋などの高濃度の汚
染水が地下水に漏れ出しているおそれは少ないとみていますが、引き続き監視
を続けるとしています。福島第一原発では、1号機や2号機の地下水を集める
「サブドレンピット」と呼ばれる施設で、今月13日、最大で1cc当たり6
10ベクレルの放射性のヨウ素131が検出されるなど、放射性物質の濃度が
1週間前に比べ大きく上昇したことから、地下水の調査の回数を増やして監視
を強めています。東京電力によりますと、18日の地下水の調査では、ヨウ素
131が1cc当たり、▽2号機で450ベクレル、▽1号機で43ベクレル、
検出されました。これは、濃度が上昇した今月13日の調査結果と比べ、2号
機で4分の3近く、1号機で10分の1余りに、それぞれ減っており、ほかの
放射性物質もほぼ横ばいか減少しています。東京電力は、タービン建屋の地下
などにある高濃度の汚染水が地下水に漏れ出しているおそれは少ないとみてい
ますが、引き続き監視を続けることにしています。
---------------------------------------------------------------

平成23年4月22日評価結果
http://www.nsc.go.jp/nsc_mnt/110422_1.pdf
4.環境試料(参考資料13ー30 ページ)

・ 陸水(池水又は雨水)、陸土、降下物及び海水についてモニタリング結果
が得られています。雑草、陸土などで比較的高い値が依然観測されておりま
す。なお、引き続き上水(蛇口)、食物の測定を継続することが必要です。

・ 海水の測定結果に関しては、新たな情報提供はありませんでした。なお、
本件に関する昨日の見解は以下のとおりです。

・ 4 月19 日に採取された海水中のI-131、Cs-137 それぞれの最大の放射能濃
度は、表層でI-131 が18.8Bq/L(1.88×10-2Bq/cm3)、Cs-137 が31.6Bq/L
(3.16×10-2Bq/cm3)、下層(深さ52ー170m)でI-131 及びCs-137 が不検
出でした。また、海上の塵中のI-131、Cs-137 はいずれも不検出でした。

・ 海水については、海水中に放出された放射性物質は、潮流に流されて拡散
していくことから、実際に魚、海藻等の海洋生物に取りこまれるまでには、
薄まると考えられます。
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汚染水、6月まで建屋に…3号機は移送せず(読売新聞) 4月22日 3:06
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20110422-567-OYT1T00060.html

増える汚染水への対応検討へ(4月21日 6:05更新)
http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20110421/01.html

汚染水移送 安定化への作業本格化(4月20日 5:25更新)
http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20110420/05.html
東京電力福島第一原子力発電所では、2号機のタービン建屋などに大量にたま
っている高濃度の放射性物質に汚染された水を保管場所に送る作業が続けられ、
「トレンチ」と呼ばれる施設の汚染水の水位はわずかに下がっています。一方
で、汚染水はほかの施設でも増えていて、東京電力では増加のペースを監視し
ながら対応を検討することにしています。福島第一原発では、建物の中や敷地
内で放射性物質に汚染された水が大量に見つかっていて、東京電力の推計では
1号機から3号機だけで合わせて6万7500トンあるとされ、復旧作業を妨
げています。19日からは、2号機のタービン建屋などにたまっている汚染水
1万トンの移送が始まり、保管場所となる4号機の近くの「集中廃棄物処理施
設」まで1時間に10トンのペースで送っています。2号機の「トレンチ」と
呼ばれる施設の水位は20日午後6時現在で、移送を始める前と比べ2センチ
余り下がっています。また、2号機のタービン建屋の地下の汚染水の水位に変
化はなく、東京電力はこれらの施設への流れ込みが続いているとみています。
汚染水は、ほかの施設でも増えていて、3号機のトレンチでは、この1週間、
毎日数センチずつ水位が上昇し、まもなく地上まで1メートルを切る見通しで
す。5号機と6号機のタービン建屋でも地下水が入り込んで汚染水の水位が上
昇している可能性があり、東京電力は、いずれも注意深く監視を続けています。
一方、1号機では、原子炉を冷やすため注入が続けられている水が蒸発し、原
子炉を覆う格納容器の内部にたまっているとみられるということです。東京電
力が示した工程表では、今後、格納容器に水をためて原子炉を冷やすとしてい
ることから、実際に水をためる作業に入った場合に備えて、どの程度水がたま
っているかを把握することにしています。
--------------------------------------------------------------
基礎
-----
地層処分における核種分離・消滅処理技術の効果:核燃料サイクル開発機構
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/old/backend/siryo/back26/siryo3c.htm
―基本シナリオの概念モデル(図-7)
地下水シナリオは,次のようなシナリオを想定している。

人工バリア内に侵入した地下水は,長い間に,オーバーパックを腐食し,ガラ
ス固化体と接触して,放射性核種を溶出させる。地下水に溶出した放射性核種
は,緩衝材中で収着されながら,拡散する。半減期の比較的短い核種は,この
間に減衰するが,一部の核種は緩衝材を通過して,周辺の岩盤に到達する。岩
盤の中には,地下水の移行経路となる亀裂のような間隙が存在しており,核種
は,地下水によってこの中を移動する。深部岩盤中での,地下水の動きは小さ
く,また,岩石に収着することによって,核種の動きは緩慢なものとなる。こ
の間に,核種の放射能は減衰するとともに,複雑な構造をもつ間隙によって,
様々な方向に分散され,次第に希釈されていく。そのような過程を経た後,比
較的透水性の高い,断層破砕帯のような地質構造に達した核種は,帯水層に入
り,最終的には,河川に到達する。河川水は,飲料や灌漑に利用され,これに
よって人間に取り込まれる。 このシナリオに沿って,人工バリア,天然バリ
ア,生物圏における核種移行を,解析するモデルを作成し,どのような影響が
生ずるかを解析によって推定する。

図-7 地下水シナリオの概念モデル

―核種移行における鍵となるパラメータ

 解析に用いるパラメータのうち,アクチニド元素について特に重要なものと
して,その溶解度と分配係数が挙げられる(図-8)。
溶解度の場合,地下深部は還元環境にあり地下水への核種の溶出は小さい地
下水の流速に対して約50万倍遅くなることがわかる。このように,核種の移行
に対して地下深部の岩体が有する遅延性能は大きい。

―解析結果
レファレンスケースに関して,計算された線量の時間変化を図-9に示す。
線量を支配する核種は,処分後の時間に応じて,
- 処分開始ー105年程度:Se-79
- 105年ー6x106年程度:Cs-135
- 6x106年ー3x107年:Th-229
- 3x107年以降:Pb-210
となり,最大の線量を与えているのは,Cs-135であることがわかる。諸外国の
安全評価結果(図-10)をみても,支配核種として重要なのは長半減期の核分
裂生成物である。
また,わが国の幅広い地質環境の多様性やデータの不確実性を勘案し地層処
分システム全体の安全性を評価するために設定した解析ケースについて線量を
計算し,その最大値を求めて,レファレンスケースと比較したものが図-11で
ある。線量の最大値は5桁程度の範囲で変動するが,最も高い場合でも諸外国
で提案されている安全基準に比べ2桁程度低いものとなっている。
-----------------------------------------------------------

放射能汚染水、地下深くには浸透せず 産総研が流れ解析
http://www.asahi.com/national/update/0418/TKY201104180467.html?ref=goo
福島第一原発から出た放射性物質による地下水の影響を調べるため、産業技術
総合研究所が福島県内の地下水の流れを解析した。原発周辺や30キロ圏内で
は表層のすぐ下に水を通しにくい地層があるため、放射性物質は表層を流れ、
地下深くに浸透しにくいという。

 産総研地下水研究グループは、これまでに調査されている地層や井戸などの
情報をもとに、地下水の流れをシミュレーションした。

 研究グループによると、福島第一原発周辺は、砂利や砂などが積もった厚さ
5メートルほどの堆積(たいせき)物があり、その下層には水を通しにくい厚
さ約20メートルほどの泥岩層がある。敷地内に大量にまき散らされた放射性
物質が地中に入っても、地下深くには浸透せず、地下水とともに5ー10年ほ
どで海に流れ出るとみられる。

 原発から30キロ圏内でも、地下水の大部分が阿武隈山地から海に流れてい
ることが分かった。ただ、30キロ圏の境では一部の地下水が南側と西側から
圏外に流れ出る結果となった。この地域の土壌が汚染されていた場合、内陸部
の水源に影響する可能性も否定できないという。

 30キロ圏内外とも放射性物質による汚染は地表から数メートルの表層に限
定されるため、深い井戸を掘れば安全な地下水が得られ、復興のための工業用
水などに使うことは可能だという。研究グループは、今週にも30キロ圏内か
らの地下水が圏外で実際にどう流れているかの調査を始める。

 丸井敦尚グループ長は「雨水に混じって地中にしみ込む放射性物質の影響は
ほとんど表層にとどまるため、地下水が広範囲で汚染される恐れは少ない。表
層の土壌を入れ替えたり、深い井戸を掘ったりすることで、影響を抑えること
が可能だ」と話している。(中村浩彦)

------------------------------------------------------------
土壌汚染対策法の目的
http://www.env.go.jp/water/dojo/gl_disp-cs/chpt-1.pdf
---------------------------------------------------------
平成19 年度
土壌汚染対策に関する動向調査
報告書
http://www.sankankai.com/pdf/jmfH19.pdf
1.2.1 土壌中の汚染物質の挙動
土壌汚染を効果的かつ経済的に対策する際には、まず各汚染物質の物性と地中
挙動を認識し、汚染の拡散状況を予測しておく必要がある。土壌は、図1-1 の
ように一般的に地表から、不飽和層→飽和層→地下水→粘土層(不透水層)とい
う構造になっている。(ただし地下水は不飽和層、飽和層の内部を通ることも
ある)。

図1-1 土壌の断面図
出典:「地下水汚染論―その基礎と応用―」(1994)
土壌汚染対策法において特定有害物質に挙げられている物質は、VOC(第一種
特定有害物質)、重金属類(第二種特定有害物質)、農薬類(第三種特定有害
物質)の3種類がある。

重金属は、比重4以上と重く土壌に吸着されやすいので、一般的に表層付近に
滞留する。

VOC は土中においては液体あるいは気体で存在しており、地中での挙動は複雑
である。

VOC は水に溶けやすく、粘性が低いので土壌中を浸透しやすく、地下水汚染も
引き起こしやすい。また、揮発性があるので土壌中の空気を汚染する。VOC を
地表に流出させた場合、地表から不飽和層、飽和層を鉛直方向に浸透し、地下
水面付近で地下水と水平方向に流れる。水に溶けない物質の場合、非水溶性流
体(NAPL: Non-Aqueous Phase Liquid)という汚染物質自体が独立した液層を
形成する。NAPLは比重の違いにより異なる挙動を示す。水より小さい比重を持
つ物質(石油系)の場合、地下水面上に留まりゆっくり水平方向に動く。

水より大きい比重をもつ物質(トリクロロエチレンなど)の場合、地下水中を
通過し、不透水層や粘土層に達するまで流れの影響を受けつつ沈んでいき、到
達後は水平方向に移動する。岩盤や粘土層の内部にまで浸透・吸着することも
ある。不飽和層におけるVOCの挙動は、主に液体として鉛直方向に浸透してい
くが、降雨により涵養されることがあり、移動中に揮発して土壌中を上昇する
こともある。ここでは、液体の移動に加えて、気体の移動も考慮する必要があ
る。飽和層においては、地下水からの間接的な流れの影響を受け、鉛直方向以
外の動きも持つ。以上をまとめると汚染物質の挙動は図1-2 のようになる。

図1-2 土壌中の化学物質の汚染形態

出典:「土壌環境汚染の基礎と解析の考え方」(Web セミナー)
土壌不飽和層中の汚染物質は主に次の4つの形態で存在している。飽和層で
は、分子は気体で存在できないため、1ー3 までの存在形態となる。
1, NAPL を形成している。
2, 土壌中の水に溶解している。
3, 土壌粒子に吸着している。
4, 土壌中に気体として存在している。
土壌中の汚染物質の移動については、次のような特徴がある。
1, 大気中や水中とは異なり、汚染物質の希釈効果が小さい。
2, 土壌中の移動が遅く、汚染されると回復までに時間がかかる。
3, 非常に不均一かつ複雑な系である。

土壌中の汚染物質の移動については、汚染のモデルをもとにシミュレー
ション解析することが可能である。
----------------------------------------------------------------
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jrr/gimon/gimon.pdf
Q34 福島原発から放射性物質が飛散し、地面を汚染していると聞きますが、
井戸水や水道水にどのくらい混入するのですか?

A:雨水が地下に浸透することによって地下水となります。その際、雨水が地
下に浸透して地下水面に達するまでに移動する地下空間を通気層*といい、ま
た、地下水面下で地下水が流れている空間を帯水層と呼びます。従って、放射
性物質が地下水に混入するまでの時間は、通気層を構成する土壌と放射性物質
の相互作用の程度によって決まることになります。放出された放射性物資のう
ちで水に溶けて陽イオンとなるセシウム137 のような核種は、土壌に強く吸着
され地表の土壌に留まりますので地下水に混入することはほとんどありません。

一方、水に溶けて陰イオンとなるヨウ素131 などは、雨水と一緒に土中に染み
込みますが、核種が地表から地下水面まで移動するにはかなり時間がかかりま
す。勿論、雨水が地下へ浸透する速度は土壌の条件によって異なりますが、一
般的に、日本で地表面に多く?られるクロボク土やローム土壌では、一年あた
り1.5ー2.0m程度と非常にゆっくりと地下水面に向かって移動しています。で
すから、通気層の厚さが3ー5mあれば、雨水が帯水層にたどり着くまでに少な
くとも2ー3 年程かかります。その間に半減期が8日間と短いヨウ素131 は減
衰してなくなってしまい地下水に混入することはありません。

一方、セシウム137 のような陽イオン核種は、土壌と強く結合するので、雨水
の地中浸透速度の1/1,000ー1/10,000 の速さでしか浸透しません。そのため、
半減期が30 年のセシウム137 でさえも、帯水層まで移動する間に大部分が壊
変してなくなってしまい井戸水には出てきません。

仮に通気層が薄くてヨウ素131 が地下水に混入しても、帯水層中での地下水の
動きは、通常年間に数mー数10mと極めてゆっくりしていますので、井戸水を
取水している場所まで移動する間に壊変してなくなり井戸水には出てきません。
一般的に井戸水として使われる深さ100m程度までの浅層地下水は、1m 移動
するのに数年ー数100 年かかるので、ヨウ素131 はその間に放射壊変してなく
なります。したがって、河川水を原水としている水道水よりも、地下水の方が、
はるかに安全と言えます。

ただし、地下水には自然に由来する放射性物質であるラジウム226 やトリチウ
ムなどが含まれており、飲用のミネラル・ウォーターにも必ず自然放射能は含
まれています。人類はこうした自然放射能と長く付き合って今に至っています
から、高濃度の放射性物質を含む放射能泉を除けば、飲んでも健康に影響はな
いと思われます。

一方、水道水は、原水が何であるかによって異なりますが、地下水を原水とし
ていれば、前述したように安全です。河川水を原水としている場合は、処理の
方法によって放射性物質の混入割合が異なります。浄水場で一般的に使われて
いる砂ろ過であればセシウム137 のような陽イオン核種はほとんど除去されま
す。ヨウ素131 のような陰イオンは、砂ろ過では除去されませんので、原水が
取水されてから水道水として給水されるまでの時間の長さによって放射性物質
量が異なることになります。水を砂ろ過の後、活性炭処理するとヨウ素131 の
50%程度は除去されます。さらに、心配であれば、市販されている陰イオン交
換樹脂を含むフィルターがついた浄水器を通すとほぼ全量が除去できるようで
す。ただし、陰イオン交換樹脂がヨウ素で飽和してしまえば除去はできなくな
りますので注意してください。
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*通気層は地下水面よりも上方に位置する地下空間で空気と土壌水が混在した
層ですが、帯水層は土壌や岩盤の空間が地下水で満たされた層です。
(掲載日:平成23 年4 月12 日)
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フォールアウト (09-01-01-05)
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-01-01-05
3.環境中における挙動
核実験により、または原子力施設から大気中に放出された放射性核種は、大
気中で拡散しながら、一部は徐々に地表面に降下してゆく。地表面への降下に
は、降水に捕捉されて、降水と共に降下する場合や直接地表面へ降下してゆく
場合等がある。
大気圏内で行われた核実験により、生成された放射性核種が運ばれて地表面
に降下する過程は次の3つである。
(1)核爆発後約1日以内に爆発地点のごく近傍に降下するもので、局地フォ
ールアウトと呼ばれる。
(2)気流にのって遠方まで運ばれ、地上に降下する。
(3)爆発により成層圏に達した核種が、ゆっくりと対流圏に移行し、やがて
地表面に降下する。
表3に示したような地球全体に、しかも長期間にわたって汚染をもたらすも
のは、(2)と(3)によるものである。
核実験起因のフォールアウト中に含まれる放射性核種の種類と量は、核実験
が実施された時の条件(大気中か、地上か、水上か、水中かなど)、使用され
た爆弾の種類と大きさなどで異なってくる。また、地上への降下の状態も核実
験が行われた季節やその時の気象状況などによって違う。一般的に言って、核
爆発で生成する球状雲が初期の高熱時に地表と接触する様な条件下では、フォー
ルアウト中の粒子の直径は比較的大きく、放射性核種の中には誘導放射性核種
がかなり多く含まれてくる。球状雲初期の高熱時に地表と接触しない場合には、
フォールアウト中の粒子の直径は小さく、含まれる放射性核種は核分裂生成物
が主体となる。
地表面に落下した放射性核種(フォールアウト)は動物や植物にも取り込ま
れる。一例として、デンマークにおける全食事中の90Srと137Csの濃度の経年
変化を図1に示す。

フォールアウトからの人体内セシウム(40年の歴史) (09-01-04-11)
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-01-04-11

放射性降下物(フォールアウト)
http://rcwww.kek.jp/kurasi/page-46.pdf

 

NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/top/index.html
ニュース一覧
1号機 水たまる状態に懸念も(4月23日 5:10更新)
“事実踏まえ冷静に対応を”(4月23日 5:10更新)

平成23年4月22日評価結果
http://www.nsc.go.jp/nsc_mnt/110422_1.pdf

http://news.goo.ne.jp/topstories/nation/428/
汚染水防止、地下に遮断壁へ

汚染水遮断へ地下壁、1~4号機囲み設置へ(読売新聞) 4月22日 19:36
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/world/20110422-567-OYT1T00885.html
汚染水、6月まで建屋に…3号機は移送せず(読売新聞) 4月22日 3:06
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20110422-567-OYT1T00060.html

海に流れた汚染水、4700兆ベクレル 低濃度の3万倍(朝日新聞)
4月21日 13:19
・水道水中の放射性物質の検出について(第42報)~福島県~
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001a3hi.html
・水道水中の放射性物質の検出について(第43報)~福島県~
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=162963

枝野官房長官の会見全文〈21日午後4時〉
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104210628.html
【原発周辺地域の一時帰宅】
――20キロ圏内の一時立ち入りでは持ち出せるものは限られるが、持ち出
せない財産は政府で補償するのか。

 もちろん避難生活において持ち出せないことで受けている不便、それを補う
ためというのは当然補償の対象になりうるのはある意味当然だ。今回はまずは
一巡、希望の方に一度戻ってもらうということで、一巡で終わることは想定を
していない。それぞれいろいろな要望があるし、午前中も言ったが、いろいろ
なオペレーションを積み重ねることで、安全性を確保したうえでの立ち入りに
ついては、より改善の余地が十分あるのではないかと思う。従って、一回限り
でないことをぜひ理解頂きたい。

 【原発事故を受けた計画的避難地域の発表】

 ――福島を訪問した菅首相が佐藤県知事との話のなかで、計画的避難につい
て明日発表すると言った。これは明日指示を出すのか、もう少し先なのか。緊
急時避難準備区域も同様に実施されるのか。

 総理が知事との話でそう言ったようなので、何とか明日までに具体的に最終
整理をして発表したいということで鋭意最終の整理をしているところだ。内容
については、できるだけ関連することについて具体的かつ広範に決めた上で発
表できればと思っているが、それについては総理の福島県知事との会談の話を
踏まえて今鋭意努力しているということだ。

 【文部科学省のモニタリング結果】

 ――先ほど文部科学省が20キロ圏内のモニタリング数値を発表され、20
キロ圏内でも一部では比較的数値が低い場所もある。ひとつの同心円でまとめ
てやることについて、数値の低い地域の住民は同心円でくくられることに疑問
も出ると思うが。

 ここはぜひ理解を頂きたい。また報道機関の皆さんも、ぜひ十分認識のうえ
報道して頂きたいと思うが、今回の計画的避難区域については、1年間そこに
住んでいた場合に蓄積された、累積された放射線量ということの安全性を配慮
した。

 20キロの所については、原子力発電所は現状では悪化している状況ではな
いが、必ずしもまだ安定している状況ではないので、事態が悪化する可能性、
そのリスクに十分備えないとならない。その事態が悪化した場合に、住民の皆
さんに影響を与えないようにするという観点から立ち入りを規制する。あるい
は20キロ~30キロ圏のかなりの部分の所については、そうした場合にすぐ
に対応できるような準備を頂きたいということで緊急時避難準備区域の設定を
しようとしている。

 今、線量が低い高いということの基準ではなく、原子力発電所からの距離で
その事態が悪化した時の風向きは今から予期できるわけではないので、これは
基本的には同心円を軸にやらせてもらっていることで理解頂きたい。

 【文部科学省のモニタリング結果その2】

 ――文科省の発表で、20キロ圏内の調査について今まで調査結果を公表し
てこなかった理由について、文科省は「官邸の指示だった」と説明しているが、
官邸が止めていたのか。

 少なくとも私は承知をしていない。20キロ圏内の調査については、しっか
りと調査したデータを整理してまとめて発表するという報告は受けていた。そ
の報告を受けていたのみだ。逆に言えば、今朝方だったか昨日の夜だったか、
こういった形で発表しますというのが報告されて、これなら第一段階で早く出
せばよかったのにと思ったが、指示をしたものではない。

 ――文科省へ官邸から指示は出ていないということか。

 私が指示していないということは、私の決裁なくそういった指示が出ている
とは一般的には考えにくいので、もしかしたらどこかで情報、意思疎通の齟齬
(そご)があったのかもしれないとは思うが、重要なことなので確認したい。

【警戒区域指定や避難指示解除の見通し】

 ――警戒区域もしくは避難指示解除の見通しはあるのか。

 先程言った通り、放射線量が問題なのではなくて、原発の事態がもし悪化し
た場合に備えて、影響を受ける可能性のあるということで避難指示をしている。
従って、文部科学省のモニタリングの結果が直接には関わらない。一時立ち入
りなどにおいての安全性の確認とか、あるいはいずれ原発が収束した場合にお
ける事態、対応に備えてできる限りの調査をしておくという趣旨だ。

 【原発周辺地域の一時帰宅その2】

 ――一時立ち入りできる代表者というのは、年齢とかの基準はあるのか。

 もちろん子供とか妊娠中の方などは避けて頂くということは前提だ。例えば、
そういった方だけの家族の場合にどうするかということについては、別に法律
で決めるわけではないので、具体的に個別に相談させて頂いて対応させて頂く
ということになる。

 ――一時帰宅は、天候に左右されるのか。浴びる線量の制限はあるか。

 天候については風向き、雨の時というのは、特に原発に近い所で放射性物質
が大きく減ったとはいえ出ているので、基本的に避ける方針だと聞いている。
その上での細かい具体的オペレーションは経済産業省原子力安全・保安院など
にお尋ね頂ければと思う。

http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/top/index.html
汚染水と汚染がれき 撤去急ぐ(4月22日 13:15更新)
福島 一部地域コメ作付け制限(4月22日 13:15更新)
20キロ圏外 計画的避難区域を発表(4月22日 10:15更新)
福島 警戒区域の規制始まる(4月22日 5:10更新)
格納容器水で満たす計画 懸念(4月22日 5:10更新)
計画的避難区域 正式発表へ(4月22日 5:10更新)

計画的避難区域、緊急時避難準備区域の設定について
http://kinkyu.nisa.go.jp/kinkyu/2011/04/post-107.html

原発20km圏内の家畜、全額補償へ
http://news.goo.ne.jp/topstories/nation/694/89238a155b9a692d87b7ed79e93aef8c.html

風力で原発40基分可能と試算も
http://news.goo.ne.jp/topstories/business/729/d02bc271ab02ca09b5255e3b248b4b61.html

豪首相、火力発電燃料の安定供給を確約 菅首相と会談
(朝日新聞) 2011年04月22日 01時07分
http://news.goo.ne.jp/topstories/nation/754/4766f9cd06bbf78758129e443eb20aba.html

停電時に役立つライフレシピ集
http://oshiete.goo.ne.jp/ask/liferecipe/teiden/

電気が無い時に携帯を充電するための便利な道具まとめ
http://oshiete.goo.ne.jp/liferecipe/docs/24800/

 

□ 被曝者に放射性核種による内部被曝についてインフォームドコンセントを
■ 山野辺滋晴:共立耳鼻咽喉科院長

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■from MRIC
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今回の福島第原発事故では、国際放射線防護委員会(ICRP)の提案に従って、一般
人の被曝限度量が年間1mSvから20mSvに緩和されました。同様に、水道水中の放射性
ヨードは300bq/Lに暫定的に引き上げられ、除染基準も1万3千cpmから10万cpmに引き
上げられています。これらの措置は住民の移住を回避するためですが、原発事故では、
CT検査のような外部被曝だけではなく内部被曝も伴うため、原発周辺から関東一円に
居住する人々の不安を払拭できていません。いま、こうした人々の不安を拭い去るた
めには、ストロンチウムなど様々な放射性核種による内部被曝について、医学的な立
場から丁寧にインフォームドコンセントすることが必要ではないでしょうか。

 昔、私はアイソトープ(放射性核種)実験施設で研究したことがあります。様々な
放射性核種が使用される実験施設では、放射性物質は厳しく管理されており、空間や
床面で数十~数μSv/hの放射線量率が計測する状況など許されませんでした。もちろ
ん、そうした放射能汚染状況下での飲食や日常生活など論外でしたが、現在の原発事
故周辺地域では、どんな放射性核種が存在しているのかも判らないまま、同様の環境
で住民の方々は生活しているわけです。つまり、生活環境に存在する放射性核種の種
類と濃度に関する情報が不足しているために、社会に混乱を招いているのでしょう。
いま、如何なる放射性核種が存在するのかしないのか、地域毎に情報提供する必要が
あると思います。

 原子力安全委員会作成の環境放射線モニタリング指針[1]では、原子力施設におい
て異常事態が発生した場合には、平常時モニタリングを強化し、空間放射線量率、大
気中の放射性物質、気象観測、積算線量の監視を強めて、原子力施設からの予期しな
い放射性物質又は放射線の放出を早期に検出し、環境における放射性核種の蓄積状況
を把握するよう指示しています。こうした平常時モニタリングでは、ストロンチウム
を含む様々な放射性核種が測定対象として取上げてあります。しかし、今回の原発事
故のような緊急時モニタリング時には、測定対象は放射性のヨウ素、セシウム、ウラ
ン、プルトニウムだけに限定され、ストロンチウムを始めとする多くの放射性核種が
当初の測定対象から除外されています。こうした欠陥が前述の指針にあるため、現時
点では情報公開している放射性核種が極めて少なく、大気中や海中に漂う放射性核種
の種類と濃度も公表されておらず、現状の情報公開は人々の不安を払拭するために必
要十分とは言えません。

 この指針では、内部被曝の原因となる放射性プルームの移流・拡散から人々を守る
ため、既に開発してあった緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEED
1)を活用するよう指示されています。けれども、30キロ圏外の一部地域で基準を超
える内部被曝の可能性を示唆した予測結果[2]が公表された後は公表されなくなり、
大気中の放射性核種や気象の観測結果から放射性ヨウ素やプルトニウムの飛散予測地
図を作成して人々の健康被害を防止するための情報提供は中止されています。

 日本では放射性ストロンチウムは計測対象ではありませんが、EUを始めとする多く
の諸外国では、環境試料中の放射性ストロンチウムも計測対象です[3]。(但し、日
本では放射性ストロンチウムの濃度は放射性セシウムの一割と想定してあるため除外
されています。)さらに、高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、大気中の様々
な放射性核種の種類と濃度について実際に測定結果が公表されていますし[4]、フラ
ンスの民間機構では、福島第一原発周辺で採取した土壌などの環境試料を計測し、そ
の中に含まれていた放射性ヨウ素やセシウム以外の放射性核種についても公表してい
ます[5]。このように、様々な放射性核種について観測結果を公表した上で、現状の
内部被曝が危険なレベルにない事を実証してこそ、人々の不安が払拭されると思いま
す。

 また、医学的に内部被曝量を把握するのであれば、ホールボディカウンタを使えば
内部被曝量を実測することができます。原発事業所では作業員の健康を守るため、三
ヶ月に一回の定期検査が義務付けられていますから、当然、今回の事故では周辺住民
にも同様の検査を実施すべきだと思います。JOC臨界事故では、周辺住民へのホール
ボディカウンタ検査の実施が遅れてしまい、事故当時の内部被曝状況を把握できな
かった事が問題視されています。同じ過ちを繰り返さないために、今回の福島原発事
故では周辺住民に対してホールボディカウンタの存在を早急に周知して、体内のヨウ
素131が測定限界以下になる前に、希望者に対してホールボディカウンタ検査を行い
サンプリングすべきでしょう。さらに、国立がん研究センター嘉山孝正理事長が提案
されたように、原発周辺住民にフィルムバッジを配布し外部被曝量を各個人で定量す
べきです。現状は間違いなく非常事態ですから、医療関係者が日常的に行っている放
射線量管理を超法規的に暫く中断し、余剰となるフィルムバッジを福島県東部の住民
全員に優先して配布することも検討すべきだと思います。

 皆さん御存知のように、原爆の被爆者は大量の放射線が晩発性障害を引き起こす事
を体験していますから、放射能の危険性を世界に訴えています。ただ、その一方で、
ある程度までの放射線を外部被曝したり内部被曝したりしても、一部の人々を除いて
一生を大過なく健康に過ごせることも被爆者は知っています。こうした知見から類推
すれば、被曝しても健康を害さないためには、放射線被曝をできるだけ少なくすべき
です。いま、年間累積放射線量が100mSV以下であれば安全で危険は極めて少ないかの
ような風潮がありますが、被曝者の安全を守るためには、測定困難なα線やβ線を出
す放射性核種による内部被曝も考慮し、できるだけ被曝しないように十分な被曝防護
対策を周知徹底する必要があることを忘れてはいけないでしょう。

 私は被爆二世で、放射線影響研究所の健康調査を受けています。ですから、被曝者
の健康を守るためには、生活環境の放射線量を正確に計測して危険性の有無を調べ、
必要な検査を確実に実施し継続していくことが大切だと思います。そのためには、い
ま広く行われている空間線量率の計測だけでなく、大気や放射性降下物に含まれる様
々な放射性核種について計測して地域の危険性を把握しつつ、被曝者各個の被曝線量
を管理して頂きたいと思います。原発推進では安全性ばかりが強調されて、危機管理
が蔑ろにされました。この過ちを繰り返さないためにも、予期せぬ内部被曝を防止す
るためにストロンチウムなどの危険な放射性核種に関する計測体制を整備した上で、
計測した情報を全て公開して適切に危機管理し、どこまでが安全で、どこからが危険
なのか、原発周辺で生活する被曝者へのインフォームドコンセントの確立をお願い致
します。

参照[1] http://www.nsc.go.jp/anzen/sonota/houkoku/houkoku20080327.pdf
参照[2] http://www.asahi.com/national/update/0326/TKY201103260337.html
参照[3] http://www.jetro.go.jp/world/shinsai/20110411_01.html
参照[4] http://www.kek.jp/quake/radmonitor/index.html
参照[5] http://www.acro.eu.org/OCJ_jp

共立耳鼻咽喉科院長
山野辺滋晴

 

 

東電が、自然災害なので東電の損害補償の対象ではないといっておりますが、、

本田先生のまとめから

日本の原子力損害賠償制度
--------------------------
この制度は「原子力損害の賠償に関する法律」、「原子力損害賠償補償契約
に関する法律」(いずれも、昭和36年(1961年)6月17日に公布、昭和37年(1
962年)3月15日に施行)により規定されているが、ほぼ10年毎の見直しにより、
賠償措置額の引上げ等の改正が実施されている。
(1) 原子力事業者の無過失損害賠償責任と賠償責任の原子力事業者への集中
(2) 原子力事業者への損害賠償措置の強制
(3) 賠償措置額超過の原子力損害等に対する国の措置

自然災害の取扱い
------------------
「異常に巨大な天災地変」にあたらないものは、原子力事業者の責任となる
が、事由により以下のとおり区分される。

1)地震・噴火・津波→政府補償契約でカバー
2) 1以外の事由(洪水、高潮、台風、暴風雨等)→民間損害保険会社の賠
償責任保険でカバー

民間保険会社
-----------------
原子力事業者からの保険引受に当たるため、昭和35年(1960年)3月3日に
国内外の損害保険会社から成る日本原子力保険プールが結成されている。
損害賠償責任保険の賠償措置額は現在1200億円

国の措置
-----------
原賠法16条では、国の措置として、賠償措置額を超える原子力損害が発生し
た場合には、政府は、国会の議決により、政府に属させられた権限の範囲内に
おいて、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助措置を講じることを
定めている。また、17条では、原子力事業者の責任が免責される場合(異常に
巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じた原子力損害)等においては、政
府により、被災者の救助及び被害の拡大の防止のために必要な措置を講ずべき
ことを定めている。

原子力損害の賠償に関する法律
----------------------------
第二章 原子力損害賠償責任
(無過失責任、責任の集中等)
第三条  原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与え
たときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責
めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱に
よつて生じたものであるときは、この限りでない。

(損害賠償措置の内容)
第七条  損害賠償措置は、次条の規定の適用がある場合を除き、原子力損害
賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締結若しくは供託であつて、
その措置により、一工場若しくは一事業所当たり若しくは一原子力船当たり千
二百億円(政令で定める原子炉の運転等については、千二百億円以内で政令で
定める金額とする。以下「賠償措置額」という。)を原子力損害の賠償に充て
ることができるものとして文部科学大臣の承認を受けたもの又はこれらに相当
する措置であつて文部科学大臣の承認を受けたものとする。

2  文部科学大臣は、原子力事業者が第三条の規定により原子力損害を賠償
したことにより原子力損害の賠償に充てるべき金額が賠償措置額未満となつた
場合において、原子力損害の賠償の履行を確保するため必要があると認めると
きは、当該原子力事業者に対し、期限を指定し、これを賠償措置額にすること
を命ずることができる。

第四章 国の措置
(国の措置)
第十六条  政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力事業者(外国
原子力船に係る原子力事業者を除く。)が第三条の規定により損害を賠償する
責めに任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、この法律の目的を達成するため
必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償
するために必要な援助を行なうものとする。

2  前項の援助は、国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内にお
いて行なうものとする。

第十七条  政府は、第三条第一項ただし書の場合又は第七条の二第二項の原
子力損害で同項に規定する額をこえると認められるものが生じた場合において
は、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにする
ものとする。

免責事項:「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱」
------------------------------------------------
1961年(昭和36年)5月26日 参議院 商工委員会:「東京大学教授 加藤 一郎」
○参考人(加藤一郎君) 加藤でございます。
この法案では、三条一項ただし書きにおきまして、「異常に巨大な天災地変
又は社会的動乱」というものを免責事由としてあげております。
関東大震災の二倍あるいは三倍程度のものには耐え得るような、そういう原
子炉を作らなければならない。逆に言いますと、そこまでは免責事由になら
ない

日本原子力保険プールについて(以下「保険プール」とする)
----------------------------------------------------------
日本プールは、1960年に損害保険会社20社により設立され、現在の会員保険
会社は24社で、保険業法に基づき金融庁から独禁法の適用除外の認可を得て、
原子力保険事業に関する共同行為を行なっております。
このようなプール組織に基づき、原子力保険を引受けることは各国に共通し
ており、日本プールでは、さらに世界21プールと再保険取引を行い、巨額の原
子力保険の引受を可能としております。尚、この様なプール間の再保険取引は、
世界各国のプール間で相互に行われ、世界各地で必要な保険金額が確保されて
おります。

2.原子力施設賠償責任保険について
一方、この保険は原子力施設の運転等に伴って生じた事故に起因して第三者
に与えた原子力損害または一般損害について、事業者が負う法律上の損害賠償
責任を補償する保険です。原賠法が適用される施設については、同法により定
められる損害賠償措置の手段の一つとなっております。
尚、自動車保険とは異なり、「示談代行」を保険会社が行うものではないた
め、まず契約者である事業者(被保険者)が被害者から損害賠償請求を受け、
その後、保険プールが請求内容を精査、支払保険金額を認定し、事業者(被保
険者)に保険金をお支払いすることになります。

4.保険プールの果たした役割
10月5日の段階で、各会員会社の損害調査担当社員を組織化し、損害査定態勢
を構築。契約者へのバックアップを行うとともに、賠償事故処理の豊富な知識
と経験、専門性を活かして損害認定基準案を作成した。保険金支払の基礎デー
タとなる損害形態分類表、損害計算書、損害額シミュレーション等の資料は、
JCOおよび原子力損害調査研究会にも提示され、その後、同研究会が損害賠償
基準を作成する際の検討資料とされた。又、原子力損害に対するプール損害認
定基準については、同研究会に概ね許容されるものとなった。

参考
----
日本の原子力損害賠償制度の概要 (10-06-04-01)
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=10-06-04-01
この制度は「原子力損害の賠償に関する法律」、「原子力損害賠償補償契約
に関する法律」(いずれも、昭和36年(1961年)6月17日に公布、昭和37年(1
962年)3月15日に施行)により規定されているが、ほぼ10年毎の見直しにより、
賠償措置額の引上げ等の改正が実施されている。
<更新年月>2006年03月   
(1) 原子力事業者の無過失損害賠償責任と賠償責任の原子力事業者への集中
(2) 原子力事業者への損害賠償措置の強制
(3) 賠償措置額超過の原子力損害等に対する国の措置

2.原子力事業者への損害賠償措置の強制

 原賠法6条では、損害賠償措置を講ずべき義務として、「原子力事業者は、
損害賠償措置を講じていなければ、原子炉の運転等をしてはならない」と定め
られている。損害賠償措置の典型的なものは、(1)原子力損害賠償責任保険
契約の締結と、(2)原子力損害賠償補償契約の締結である。
(1)は、原子力事業者(保険契約者)と保険会社との契約によりなされる
ものである。これについては、原子力事業者からの保険引受に当たるため、昭
和35年(1960年)3月3日に国内外の損害保険会社から成る日本原子力保険プー
ルが結成されている。

 (2)は、原子力事業者と政府との補償契約であり、補償契約に関する事項
を定めるものとして、「原子力損害賠償補償契約に関する法律」が制定されて
いる。
なお(1)と(2)とは、原子力損害をその性格によって区分し、両者が並列
的に一体となって原子力損害を填補するという関係にある。すなわち、(2)
は、「責任保険契約その他の原子力損害を賠償するための措置によってはうめ
ることができない原子力損害」の填補を行うとされており、具体的には、地震、
噴火、津波によって生じた原子力損害、正常運転によって生じた原子力損害、
原子力事故等があった時点から10年を超えてから損害賠償請求がなされたもの)
が該当する。

 また賠償措置額については、平成11年(1999年)の原賠法の改正により、現
在1サイト当たり最高600億円となっている。(尚、原子炉の運転等、原子力
事業の区分に応じ、政令により、賠償措置額が定められている。)
3.国の措置
原賠法16条では、国の措置として、賠償措置額を超える原子力損害が発生し
た場合には、政府は、国会の議決により、政府に属させられた権限の範囲内に
おいて、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助措置を講じることを
定めている。また、17条では、原子力事業者の責任が免責される場合(異常に
巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じた原子力損害)等においては、政
府により、被災者の救助及び被害の拡大の防止のために必要な措置を講ずべき
ことを定めている。
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原子力損害賠償制度
http://www.mext.go.jp/a_menu/anzenkakuho/baisho/index.html

原子力の開発利用に当たっては安全確保を図ることが大前提でありますが、万
一の場合の原子力事故による被害者の救済等を目的として、「原子力損害の賠
償に関する法律」(原賠法)に基づく原子力損害賠償制度が設けられています。

この法律は、1.原子力事業者に無過失・無限の賠償責任を課すとともに、その
責任を原子力事業者に集中し、

2.賠償責任の履行を迅速かつ確実にするため、原子力事業者に対して原子力損
害賠償責任保険への加入等の損害賠償措置を講じることを義務づけ(賠償措置
額は原子炉の運転等の種類により異なりますが、通常の商業規模の原子炉の場
合の賠償措置額は現在1200億円)、

3.賠償措置額を超える原子力損害が発生した場合に国が原子力事業者に必要な
援助を行うことが可能とすることにより被害者救済に遺漏がないよう措置する、
等について定めるものです。なお、この原子力損害賠償制度については、平成
11年にJCO臨界事故を契機として賠償措置額の引き上げを行うなど、諸情勢の
変化に対応した改正を行ってきているところです。

原子力損害賠償補償契約に関する法律
(昭和三十六年六月十七日法律第百四十八号)
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原子力損害の賠償に関する法律
(昭和三十六年六月十七日法律第百四十七号)
最終改正:平成二一年四月一七日法律第一九号
第二章 原子力損害賠償責任
(無過失責任、責任の集中等)
第三条  原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与え
たときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責
めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱に
よつて生じたものであるときは、この限りでない。

第四条  前条の場合においては、同条の規定により損害を賠償する責めに任
ずべき原子力事業者以外の者は、その損害を賠償する責めに任じない。

(損害賠償措置の内容)
第七条  損害賠償措置は、次条の規定の適用がある場合を除き、原子力損害
賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締結若しくは供託であつて、
その措置により、一工場若しくは一事業所当たり若しくは一原子力船当たり千
二百億円(政令で定める原子炉の運転等については、千二百億円以内で政令で
定める金額とする。以下「賠償措置額」という。)を原子力損害の賠償に充て
ることができるものとして文部科学大臣の承認を受けたもの又はこれらに相当
する措置であつて文部科学大臣の承認を受けたものとする。

2  文部科学大臣は、原子力事業者が第三条の規定により原子力損害を賠償
したことにより原子力損害の賠償に充てるべき金額が賠償措置額未満となつた
場合において、原子力損害の賠償の履行を確保するため必要があると認めると
きは、当該原子力事業者に対し、期限を指定し、これを賠償措置額にすること
を命ずることができる。

第四章 国の措置
(国の措置)
第十六条  政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力事業者(外国
原子力船に係る原子力事業者を除く。)が第三条の規定により損害を賠償する
責めに任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、この法律の目的を達成するため
必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償
するために必要な援助を行なうものとする。

2  前項の援助は、国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内にお
いて行なうものとする。

第十七条  政府は、第三条第一項ただし書の場合又は第七条の二第二項の原
子力損害で同項に規定する額をこえると認められるものが生じた場合において
は、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにする
ものとする。
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第五章 原子力損害賠償紛争審査会
第十八条  文部科学省に、原子力損害の賠償に関して紛争が生じた場合にお
ける和解の仲介及び当該紛争の当事者による自主的な解決に資する一般的な指
針の策定に係る事務を行わせるため、政令の定めるところにより、原子力損害
賠償紛争審査会(以下この条において「審査会」という。)を置くことができ
る。
2  審査会は、次に掲げる事務を処理する。
一  原子力損害の賠償に関する紛争について和解の仲介を行うこと。
二  原子力損害の賠償に関する紛争について原子力損害の範囲の判定の指針
その他の当該紛争の当事者による自主的な解決に資する一般的な指針を定める
こと。
三  前二号に掲げる事務を行うため必要な原子力損害の調査及び評価を行う
こと。
3  前二項に定めるもののほか、審査会の組織及び運営並びに和解の仲介の
申立及びその処理の手続に関し必要な事項は、政令で定める。

東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲
の判定等に関する第一次指針

免責事由(異常に巨大な天災地変)について
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/old/songai/siryo/siryo03/siryo3-6.htm
(2)社会的動乱
「異常に巨大な天災地変」とは、一般的には日本の歴史上余り例の見られな
い大地震、大噴火、大風水災等が考えられる。例えば、関東大震災を相当程度
(約3倍以上)上回るものをいうと解している。
原子力損害賠償制度に関する国際条約としては、OECDのパリ条約とIA
EAのウィーン条約があるが、前者では「異常に巨大な天災地変(agravenatur
aldisasterofanexceptionalcharacter)」が免責となっているのに対して、昨
年9月に採択(未発効)されたウィーン条約改正議定書においては、第IV条パ
ラ3において従来免責とされていた「異常に巨大な天災地変」が免責となって
いない。
2.我が国原賠法の考え方
(1)賠償責任の厳格化
被害者保護の立場から、原子力事業者の責任を無過失賠償責任とするととも
に、原子力事業者の責任の免除事由を通常の「不可抗力」よりも大幅に限定し、
極めて異例な事由に限るという意図で、上記二つのみを免責とした。
(2)自然災害の取扱い
「異常に巨大な天災地変」にあたらないものは、原子力事業者の責任となる
が、事由により以下のとおり区分される。
1)地震・噴火・津波→政府補償契約でカバー
2) 1以外の事由(洪水、高潮、台風、暴風雨等)→民間損害保険会社の賠
償責任保険でカバー

損害賠償措置等における国の役割
http://www.jaif.or.jp/ja/seisaku/genbai/genbaihou_series14.html

あなたに知ってもらいたい原賠制度
http://www.jaif.or.jp/ja/seisaku/genbai/genbaihou_activity.html

異常に巨大な天災地変」とは。国会会議録編Add Star
1961年(昭和36年)5月30日 参議院 商工委員会
http://d.hatena.ne.jp/AgiYukio/20110423/1303654951
引用中、発言者の肩書(当時)は以下。
「加藤一郎」:「東京大学教授 加藤 一郎」

○参考人(加藤一郎君) 加藤でございます。
私の専門は民法でございまして、特に不法行為に興味を持っておりますので、
前にも「ジュリスト」という雑誌の原子力災害補償という特集が百九十号、三
十四年十一月十五日号に出ておりますが、前にも原子力災害立法上の問題点と
いうことを書いたことがございます。おそらくそういうことでお呼び出しを受
けだのだと思いますが、そこでこの法案の全体の仕組みについては、金沢先生
からお話をいただいた方がいいと思いますので、私は主として損害賠償責任に
ついて民法の特則を設けたという、この法案で申しますと第二章のところを主
として申し上げることにしたいと思います。
【略】
以上が、無過失責任を認める根拠及びそれに関する問題でございますが、第二
の問題といたしまして、その場合の免責事由をどこまで認めるかということが
ございます。この法案では、三条一項ただし書きにおきまして、「異常に巨大
な天災地変又は社会的動乱」というものを免責事由としてあげております。こ
の点は、ともかく原子炉のように非常に大きな損害が起こる危険のある場合に
は、今までのところから予想し得るようなものは全部予想して、原子炉の設定
その他の措置をしなければならない。従って、普通の、いわゆる不可抗力とい
われるものについて、広く免責を認める必要はないわけであります。むしろ今
まで予想されたものについては万全の措置を講じて、そこから生じた損害は全
部賠償させるという態勢が必要であります。そこで、たとえばここでいう「巨
大な天災地変」ということの解釈といたしましても、よくわが国では地震が問
題になりますが、今まで出てきたわが国最大の地震にはもちろん耐え得るもの
でなければならない。さらにそれから、今後も、今までの最大限度を越えるよ
うな地震が起こることもあり得るわけですから、そこにさらに余裕を見まして、
簡単に言いますと、関東大震災の二倍あるいは三倍程度のものには耐え得るよ
うな、そういう原子炉を作らなければならない。逆に言いますと、そこまでは
免責事由にならないのでありまして、もう人間の想像を越えるような非常に大
きな天災地変が起こった場合にだけ、初めて免責を認めるということになると
思われます。そういう意味で、これが「異常に巨大な」という形容詞を使って
いるのは適当な限定方法ではないだろうかと思われます。これは、結局、保険
ではカバーできないことになりますので、あとで出ます政府が十七条によって
災害救助を行なうことになるわけであります。
1961年(昭和36年)5月26日 参議院 商工委員会

http://oshiete.goo.ne.jp/qa/6618761.html
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1258812362
「異常に巨大な」の政府解釈は「日本の歴史上余り例のみられない大地震、大
噴火、大風水災等」とされています。これを具体的に述べたのは昭和36年の立
法時の国会趣旨説明で「たとえば関東大震災の3倍も4倍もの地震」という表現
です。以降、関東大震災の3倍以上という表現が事実上の公式見解です。ただ、
平成10年の原子力損害賠償制度専門部会の議事録に次のようなくだりがありま
す。
(村上)結論は賛成だが、関東大震災の三倍以上とは、何が三倍ということか。
また、社会的動乱と異常に巨大な天災地変との関係はどういうものか。(下山)
一般的には、震度・マグニチュード・加速度であろうが、三倍といったときに
は、おそらく加速度をいったものであろう。関東大震災がコンマ2くらいなの
で、コンマ6程度のものか。発生した損害の規模でなく、原因、主に地震の規
模であろう。(事務局)社会的動乱とは戦争、内乱等をいい、異常に巨大な天
災地変とは別概念である。(能澤)原子炉は加速度で関東大震災の三倍までは
耐えられるよう設計しているだろうが、一般の建物等の被害はそれをはるかに
超えるものとなるだろう。(部会長)異常に巨大なといったときの基準は、現
時点では加速度であろうと推定できる。
ということで政府の解釈は、関東大震災の3倍以上で踏襲されています。加速
度で判断となるとよくわかりませんが、関東大震災は死亡者数14万人、避難者
190万人でしたから、いまの事態はその3倍以上などとは到底いえません。ちな
みに米国の原子力損害賠償制度は、戦乱に免責はあっても、自然災害には免責
はありません。いずれにしろ今回の事故について免責はあり得ないこととなり
ます。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E6%90%8D%E5%AE%B3%E3%81%AE%E8%B3%A0%E5%84%9F%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%B3%95%E5%BE%8B

JCO事故発生の際の日本原子力保険プールの対応についてご報告します。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/007/shiryo/08062302/002.htm
1.日本原子力保険プールについて(以下「保険プール」とする)

 日本プールは、1960年に損害保険会社20社により設立され、現在の会員保険
会社は24社で、保険業法に基づき金融庁から独禁法の適用除外の認可を得て、
原子力保険事業に関する共同行為を行なっております。
このようなプール組織に基づき、原子力保険を引受けることは各国に共通し
ており、日本プールでは、さらに世界21プールと再保険取引を行い、巨額の原
子力保険の引受を可能としております。尚、この様なプール間の再保険取引は、
世界各国のプール間で相互に行われ、世界各地で必要な保険金額が確保されて
おります。2.原子力施設賠償責任保険について

 一方、この保険は原子力施設の運転等に伴って生じた事故に起因して第三者
に与えた原子力損害または一般損害について、事業者が負う法律上の損害賠償
責任を補償する保険です。原賠法が適用される施設については、同法により定
められる損害賠償措置の手段の一つとなっております。
尚、自動車保険とは異なり、「示談代行」を保険会社が行うものではないた
め、まず契約者である事業者(被保険者)が被害者から損害賠償請求を受け、
その後、保険プールが請求内容を精査、支払保険金額を認定し、事業者(被保
険者)に保険金をお支払いすることになります。

4.保険プールの果たした役割
10月5日の段階で、各会員会社の損害調査担当社員を組織化し、損害査定態勢
を構築。契約者へのバックアップを行うとともに、賠償事故処理の豊富な知識
と経験、専門性を活かして損害認定基準案を作成した。保険金支払の基礎デー
タとなる損害形態分類表、損害計算書、損害額シミュレーション等の資料は、
JCOおよび原子力損害調査研究会にも提示され、その後、同研究会が損害賠償
基準を作成する際の検討資料とされた。又、原子力損害に対するプール損害認
定基準については、同研究会に概ね許容されるものとなった。事故後8ヶ月内
に保険金額(損害賠償措置額)10億円の支払を完了。

5.今後の課題・検討項目
JCO事故は被害届約7,000件、損害賠償額は凡そ150億円と言う規模であり、措
置額600億円の事業者の場合は、事業規模からも賠償請求の件数・金額は相当
な規模となると推測されるので、そうした大量かつ広域にわたる災害対応につ
き具体的な準備をしておく必要がございます。保険プールとしても今後改定さ
れる損害賠償措置額をも踏まえた事故を想定し、対応策の見直し作業を鋭意行
っております。一方、より広い視野で見れば、事業者、政府(文科省、他省庁)、
自治体(県、市町村)、保険プールなどの関係者による対応態勢及び各種マニ
ュアル等を事前に準備すると共に、日頃より、万万が一の場合の避難行動の方
法や関係者を挙げて被害者救済への適切な対応を取ることを周知することが、
肝要と思われます。事故発生時には、この対応態勢に基づき、迅速、円滑、適
正な損害賠償の実施を期するために、実効性のある態勢の構築と運営を継続さ
せる仕組みが必要と考えます。

 

日本の電気料は高い
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総括原価方式
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経営努力へのインセンティブが働きにくい。資本過大化傾向

ヤードスティック
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コスト削減インセンティブが働きにくい。

資本過剰
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公正報酬率規制の下で利潤を最大化しようと資本過剰になった
電力会社を経営する全ての費用をコストに転嫁する事が出来る上に、一定
の利益率まで保証されていると言う、決して赤字にならないシステムです。
余剰金により、結果として様々な問題やモラルハザード(過大な広告費、
工作費、高金利借入、補助金頼り)が起きている。

電気事業の自由化
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全面自由化全ての需要家に対する小売供給を自由化すること。
部分自由化一部の需要家に対してのみ小売供給を自由化すること。
プール市場の創設
イギリス等で導入されている制度で系統を管理する会社が、翌日の30分毎の
需要想定を行い、その時間毎に、毎日発電事業者による入札を実施するもの。

自由化とはなにか
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電力の自由化とはそもそも何だろうか。
発電には大きなダムの建設など非常に大きな投資が必要となるため、電力事業
は、地域的な自然独占が成り立つ産業であった。このため、「独占は認めたう
えで料金は規制する」という原則が、これまで当然のこととされてきた。しか
し、最近では個々の発電所の発電量に比べて、市場のサイズが格段に大きくな
った。さらに技術進歩の結果、小型発電機でも発電ができるようになってきた。
特に米国で行われているような、天然ガスを使用した発電は小規模で安価に発
電できるようになってきた。このため、発電には規模の経済があるとは言えな
くなった。

つまるところ、規模の経済は送電線配電線にのみあるということになる。確
かに送電線が一つできれば、別の会社が重複して作成することは不経済である。
送電配電のサービスの供給会社は、自然独占にならざるを得ない。このため、
電力会社の発電部門と送電部門を別の会社にして切り離し、送配電会社のみ
に独占を認める。その一方で、発電には独占を認めず、どんな会社でも自由に
参入できるという仕組みにすることが合理的になった。これを完全自由化と呼
ぶ。既に完全自由化が行われた国々では、電力会社を無理やり送配電会社と発
電会社に分割させた。例えば、英国や北欧では、自由化にあたって、国営の電
力会社から発電部門を分割して民営化した。また、カリフォルニアでは民間の
電力会社の発電部門を分離独立させた。その上で、送配電会社には独占を認め
るが、発電会社には独占を認めず、そのかわりに料金規制をしないことにした
のである。その結果、発電コストの安い発電会社が生き残り、高いところは淘
汰されることとなり、また技術進歩も進んだ。これが海外の電力の価格を引き
下げた。

日本では、2000年3月から、電力の小売部分自由化が始まることになった。小
売の自由化とは、発電事業者から最終需要家への直接供給(つまり電力の産地
直売)の自由化のことである。この制度の下では、直接供給で使用する送電線
や配電線の使用料である送配電料金を直接供給の売り手が送電料金として電力
会社に支払う。しかし、電力料金は、直接供給の売り手と買い手の間で自由に
決定することになる。ただし今回の自由化は、特別高圧の需要家(使用電力20
00kw 以上、2 万V以上受電)のみを対象として開始される。これが、今回の
自由化が部分自由化であると言うことの意味である。

東京電力等の主張
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競争の導入等について
質問:最近、ドイツで電力の地域独占の廃止が伝えられ、米英でもその方向
に進みつつあると聞くが、わが国で近い将来、発送配電の一貫体制を改め
ることについて賛成か。
答:
以上を勘案すると、責任ある企業による発送配電一貫体制が日本にとって
望ましいと考えます。
なお、英国型の水平分割体制を日本に適用する場合、以下のようにエネルギー
セキュリティー、供給信頼度などの面で問題が生じる恐れがあります。
1)エネルギーセキュリティー
短期的に低コストで、リードタイムの短い電源に開発が集中し、資源の枯渇、
環境問題等、長期を見据えた安定供給、経済性、環境保全の確保(ベストミッ
クスの形成)が困難。(英国の場合、天然ガス火力に特化。自国資源で賄える
という特殊性あり)

石油代替電源を持たなくなり、燃料調達面での化石燃料に対するバーゲニング
パワーが低下。経済性だけでは律しきれず、かつ厳しい地元折衝を必要とする
電源の開発が困難。(英国では、原子力新エネルギー助成のための化石燃料
賦課金制度あり)

2)供給信頼度
新規電源で、6~20年。基幹系統建設にも約10年の建設リードタイムが必要な
中で、長期的視点からの合理的、効率的な設備形成が困難。(別会社の場合、
電源ができても流通ができないとか、あるいはその逆の事態によって経済的ロ
スが生ずることになりかねない)また需要が伸びている中での競争による安定
した電源の確保は困難。(英国の場合は、需要の伸びは低く、設備率も高い)

電源立地が偏在し、系統設備の効率的な形成運用が困難化。(英国の場合、
北部に電源が偏在。地域別送電線使用料金の導入などで経済的な立地政策を推
進しようとしているが、機能せず)

供給義務の所在が曖昧~安定供給の欠如。(英国の場合、配電会社に供給義務
があるが、自社で電源を所有していない。また発電会社に電源開発義務なし)

発電市場でのキャンセルなどから、需給逼迫が起こる可能性大。(英国の場合、
プール入札におけるキャンセルに罰則がなく、95年に需給逼迫がおきた)

(3)環境省エネルギー

o電源開発がコスト最優先で進められているため、取り扱いの容易な化石燃料
の電源が増え、環境負荷も増大。(英国の場合、天然ガスが石炭に代替。普通
は化石燃料が増える)

販売競争により、省エネルギー負荷平準化の努力がおろそかになる。

(4)公平性

大口が優遇され小口にしわ寄せされる可能性。(英国の場合は、需要家規模別
に自由化したため、その傾向大)

(5)規制コスト

部門間取引や競争の監督などにより、規制コストは増大。(英国のOFFERは90
年~93年で、人員1.5倍、予算10.5倍増)

(参考1)欧米の電気事業の規制緩和の現状

<英国>90年の民営化の際に、発送配電を水平分割し、発電市場には30分
単位での入札に基づく競争原理を導入している。また、小売部門についても段
階的に自由化を図っている途上にある。 

<米国>電気事業者の形態は配電事業のみを行う事業者から発送配電一貫
の事業者(約300社)までさまざま。その総数は3,000を超える。発電部門につい
ては、IPPの参入障壁が撤廃されるなど競争原理が導入されているが、電力
小売の自由化に関する権限は、基本的に州に属するとされており、その対応は
州毎に一様ではない。また、自由化に先進的な州においても、会計分離(機能
的分離)によりサービスごとの費用を細分化することを求めるものが主流で、
必ずしも発送配電の分割(別会社化)が求められているわけではない。

<ドイツ>電気事業の自由化法案が閣議決定されたが、昨年12月に上院で否決
された。

(参考2)電気事業への競争導入に伴う問題点(英米)

 電気事業の規制緩和を進めている英米では、競争導入に伴い、以下のような
問題点も生じてきている。

<英国>水平分割の結果、配電会社が供給区域内の需要家への供給義務を負う
ことになったが、発電会社には供給義務はなく、送電会社も含め、長期的な需
給の安定について包括的な責任を負っている会社はない。そのため、電源の地
理的な偏在や発電を予定していた発電所の急な運転停止等による電力価格の高
騰といった問題が生じている。

<米国>競争市場への対応を図ろうとする電力会社が補修費等を削減、広域系
統管理に関する制度(機関)が未整備であることとも相俟って、96年には数度
の広域停電が発生。競争の導入により、短期的な利益確保が優先され、長期的
な視点での設備形成運用が保障されない可能性が指摘されている。

反論
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自由化のデメリットはあるが、回避は単に制度設計の問題であろう。
自由化の方法
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電気事業には (1)発電→(2)送電→(3)システムコントロール→(4)配電→
(5)供給という機能があります。(2)~(4)は自然独占ですが、(1)の発電と(5)
の供給には競争が導入できます。発電市場は多くの競争者の存在が可能です。
しかし、供給市場が自由化されない限り電気事業は競争的にはなりえません。

 でも、新規参入者が新たに送電線を作るのでは非効率極まりなしです。です
から既存の送電網を利用した競争的な供給はどのようにすればいいかという問
題になります。方法としては送電線の使用料(託送料)を電力会社に支払う方
法と、電力を完全に無名な商品として扱うプール制があります。イングランド
の自由化は国営企業の民営化だったのでプール制を採りましたが、うまく機能
せずNETAという制度に変えました。

 既存事業者と新規参入者が同じ条件で送電網を使用できることが対等な競争
のための前提です。しかし、送電網は既存電力会社が所有しています。この私
有財産を強制的に収用するわけにはいきません。憲法で保障されている財産権
の侵害になるというのが定説です。

 部分自由化された現在は電力会社は競争部門と非競争部門が併存しています。
これらを分けることを会計のアンバンドリングといいます。託送料の計算方法
が透明で公平であればいいのですが、この計算方法がとてつもなくややこしい。
図のようなABC会計制度と呼ばれる計算方法を採用していますが、配賦基準や
費用の区切りの方法は何通りもの考え方があるからです。既存電力会社が一民
間企業の立場で、かつ、競争の当事者に立っているのですから会計面のアンバ
ンドリングだけでは不十分です。 
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日本の電力市場に関するサーベイ
http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/583/583-03.pdf

電力自由化における制度設計のあり方1
http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/~ida/2Kyouiku/1Gakubu/2002/2002file/uedahino030108.pdf

○ 小売自由化による電気事業費用の低下が余剰額に与えた影響電気事業費用
と電力価格との高い相関関係より、大まかな推計を行ったところ、小売自由化
による電気事業費用削減の電力料金定価に与えた影響は、2003 年時点で7.5%
となった。これより、自由化州における小売自由化による電気事業費用削減の
影響は、消費者余剰増分額で76~96 億ドル、生産者余剰増分額では、費用削
減効果が全て料金低下に反映されたと仮定することによりゼロ、よって総余剰
増分額は消費者余剰増額分と同額の76~96 億ドルという結果が得られた。

参考文献
-------------
公共料金
---------------
よくわかる原子力 - 電力のコスト計算方式
http://ceron.jp/url/www.nuketext.org/mondaiten_cost.html

総括原価方式に基づく料金設定
http://www.enecho.meti.go.jp/denkihp/bunkakai/kihon_mondai/keito_riyo/1th/k1th-siryo5sanko.pdf

わが国の公益企業の範囲と料金設定
http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10129/2367/2/WagaKuninoKoekiKigyo_5.pdf

料金制度に係る主な論点
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/road/dai24/24siryou4.pdf

公営電気の法的位置付け
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kg/htd/grp/sankousiryou.pdf

問題
----------------
おかしな電気料金損害賠償も原価??
http://plaza.rakuten.co.jp/yumeakinai/diary/201104280000/

第6章 電力―規制の効率化と競争導入で改革を―矢島 正之
http://www.mof.go.jp/pri/research/conference/zk036j.pdf
我が国の電気料金は高い。

公益事業会社の利益調整に関する実証研究
http://kamome.lib.ynu.ac.jp/dspace/bitstream/10131/7406/1/9-Takeuchi.pdf
利益を最大にするように動く
公益企業論 第10回 公益企業の 料金問題(1):料金決定手続きと料金水準問題 その1
http://www12.plala.or.jp/mannheim/Koekikigyo-ryokin%281%29.pdf
b.総括原価方式
1.総括原価方式の理論的基礎
平均費用原理(full-cost-principle)
2.2種類の総括原価方式
i.積み上げ方式
ii.レートベース方式
3.総括原価方式の問題点
i.経営努力へのインセンティブが働きにくい(レートベース方式では、
相対的に改善)
ii.資本過大化傾向

料金制度に係る主な論点
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/road/dai18/18siryou8.pdf
ヤードスティック
最も評価の高い事業者に対してはコスト削減インセ
ンティブが働きにくい。

日本の電気事業におけるアヴァーチジョンソン効果に関する実証研究
http://www.cirje.e.u-tokyo.ac.jp/research/workshops/micro/micropaper04/micro_thesis/maeda.pdf
原価算定の際に,公正報酬率規制の下で利潤を最大化しようと資本過剰になっ
たと考えられる.

電力のコスト計算方式
http://www.nuketext.org/mondaiten_cost.html
総括原価方式
電力自由化がもたらすもの
ヤードスティック方式 まやかしのコスト新評価方式
電力政策の問題点

電気料金について考えてみました。 
2007年12月22日(土)投稿
http://www.m-kankyo.jp/blog/74.html
電力会社を経営する全ての費用をコストに転嫁する事が出来る上に、一定
の利益率まで保証されていると言う、決して赤字にならないシステムです。

自由化
----------
国有化も?問題山積みの東京電力についてまとめてみた
http://matome.naver.jp/odai/2130153990564320701
計画停電や福島第一原子力発電所の対応で窮地に立たされている東電。避難住
民への補償費や原発の処理費にかかる巨額コストで、経営危機に立たされてい
ます。多くの個人投資家や企業公共機関からも比較的安定している投資先と
投資されていただけに、国有化→株券だただの紙切れになんていうことになっ
たら…。更新日: 2011年04月01日

2000年3月13日原子力長計第2分科会第7回電力自由化と使用済み燃料
東京大学 空間情報科学研究センター 八田達夫
http://godchild.apgeo.com/Deregu$eleuti$usedfuel.pdf
.電力自由化と原子力政策
A.電力自由化とはなにか
電力の自由化とはそもそも何だろうか。
発電には大きなダムの建設など非常に大きな投資が必要となるため、電力事業
は、地域的な自然独占が成り立つ産業であった。このため、「独占は認めたう
えで料金は規制する」という原則が、これまで当然のこととされてきた。しか
し、最近では個々の発電所の発電量に比べて、市場のサイズが格段に大きくな
った。さらに技術進歩の結果、小型発電機でも発電ができるようになってきた。
特に米国で行われているような、天然ガスを使用した発電は小規模で安価に発
電できるようになってきた。このため、発電には規模の経済があるとは言えな
くなった。

つまるところ、規模の経済は送電線配電線にのみあるということになる。確
かに送電線が一つできれば、別の会社が重複して作成することは不経済である。
送電配電のサービスの供給会社は、自然独占にならざるを得ない。このため、
電力会社の発電部門と送電部門を別の会社にして切り離し、送配電会社のみ
に独占を認める。その一方で、発電には独占を認めず、どんな会社でも自由に
参入できるという仕組みにすることが合理的になった。これを完全自由化と呼
ぶ。既に完全自由化が行われた国々では、電力会社を無理やり送配電会社と発
電会社に分割させた。例えば、英国や北欧では、自由化にあたって、国営の電
力会社から発電部門を分割して民営化した。また、カリフォルニアでは民間の
電力会社の発電部門を分離独立させた。その上で、送配電会社には独占を認め
るが、発電会社には独占を認めず、そのかわりに料金規制をしないことにした
のである。その結果、発電コストの安い発電会社が生き残り、高いところは淘
汰されることとなり、また技術進歩も進んだ。これが海外の電力の価格を引き
下げた。

日本では、2000年3月から、電力の小売部分自由化が始まることになった。小
売の自由化とは、発電事業者から最終需要家への直接供給(つまり電力の産地
直売)の自由化のことである。この制度の下では、直接供給で使用する送電線
や配電線の使用料である送配電料金を直接供給の売り手が送電料金として電力
会社に支払う。しかし、電力料金は、直接供給の売り手と買い手の間で自由に
決定することになる。ただし今回の自由化は、特別高圧の需要家(使用電力20
00kw 以上、2 万V以上受電)のみを対象として開始される。これが、今回の
自由化が部分自由化であると言うことの意味である。

電力自由化と使用済み燃料
東京大学 空間情報科学研究センター 八田達夫
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/bunka2/siryo7/siryo9.htm

米国の要望
------------
対日アクセス実態調査報告書― 電気通信機器 ―平成10 年6 月
http://www.jetro.go.jp/jfile/report/05000670/05000670_001_BUP_0.pdf

規制撤廃および競争政策に関する日米間の強化された
イニシアティブに基づく日本政府への米国政府年次要望書
http://japan2.usembassy.gov/j/p/tpj-j055.html#e2

審議会等
----------------

規制制度改革に関する分科会中間とりまとめ(案)平成2 3 年1 月2 6 日
規制制度改革に関する分科会
http://www.hoiku-zenhoren.org/database/include/download.php?stage=user&type=FILE_ADMIN&formno=0&uid=370&tm=20110302100943

規制影響分析総括表【電気事業に関する政策制度変更】(調整中)
http://www.caa.go.jp/seikatsu/koukyou/data/17data/de170801-shiryou3-1.pdf

公共料金分野における規制影響分析検討委員会
電力ワーキンググループ報告書(案)平成17年9月6日
http://www.caa.go.jp/seikatsu/koukyou/data/17data/de170906-shiryou.pdf
消費者余剰変化分 年間 約4,000 億円
なお、過去15年間(1989年~2003年)の電気料金の低下(約2.64/k
Wh)のうち、その約40%(0.96/kWh)が自由化(政策制度の変更)の効果であ
ると推計されたことから、2003 年度時点での全消費者余剰変化分約1兆円の
うち約40%である約4,000 億円を政策制度変更による消費者余剰変化分と推
計した。(注:本分析では、1995年の政策制度変更と1999年の政策制度変更の
効果を分けて分析しているが、分析結果としては2003年度時点での2つの政策
制度変更の効果の合計を計上している。)
設備容量の変化が電力の安定供給に与える影響(費用)は、制度変更前後で
の停電確率の変化が非常に小さいことから、無視できるほどに小さいと推計
した。

(2)の「郵便切手」方式の送電料金(従量制)を採用するケースでは、(1)
の旧来の「パンケーキ」方式の振替供給料金(従量制)を維持するベースライ
ンに比べて、地域間送電が84.3%増大し、消費者余剰は30.8百万円増加、生産
者余剰は28.6 百万円減少する。最終的に社会厚生で計った便益は約2.2 百万
円の増大となる。さらに、(3)の従量制ではない一括固定方式の送電料金を
採用するケースでは、(1)のベースラインに比べて、地域間送電が130.1%増
大し、(回収しきれない送電線の固定費用の控除前で)消費者余剰は161.3 百
万円増加、生産者余剰は103.3 百万円増加する。最終的には回収しきれない送
電線の固定費用が差し引かれるので、便益は約7.7 百万円の増大となる。

○小売自由化の電気事業費用に与える影響次に、こうした効果のうち電気事業
費用低減を通じたものを抽出するため、自由化の電気事業費用に与える影響に
ついて、トランスログ費用関数を用いて推計した。説明変数は、生産要素価格
(労働、燃料、資本)、生産物(発電量、電力取引量)、自由化ダミーとした。
これにより、2003 年の自由化州の電力事業費用は、自由化がなかった場合に
比べ、7.7%低いという結果を得た。

○ 小売自由化による電気事業費用の低下が余剰額に与えた影響電気事業費用
と電力価格との高い相関関係より、大まかな推計を行ったところ、小売自由化
による電気事業費用削減の電力料金定価に与えた影響は、2003 年時点で7.5%
となった。これより、自由化州における小売自由化による電気事業費用削減の
影響は、消費者余剰増分額で76~96 億ドル、生産者余剰増分額では、費用削
減効果が全て料金低下に反映されたと仮定することによりゼロ、よって総余剰
増分額は消費者余剰増額分と同額の76~96 億ドルという結果が得られた。

今後の望ましい電気事業制度の在り方について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000035647
平成20年1月総合資源エネルギー調査会電気事業分科会
(3)日本型モデルの発展の追求
現時点において、既自由化範囲での需要家選択肢が十分確保されているとは評
価できず、小売自由化範囲を拡大するに当たっての前提条件が未だ整っていな
い。なお、沖縄電力の供給区域においては、特別高圧まで自由化[注6]されて
いるが、同様に前提条件が未だ整っていない。このような中で小売自由化範囲
を拡大することは、家庭部門の需要家にメリットがもたらされない可能性があ
るにとどまらず、現時点においては必然的に生じる移行コストが社会全体の便
益を上回るおそれが強いことから望ましくない。以上の点を踏まえれば、現時
点において小売自由化範囲の拡大を行うことは適切ではなく、まずは既自由化
範囲において、競争環境整備に資する制度改革を実施することが適当である。
当該制度改革を実施後、定期的にその効果を検証し、一定期間が経過した際に
は、既自由化範囲における需要家選択肢の確保状況等について再度検証を行い、
その結果を踏まえて小売自由化範囲の拡大の是非について改めて検討を行うべ
きである。

「一定期間」については、既自由化範囲における需要家選択肢の拡大が期待し
得る期間を設定することが必要である。制度改革の効果を見極めることの必要
性や卸電力市場に今後生じる変化、地球環境問題をめぐる動向等を考慮すれば、
本答申(以下、「基本答申」という。)確定から5年を目途とすることが適当
である。また、再検討に当たっては、安定供給の確保等の公益的課題への影響
などを含め、エネルギー基本計画に示された枠組みに基づき検討を行うととも
に、小売自由化範囲の拡大を行う場合は、諸外国において講じられた措置及び
その最新の動向を参照した上で、電気事業者の企業行動に与える影響に対して
適切な措置が事前になされることが必要である。なお、現行自由化範囲が維持
される間は、従来同様、既自由化範囲における料金引下げ効果が規制料金にも
均てんされることを引き続き担保することが不可欠である。

6)卸電力取引所のガバナンス

卸電力取引所は、前回の電気事業制度改革を受けて、私設任意、参加者平等の
組織形態、オープンな参加資格、透明公正な手続、公正なルールに基づく中立
性が担保された法人として設立された。卸電力取引所に対する期待、求められ
る役割や取引開始後二年半程度の経験を踏まえ、今後、市場参加者のニーズに
一層迅速に対応し、中立
公正な事業運営を図っていく観点から、卸電力取引所の内部組織の在り方等
において見直すべき点がないかどうか、さらに卸電力取引所において検討を
行うことが必要である。
総合資源エネルギー調査会電気事業分科会における審議経緯
http://www.tepco.co.jp/company/corp-com/annai/shiryou/report/bknumber/0403/pdf/ts040305-j.pdf

第4次電気事業制度改革について2008年3月
http://eneken.ieej.or.jp/data/pdf/1635.pdf
これまでの歴史

資料8 制度改革の動向
http://www.caa.go.jp/seikatsu/2002/0625butsuan/shiryo08.pdf
(参入規制に係る経緯)
卸電気事業に係る許可を原則撤廃、一般電気事業者の電源調達に入札制を導入
(平成7年12 月)
特定電気事業制度導入(平成7年12 月)
特定規模電気事業制度(大口需要家向け供給の自由化)導入(平成12 年3月)
(料金規制に係る経緯)
選択約款料金の届出制(平成7年12 月)
ヤードスティック制の導入(平成8年1月)
燃料費調整制度導入(平成8年1月)
大口向け小売料金自由化(平成12 年3月)
供給約款料金引下時の届出制(平成12 年3月)
(直近の料金改定)
東京電力改定(平成14 年4月) 平均改定率▲7.02%

一般電気事業者:一般電気事業を営む事業者(10 電力会社)

特定電気事業者:特定電気事業(特定供給地点における需要に応じ電気を供
給する事業)を営む事業者

特定規模電気事業者:特定の使用規模(特別高圧(通常2万V以上)で受電
し、使用規模が原則2千kW 以上)の需要家に電力会社の送電線を利用して
供給する事業者

卸電気事業者:200 万kW を超える発電設備により一般電気事業者に供給す
る事業者

卸供給事業者:10 年以上の期間において千kW 超又は5年以上の期間に10
万kW 超の電気を一般電気事業者に供給する事業者

-------------------------------------------------------
東京電力等の主張
---------------------------------
電気事業の今後の展望
http://web.sfc.keio.ac.jp/~tama/kiseikanwa/6.html
質問:現在、新エネルギーとして太陽光発電、風力発電、それに地熱発電があ
るということですが、それらが原子力発電に変わって次世代エネルギーの主役
になる可能性はないのでしょうか。

答:技術開発の努力は常に続けています。ただ、それら新エネルギーの全体に
占める比率は、僅か数パーセント程度にすぎません。例えば、100万kW級の
発電所(原子力等)の年間発生電力量を太陽光発電で賄うには、山手線内の約
2倍の面積が必要となります。
風力発電では、風が吹かなければゼロで、風が強すぎると今度は危ないから、
停止させなければならない。そういう訳で、これもなかなか大変。
地熱発電では、まだ技術的に大変複雑でコストがかかります。日本では、地熱
発電ができるところは温泉地帯で、開発も簡単にはいきません。
ただ、ダメだダメだと言ってもはじまらないので、技術開発を熱心進めている
ところです。
1.料金制度について

質問:ヤードスティック方式が導入された当初、各電力会社の料金申請は大幅
に減額された。料金決定方式がこのように変更されたことをどう評価されるか。

答:ヤードスティック方式は、従来の総括原価方式の枠組みを維持しつつ、各
電力会社の効率化努力を相対評価することにより、間接的な競争状況を作り出
し、電力会社の自主的な経営努力を導き出そうとするインセンティブ規制の一
つとして実施されたものです。

認可にあたっては一段の引き下げを求められ、夏季ピークの尖鋭化や超過密な
首都圏への供給などコストアップ要因を抱える当社の経営は厳しい状況におか
れますが、この結果を前向きにとらえ、技術開発を含めた負荷平準化の推進、
設備投資の抑制など社員の創意工夫を最大限に発揮し、一段の経営効率化を押
し進めていきたいと考えています。

なお、今回の料金改定では、ヤードスティック方式による査定は、0または減
額査定のみでありましたが、インセンティブ規制は本来、効率化の進んでいる
会社にはプラスの報酬、効率化の遅れている会社にはマイナスの査定という両
面があるべきものです。当社は今後とも、経営の効率化に努め、プラスインセ
ンティブの導入について積極的に要望していきたいと考えています。

質問:我が国は他の先進国に比べ、電力ピーク時の負荷が大変高く、設備投資
を拡大せざるをえない構造となっている。ピークオフピークの料金格差を今
以上拡大させることで、これを抑制することは考えられないか。

答:近年の需要の増加傾向のもとでのピーク需要の増加→設備投資の増大→供
給コストの上昇という構造的な問題を解決するため、ピーク抑制負荷平準化
を図るDSM(デマンドサイドマネジメント)の推進は、従来にもまして
重要な課題です。

当社は、ピークオフピークに料金格差をつけた負荷平準化メニュー(時間帯
別電灯、季節別時間帯別電力、様々な需給調整契約等)への加入拡大はもとよ
り、蓄熱機器システムの開発普及などを通じた一層の負荷平準化を推進す
る一方、エネルギー資源の有効活用のため、省エネルギーに関する情報提供
コンサルトを行うなど、様々な需要方策の拡大強化に積極的に取り組んでい
ます。

なお、料金制度面では、8年1月から、これまで大口産業用需要家が対象とな
っていた季節別時間帯別電力を業務用および小口産業用のお客さまにも適用拡
大した他、蓄熱調整契約の夜間割引率の拡大などを実施しています。

ピークオフピークの料金格差の一層の拡大については、原価主義を基本とし
つつお客さまへの影響等を十分勘案しながら検討する必要がありますが、今後
ともお客さまの多様なニーズに応じた多様な料金メニューの設定、加入拡大に
積極的に取り組んでいきます。

質問:卸発電の買電は回避料金で行われるが、これが設備投資の節減に資する
ところは大きいと思われる。東京電力では、将来の設備投資の見通しは修正さ
れたか。

答:電気事業法の改正により、入札制度を通して、簡便な手続きで、より広範
囲な事業者から電力の購入が可能となりました。入札の目的は、競争原理を導
入して安価な電源を調達することにより電力供給の効率化を図ることであり、
事業者の応札価格の上限は電力会社の回避可能原価となっています。

当社としては、社外電源の活用による供給力の強化を図ることができるととも
に、入札競争を通じて、低コストの電源の調達、自社開発電源のコストダウン
が促されることから、積極的に活用していきたいと考えています。

当社では今年度の入札で、平成11年度から13年度に供給を開始する電源100万k
W程度を募集し、落札者8事業者と110万kW契約締結しましたが、来年度も平成
14年度及び15年度に供給を開始する電源100万KW程度を募集する予定です。 こ
れらにより、至近年の投資額には直接の影響はないものの、長期的には自社電
源を繰り延べること等により投資削減効果を期待できると考えています。

2.競争の導入等について

質問:最近、ドイツで電力の地域独占の廃止が伝えられ、米英でもその方向
に進みつつあると聞くが、わが国で近い将来、発送配電の一貫体制を改め
ることについて賛成か。

答:欧米の趨勢などにも鑑み、わが国においても電気市場への競争導入を柱と
する電気事業法の改正が、昨年行われました。このような競争の導入は電気料
金の低廉化につながる可能性はあるものの、日本のエネルギー電力需給構造
は英米など資源の豊富な国のそれとは異なります。したがって、地球環境問題
や供給責任の所在なども含めたエネルギーセキュリティーと競争導入とのバ
ランスをとった政策が必要です。

また、全てのお客さまがどこに住んでいても、合理的な料金で差別なく公益的
なサービスを受けられる、いわゆるユニバーサルサービスの実現も電力会社
には求められています。

以上を勘案すると、責任ある企業による発送配電一貫体制が日本にとって
望ましいと考えます。

なお、英国型の水平分割体制を日本に適用する場合、以下のようにエネルギー
セキュリティー、供給信頼度などの面で問題が生じる恐れがあります。

(1)エネルギーセキュリティー

短期的に低コストで、リードタイムの短い電源に開発が集中し、資源の枯渇、
環境問題等、長期を見据えた安定供給、経済性、環境保全の確保(ベストミッ
クスの形成)が困難。(英国の場合、天然ガス火力に特化。自国資源で賄える
という特殊性あり)

石油代替電源を持たなくなり、燃料調達面での化石燃料に対するバーゲニング
パワーが低下。経済性だけでは律しきれず、かつ厳しい地元折衝を必要とする
電源の開発が困難。(英国では、原子力新エネルギー助成のための化石燃料
賦課金制度あり)

(2)供給信頼度

新規電源で、6~20年。基幹系統建設にも約10年の建設リードタイムが必要な
中で、長期的視点からの合理的、効率的な設備形成が困難。(別会社の場合、
電源ができても流通ができないとか、あるいはその逆の事態によって経済的ロ
スが生ずることになりかねない)また需要が伸びている中での競争による安定
した電源の確保は困難。(英国の場合は、需要の伸びは低く、設備率も高い)

電源立地が偏在し、系統設備の効率的な形成運用が困難化。(英国の場合、
北部に電源が偏在。地域別送電線使用料金の導入などで経済的な立地政策を推
進しようとしているが、機能せず)

供給義務の所在が曖昧~安定供給の欠如。(英国の場合、配電会社に供給義務
があるが、自社で電源を所有していない。また発電会社に電源開発義務なし)

発電市場でのキャンセルなどから、需給逼迫が起こる可能性大。(英国の場合、
プール入札におけるキャンセルに罰則がなく、95年に需給逼迫がおきた)

(3)環境省エネルギー

o電源開発がコスト最優先で進められているため、取り扱いの容易な化石燃料
の電源が増え、環境負荷も増大。(英国の場合、天然ガスが石炭に代替。普通
は化石燃料が増える)

販売競争により、省エネルギー負荷平準化の努力がおろそかになる。

(4)公平性

大口が優遇され小口にしわ寄せされる可能性。(英国の場合は、需要家規模別
に自由化したため、その傾向大)

(5)規制コスト

部門間取引や競争の監督などにより、規制コストは増大。(英国のOFFERは90
年~93年で、人員1.5倍、予算10.5倍増)

(参考1)欧米の電気事業の規制緩和の現状

<英国>90年の民営化の際に、発送配電を水平分割し、発電市場には30分
単位での入札に基づく競争原理を導入している。また、小売部門についても段
階的に自由化を図っている途上にある。 

<米国>電気事業者の形態は配電事業のみを行う事業者から発送配電一貫
の事業者(約300社)までさまざま。その総数は3,000を超える。発電部門につい
ては、IPPの参入障壁が撤廃されるなど競争原理が導入されているが、電力
小売の自由化に関する権限は、基本的に州に属するとされており、その対応は
州毎に一様ではない。また、自由化に先進的な州においても、会計分離(機能
的分離)によりサービスごとの費用を細分化することを求めるものが主流で、
必ずしも発送配電の分割(別会社化)が求められているわけではない。

<ドイツ>電気事業の自由化法案が閣議決定されたが、昨年12月に上院で否決
された。

(参考2)電気事業への競争導入に伴う問題点(英米)

 電気事業の規制緩和を進めている英米では、競争導入に伴い、以下のような
問題点も生じてきている。

<英国>水平分割の結果、配電会社が供給区域内の需要家への供給義務を負う
ことになったが、発電会社には供給義務はなく、送電会社も含め、長期的な需
給の安定について包括的な責任を負っている会社はない。そのため、電源の地
理的な偏在や発電を予定していた発電所の急な運転停止等による電力価格の高
騰といった問題が生じている。

<米国>競争市場への対応を図ろうとする電力会社が補修費等を削減、広域系
統管理に関する制度(機関)が未整備であることとも相俟って、96年には数度
の広域停電が発生。競争の導入により、短期的な利益確保が優先され、長期的
な視点での設備形成運用が保障されない可能性が指摘されている。

---------------------------------------------------------------
電力市場自由化について平成14年10月23日関西電力株式会社
http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/~ida/2Kyouiku/1Gakubu/2002/2002file/021023kanden.pdf
電力としての基本的考え方 43
1.自由化範囲の拡大
公益的課題を達成する方策について合意が得られるのであれば、自由化範囲を
拡大し、最終的に全面自由化を目指すことについて前向きに対応。

2.発送一貫体制の必要性わが国においては、供給する責任主体が明確となる
「相対取引」に基づく小売託送が重要。安定供給を図る上では、これまでの責
任ある事業者による発送一貫のシステムがその役割を果たしてきたことは事実。

3.送電部門の公平透明性の確保託送収支については、会計分離によって一
層の透明化を図り、運用面では、情報遮断によって、公平性透明性の向上に
取り組んでいく。

4.競争の促進に向けて安定供給維持を前提とした電力取引所の創設について
議論することは必要。

5.原子力の推進と自由化の両立長期的観点に立って、国の役割、民間の役割
を明確にし、エネルギー政策の根幹たる原子力発電全般の推進と両立できるよ
うな仕組みを整備することが必要

電気事業分科会報告「今後の望ましい電気事業制度の骨格について」H15年
http://www.tepco.co.jp/company/corp-com/annai/shiryou/report/bknumber/0403/pdf/ts040307-j.pdf

地方自治体における電気事業の評価検討
第一研究部電力グループ研究員森田 雅紀
電力グループ研究員小笠原 潤一
http://eneken.ieej.or.jp/data/old/pdf/jichi.pdf

--------------------------------------------------------------
その他のご意見
---------------

電 力 自 由 化 政 策
http://hiroko.s11.xrea.com/x/main/think_globally_2.htm
自由化の方法

 電気事業には (1)発電→(2)送電→(3)システムコントロール→(4)配電→
(5)供給という機能があります。(2)~(4)は自然独占ですが、(1)の発電と(5)
の供給には競争が導入できます。発電市場は多くの競争者の存在が可能です。
しかし、供給市場が自由化されない限り電気事業は競争的にはなりえません。

 でも、新規参入者が新たに送電線を作るのでは非効率極まりなしです。です
から既存の送電網を利用した競争的な供給はどのようにすればいいかという問
題になります。方法としては送電線の使用料(託送料)を電力会社に支払う方
法と、電力を完全に無名な商品として扱うプール制があります。イングランド
の自由化は国営企業の民営化だったのでプール制を採りましたが、うまく機能
せずNETAという制度に変えました。

 既存事業者と新規参入者が同じ条件で送電網を使用できることが対等な競争
のための前提です。しかし、送電網は既存電力会社が所有しています。この私
有財産を強制的に収用するわけにはいきません。憲法で保障されている財産権
の侵害になるというのが定説です。

 部分自由化された現在は電力会社は競争部門と非競争部門が併存しています。
これらを分けることを会計のアンバンドリングといいます。託送料の計算方法
が透明で公平であればいいのですが、この計算方法がとてつもなくややこしい。
図のようなABC会計制度と呼ばれる計算方法を採用していますが、配賦基準や
費用の区切りの方法は何通りもの考え方があるからです。既存電力会社が一民
間企業の立場で、かつ、競争の当事者に立っているのですから会計面のアンバ
ンドリングだけでは不十分です。 

http://cgi.members.interq.or.jp/japan/snsi/rika-kei/wd200106.html
(1)電気事業
全面自由化全ての需要家に対する小売供給を自由化すること。
部分自由化一部の需要家に対してのみ小売供給を自由化すること。

プール市場の創設
イギリス等で導入されている制度で系統を管理する会社が、翌日の30分毎の
需要想定を行い、その時間毎に、毎日発電事業者による入札を実施するもの。

日本の電力市場に関するサーベイ
http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/583/583-03.pdf
2 電力自由化に関する議論
前節で日本の電力産業の歴史,制度の変化を論じてきた。ここでは1995年以降
の電気事業法の改正に伴って変化した電力市場の各項目についての議論を整理
していく。電力自由化に関しては大きく2つの議論がなされている。1つ目は
従来の地域独占市場に新規参入が可能になったことからの制度的な電力自由化
に関する議論,2つ目は発電から送配電,小売りといった垂直統合の分離と卸
電力市場である(10)。以下では,電力自由化自体に関する議論と垂直統合分
離に関する議論などを整理していく。

(1)電力自由化に関する議論

電力自由化に関する議論では,制度そのものに関するもの,サービスに関する
ものが挙げられる。電力自由化が行われることによる社会的厚生の変化,新規
参入者に対する参入障壁,一般電気事業者の公平性,規制の継続,エネルギー
セキュリティーへの影響,ユニバーサルサービスの確保など,様々な視点か
ら研究がなされている。

電力自由化は,競争原理の導入によって社会的厚生の増加が見込まれる。独占
市場から競争市場へと移行することにより,資源配分の改善はなされる。これ
は独占価格と競争価格との乖離による死荷重が存在するためである。電力自由
化がなされる以前の地域独占市場では,規制の下で独占価格ではなく総括原価
方式に基づく価格設定がなされていた。しかしこの場合でも平均費用と限界費
用とで乖離が見られる。これらは規模の経済によるためである。規模の経済が
働いている状態での電力自由化の導入は良策とは言えない(11)。日本におけ
る電力自由化の導入は必ずしも電力市場に規模の経済が働いているとは言えな
い状態になっており,八田田中(2004),岸井鳥居(2005),南部(2003)
などでは,いくつかの条件変化によって規模の経済の条件は満たされないと指
摘している。これは効率性の改善,技術進歩,需要規模の大きさなどに起因し
ている。しかし日本の電力事業の規模の経済性に関して,後藤末吉(1998),
桑原依田(2000)などで計測が行われている。これらによると一部で規模の
経済性は認められないものの,依然として規模の経済性は存在しているとして
いる。新規参入が本格化した1999年の電気事業法改正以降,PPSの参入を含め
た規模の経済に関する分析も検討の余地があると言える。

電力自由化は社会的厚生の増加が見込まれる。これについて大平(2005)では
電力市場が部分独占市場と仮定した上で分析を行っている(12)。PPSの新規
参入は一般電気事業者の電力供給を減らすことになり,そこから導出される残
余需要と一般電気事業者の限界費用(=平均費用)とで価格が決まり,PPSは
自らの限界費用と価格との差で生産者余剰が増加するとしている。また新規参
入に対する問題点として,荒(1998)では新規参入のクリームスキミングに
対して問題を指摘しており,需要密度の低い地域への電力供給を課題としてい
る。丸山(1999)では,この点についてアメリカの各州の動向をもとに分析し
ている。日本では電気事業法が改正されながらも一般電気事業者にはそういう
地域に対して電力供給義務が課されている。これは一般電気事業者とPPSとの
間で公平性の点で問題となる。PPSは需要密度の低い地域への供給義務がない
分,費用を抑えることが可能である。丸山(1999)では一般電気事業者の供給
義務をデフォルトサービスに相当するものとしており,一定の規制をかける
必要があると論じている。このように電力自由化後も一般電気事業者にはPPS
にない規制が残ることになる。大平(2006)では,PPSは一般電気事業者の設定
する電力価格の下で利潤最大化行動をするとし,この電力価格は規制のかけら
れた一般電気事業者が設定するため,それがPPSの新規参入機会にもなりうる
としている(13)。価格決定に関する公平性などの議論については今後の課題
である(14)。

さらに電力自由化がなされることによって,投資インセンティブにも違いが生
じる。競争原理の導入は,リスクの大きな長期的な投資が避けられ,短期的な
投資がなされると考えられる。例えば電力産業においては小型分散型発電が好
まれ,大型集中型発電は避けられる。また収益性の高い投資インセンティブが
働き,逆に環境対策への投資や社会的責任投資といった相対的に収益性の低い
投資へのインセンティブが軽視される恐れがある。そこでここでは電力自由化
による原子力発電の議論について言及する(15)。日本では,原子力発電は地
球温暖化に寄与する二酸化炭素排出の削減に必須であり,また資源の多様性,
エネルギーセキュリティーの側面からも研究開発がなされている。その反
面,原子力発電は投資コストが高く,また安全性,放射性廃棄物の扱いなどの
問題もある。原子力発電は主に一般電気事業者の判断のもとで運転されている
が,国策とも言われ国の介入が大きく,電源三法によって管理運営がなされ
ている(16)。南部(2003)では電力自由化における原子力発電への影響とし
て,新規の原子力発電開発には高い建設コスト,長期投資運転,収入と支出
の時間的ズレなどを挙げ,既存の原子力発電には高い固定費用の回収,メンテ
ナンスコスト,放射性廃棄物の管理などがあると論じている。電力自由化に伴
う価格低下で費用の低下が求められる。原子力発電に関してもこれら費用に関
する議論が中心となっている。そのような状況の中で西村(2000)では追加料
金,政策金融,環境税導入の3つのオプションを検討し,矢島(1998)では発
電の促進,投資の促進,原子燃料サイクルの促進,原子力発電のインフラ整備
を挙げている。兼平(2002)では電源三法で定めた電源開発促進税の改編,消
費者への直接負担などを挙げている。いずれにしても政府介入の必要性を説い
ている。政府介入は市場の失敗において認められるが,この点については南部
(2003)が指摘している。そこでは原子力発電は地球温暖化の解決手段であり,
炭素税や排出権取引,原子力発電への補助金政策などを挙げ,エネルギーセ
キュリティー確保の点でも原子力発電の促進は,石油需要の抑制が図られ石油
価格の安定化に効果があるとしている。このように地球温暖化の解決のために,
火力発電の代替として原子力発電を利用する必要がある。実際は原子力発電と
火力発電はベース供給とミドル供給とで役割が異なっており,原子力発電が火
力発電の代替エネルギーとなるということは負荷平準化についての議論も必要
である(17)。さらに原子力発電における市場の失敗は主に費用逓減産業,外
部性の存在が挙げられる。原子力発電は建設コストが高いため,費用逓減産業
の特徴を有している。また外部性については,放射性廃棄物の管理処理費用
が適正に電力価格に反映されていなければ存在することになる。放射性廃棄物
の管理処理は超長期に渡るため,正確な電力価格の算出には割引率や管理期
間,管理方法などを知る必要があり,また日本では処理プロセスが定まってい
ないことから,必ずしも電力価格にそれらの外部費用が反映されているとは言
えない。

(2)送電ネットワーク卸電力市場に関する議論

ここでは送電ネットワークと卸電力市場に関する議論を論じていく。送電ネッ
トワークについては2003年の電気事業法改正によって,一般電気事業者の保有
維持と公平性,透明性の確保が盛り込まれた。この制度変更によって,以下の
2点について大きく議論がなされるようになった。a垂直統合の分離,b系統
運用である。まずこれらについて論じていく。次に,卸電力市場については20
03年の電気事業法改正で卸電力取引所の開設が盛り込まれ,その役割,利用の
仕方,入札に関する議論がなされている。ここでは卸電力取引所の役割を説明
する。

電気事業法改正に伴って発電部門と小売り部門への参入が可能となっている。
ただし送電ネットワークに関して,従来から敷設されている送電ネットワーク
は敷設者である一般電気事業者の保有とし独占となっており,参入することは
できない。この所有に関して戦後の9電力体制が民間企業によるものであり,
発電から送配電,小売りと垂直統合されていたためである。諸外国で多く見ら
れる送電部門の国営化維持とは異なり,日本ではもともと送電ネットワークが
民間企業の所有物であり,これを国営化にするわけにはいかない。そのため,
電力自由化に際して公平性,透明性の確保が求められている。これはPPSの参
入に伴って,PPSは一般電気事業者の送電ネットワークを利用する必要がある
ためである。何ら対策を講じなければ,PPSの送電ネットワーク利用によりPPS
の情報を一般電気事業者が容易に入手することができ,その情報から競争上,
有利に電気事業を行うことができてしまう。例えば送電ネットワーク利用にか
かる託送料金の差別的な設定,PPSの供給量と供給先の情報から有利な戦略を
取るなどが起こりうる。そのため,送電部門との情報遮断,内部相互補助禁止,
差別的な取り扱いの禁止などが2003年の電気事業法改正に盛り込まれることと
なった。またこれに際して,有限責任中間法人電力系統利用協議会が2004年に
発足した。主な役割は前述したとおりである(18)。

さらに送電ネットワークに関する議論にはパンケーキ問題,混雑が挙げられる。
パンケーキとは振替料金制度で,電気事業者の供給エリアをまたいで電力を供
給した際にかかる課金である。全国的な系統利用の促進を目的に,2003年の電
気事業法改正で廃止されることとなった。このパンケーキの廃止がなければ電
気事業者は供給エリアごとに送電ネットワーク利用にかかる料金を上乗せされ
て課されることになり,競争促進に対して大きな弊害となっていた(19)。そ
の反面,それぞれの送電ネットワークを利用するため負担の公平性については
パンケーキが廃止されることで失われる。パンケーキが廃止されることで供給
エリアを越えて発電所建設が容易になるという側面も有しており,2003年の電
気事業法改正はより自由化を意図した改正であったと言える。このパンケーキ
廃止にはもうひとつ懸念すべき事項があり,それは送電ネットワークの混雑問
題である。もともと電力自由化の際にも議論になっていたが,送電ネットワー
クは従来の地域独占してきた一般電気事業者が自らの発電送電計画に基づい
て敷設している。そのため,電力自由化によりPPSが新規参入しそれらの送電
ネットワークを利用することで,送電ネットワークの混雑が起こりうることに
なる。電力という財は生産から消費のプロセスが一瞬であるという特徴があり,
基本的に貯めておくということはできない。そのため,需要に合わせて送電ネ
ットワークが敷設される必要があり,PPSの参入に伴って余裕を持った送電容
量を確保しなければならない。送電ネットワークの混雑で過剰送電がなされた
場合,停電になる恐れもあり,電気事業者に対する信頼性,あるいはエネルギー
セキュリティーの面でも問題になりうる(20)。

卸電力市場についても2003年の電気事業法改正によって競争促進を目的に市場
が創設されることとなった。これにより2003年11月に有限責任中間法人日本卸
電力取引所が開設された。この卸電力取引所は任意取引市場となっており,基
本的に自由な経済活動を行い,電気事業者は余剰電力等をこの市場に投入して
いる。これは新規参入者の電源調達の場となりうり,競争促進の意図が強い。
ここでは先渡し市場と一日前スポット市場となっている。諸外国でも卸電力取
引所が開設されており,完全自由化がなされているアメリカ,ドイツ,北欧諸
国では一日前取引の他にリアルタイム取引が用意されており,部分自由化とな
っているフランス,ドイツの一部では一日前取引,あるいは先渡し取引となっ
ている(21)。日本では一般電気事業者が市場シェアのほとんどを占め,十分
な発電設備を有しており,卸電力取引所から電力を得るインセンティブは小さ
い。逆に余剰電力を投入することが期待されている。図1では日本卸電力取引
所においてスポット取引で行われた取引総量を表している。2005年4月2日の
開設当初の取引量は低いものの2007年2月末までの間で,2005年12月25日に10,
284,000kWhを記録し,1日平均3,347,419kWhとなっている(22)。図1からも
うかがい知れるように,取引量の変動が激しいものの,約400万kWh前後で推移
している。電力自由化が進展して完全自由化になることで,この取引量の増加
が見込まれる。

電力自由化における制度設計のあり方1
http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/~ida/2Kyouiku/1Gakubu/2002/2002file/uedahino030108.pdf
要約
まず、振替料金制度におけるパンケーキ問題解決策として、振替料金の構成
を既存設備の資本費(設備投資を回収する費用)と維持、運営費に分け、資本費
はインフラストラクチャーとして全需要家に一律負担してもらうことで投資の
回収を担保し維持、運営費は利用に応じて託送利用者が応分負担するという方
式を提案する。この制度のメリットは、応分負担の原則を維持しつつも競争制
限になるような高額な振替料金を回避している点である。
さらに、Multiple Price 市場下における混雑料金制度の導入と、送電線ネ
ットワークを基準にした需要地近接評価の細分化により既存設備の効率的利用
を促す仕組みを提言する。これに関してはMETI 案や系統利用ワーキンググルー
プ(系統利用WG)案の基本的スタンスはほぼ同じであるがインセンティブ制御手
法をより一層精緻化しているところが異なる。
また、電力卸取引市場での価格決定方式に関してはより良く整備されたMult
iple Price方式がSingle Price 方式のメリットを兼ね備えつつ小口の新規事
業者が取引市場に参加しやすくなることについて述べる。

電力自由化と原子力発電
http://www4.ocn.ne.jp/~wakasant/electric/free1.htm
2000.9.10「電力だって自由化!だいじょうぶ?原子力発電」
講演会資料(若狭連帯行動ネットワーク)

資源エネルギー庁電気事業審議会(1996.2.25)での「完全自由化にした場
合の影響」に関する議論でも、「電力会社の財務体質が脆弱な中で、自由化
により格付けが低下する可能性がある。その結果、資金調達コストが上昇し、
電力会社の需要家に対する供給コストが上昇する懸念がある。」「自由化に
よる競争の結果、需要見通しが不透明化し、電力会社のコスト回収が不確実
になった場合、巨額な投資を必要とし、リードタイムが長い原子力の開発リ
スクが高まり開発が困難となり、また、長期間の買い取りが条件となるLNG
の新規開発プロジェクトが停滞する懸念がある。」と指摘されている。

(ii) 原発は基底負荷電源であり、負荷調整は技術的経済的に困難である。
原発の発電原価は運転年数だけでなく稼働率にも大きく影響される。第70回
総合エネルギー調査会原子力部会資料にある九電力+日本原電の1998年度営
業費ベース発電原価(=電源別営業費用/電源別発電電力量)でみると、原発
は7.11円/kWh(設備利用率84.2%)で火力9.39円/kWh(同39.5%)より安く見え
る。これは、原発を基底負荷電源に用いて高稼働率とし、火力発電を負荷調
整用電源として低稼働率にしているためである。これを逆にすれば、原発は
約2倍の14~15円/kWhに跳ね上がり、火力は約7割の6~7円/kWhに下がる。
つまり、原発を止めてその分を火力で補う方が発電原価は今より安くなる。
原発を負荷調整用に使うと負荷調整用電源の発電原価が今より5割増になる
ため、原子力を基底負荷電源で使うしかない。

安価な蓄電設備がなく(揚水発電は高価な蓄電設備に相当する)、欧州のよう
に送電網で電力を輸出できない下で、負荷率の低い日本(年負荷率約55%)で
は、フランス(年負荷率約65%)のようには原発容量を高められない。夜間余
剰電力によるエコアイス電気温水器の拡大など需要側での負荷平準化対策
は一種の浪費である。

発電自由化による自家発電自己託送の拡大や小売自由化は、原発を所有す
る九電力の基底負荷電力量を低下させ、基底負荷電源である原発のシェア拡
大を困難にする。
(iii) 原発の使用済核燃料など核廃棄物の処理処分費や廃炉費が競争力をさ
らに失わせる。

使用済核燃料を再処理してプルサーマルを行えば、核燃料費を高くし、原発
の競争力をますます失わせる。プルサーマル用MOX燃料費(貯蔵、再処理、
加工、輸送)はウラン燃料費の5~7倍と高い。

廃炉費、再処理費、低レベル放射性廃棄物、原子力損害賠償保険金は原発発
電原価に算入済みだが、IPPの発電コストには加算されていない。また、高
レベル放射性廃棄物処分費も原発発電原価に今後加算されるが、今のところ
IPPの発電コストには加算されない。また、使用済核燃料の中間貯蔵管理
処分費も今後問題になる(再処理引当金から転用されるか、新たに加算され
るか不明)が、IPPには加算されないと思われる。

電源開発促進税(電源三法交付金、FBR開発など原子力予算)はIPPにも加算さ
れ、原発関連に優先配分されるためるため、原発に対しては有利に働く。原
発立地のための補償金はこれまで総括原価方式で電気料金に上積みされてき
たが、原発の発電原価として加算されることになろう。寄付金も原発に係る
コストになろう。
(iv) 電力自由化は原発新増設を困難にする一方、既存原発のコスト削減に
拍車をかける。

新規原発開発を促進している先進国は日本だけであり、電力自由化は原発新
増設を一層困難にする。

原発推進政策を維持しながら電力自由化を進めるためには、a小売自由化を
約3割の大口需要家にとどめて完全自由化しない、b原発優遇措置(原発安
全規制の大幅緩和、他電源への原発回避不能コストの上乗せ、原発補助金制
度の導入、電力市場における原発優先枠の設定など)により小売を完全自由
化する、のいずれかによる以外にない。日本ではaの小売部分自由化の下で
bの原発優遇措置をとろうとしている。

コンバインドサイクル天然ガスタービンCCGTと発電原価で競争するため、
新規原発では耐震設計を含めた設計の合理化と建設費の削減が図られ、既存
原発では定期点検補修費や核燃料費の削減および可能な限りの長期連続運
転と定期点検補修期間の短縮が徹底して追求される。
2.電力自由化の国際的な進展状況
(1) 発電の自由化

1995年4月の電気事業法改正により、一般電気事業者(沖縄電力を含む10電
力)と卸電気事業者(日本原子力発電、電源開発、上越共同火力発電株式会社)
に加えて、独立系新規発電事業者(IPP)が届け出のみで、卸供給事業者とし
て10電力会社に入札するか、2000年3月以降は特定規模電気事業者(10電力
会社等も届出)として自由化対象需要家に買電できるようになった。また、
自家発電を行う会社が電力会社の送電線を使って遠隔地の同社工場へ送電す
る自己託送が許可制から当事者間の私契約になり、1997年4月から託送サー
ビスが始まった。
(2) 送電系統は10電力による地域独占所有であり、会計分離もなく、公正な
独立系統運用者もいない。

特定規模電気事業者は10電力会社の送電網を使うが、ネットワーク利用は当
事者間の交渉優先事後規制で、託送料金に送電設備の改修コストを明記し、
負荷率当利用形態も勘案して利用者間で公平に負担、事業者は電力会社の給
電指令に従う。

今回の自由化では、送電料金を基本料金と従量料金にわけ、従量料金を時間
帯別(季節別昼夜別)と地点別(需要超過地で割引き)の従量料金に変更した。
これはピーク送電量を減らし、需要超過地への発電所設置を促す方向に作用
するが、プール市場ほどの効果はない。

ダイヤモンドパワーの東電への託送料金は電促税等を含めて4円弱/kWhで売
り上げの約2割を占める。

(3) 小売の自由化
1999年5月の電気事業法(事業規制)改正により小売部分自由化、2000.3.21
から施行。

2万V特別高圧系統以上、2000kW以上の需要家への小売自由化、直接交渉で
決定。概ね3年を目途に部分自由化の実績、海外の自由化の状況、系統安定
に関する技術の状況、公益的課題への悪影響の有無など自由化の実施状況を
検証。自由化対象となる特高産業業務用電力は全電力量の28%、電力収入
の20%。産業用の58%を占めるが、中小規模工場やコンビニは除外。業務用
の15%を占めるが、中小ビルやスーパーは除外。北欧のような直接契約とセ
ットになったプール市場もない。
4.日本における電力自由化の原発への影響

電力の自由化とは
http://hsato.eco.konan-u.ac.jp/zemi/2003summer/katudou/denryoku.ppt
問題

標題:電力規制緩和下における原子力の展望
~エネルギー政策と電力経営のはざまで、いま原子力をどう位置づけ
るのか
http://trust.watsystems.net/genka.html

競争環境への適合と戦略の変遷(1)
――自由化後のドイツ電力市場を事例として――
http://www.gakushuin.ac.jp/univ/eco/gakkai/pdf_files/keizai_ronsyuu/contents/4302/4302abe+tatsumi.pdf

第2回:電気事業ビジネスの特徴と流れ
http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/basic/electricity/2010-03-31-02.html

電気事業の規制緩和における電力システムの課題1996年
http://www.crc.kitami-it.ac.jp/publication%20of%20Center/PDF/hayasi.pdf

http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/489.html
事例研究(ミクロ経済政策・問題分析
- 規制産業と料金・価格制度 2011年 4月21日戒能一成
http://www.iss.u-tokyo.ac.jp/~matsumur/UT3103A.ppt

電気事業・都市ガス事業における政策制度変更の定量的影響分析
2005年11月戒能一成
http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/05j034.pdf
電気事業・都市ガス事業とも、「部分自由化」などの政策制度変更の影響により、
設備投資の合理化や操業費用の低減など経営努力の強化が認められ、過去15年
間の平均費用の15~20%の低減のうち4~5%分が政策制度変更による影響であ
ると推計された。電気事業においては、政策制度変更の前後を通じてこれらの
平均費用の低減が産業用料金・価格と家庭用料金に適切に反映され、総余剰変
化は増加を続けるという結果となり、政策制度変更が経済厚生を有効に拡大し
たものと推定された。
電気事業に関する政策制度変更の定量的影響分析
2005年11月戒能一成
http://www.rieti.go.jp/users/kainou-kazunari/X0405drk11E.pdf
http://www.chuomitsui.co.jp/report/pdf/repo1012_2.pdf

有価証券報告書総覧に基づく発電単価の推計
http://www1.tcue.ac.jp/home1/k-gakkai/ronsyuu/ronsyuukeisai/43_1/43-1ohshimak.pdf.pdf
原子力発電は通産省の発表のように常に安い電源というわけではなく、む
しろ必ずしも良好なパフォーマンスを示す電源ではないことが明らかになった。

なぜ原発は推進されるのか
http://www.nuketext.org/suishin.html
(理由1)原子力産業や建設会社などが原子力で儲け続けるため不公正な圧力を加えているから
(理由2)費用をすべて電気料金に上乗せできるから
(理由3)過疎で悩む地元に莫大なお金を落とすから
(理由4)原発推進のためにすごいお金をかけてPRしているから
(理由5)原子力技術を持っていればいつでも核兵器をつくることができるから
(理由6)政策決定に市民が参加できないから

原発の発電コスト
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/kid/npower/genecost.htm
原子力発電所の最大の弱点である放射性廃物の処理コストすら電力単価の
算定の際に勘定に入れないまま、原子力発電所の発電単価は安いなどと
主張されてきました。

社会科学者の時評
http://pub.ne.jp/bbgmgt/?daily_id=20110423

田中優さん講演会
http://staff.energy-shift.org/2011/03/653
脱原発 河野太郎氏に聞く
http://www.geocities.jp/ishidanz/11_04_29.htm

再生可能エネルギー発電導入制度の経済分析
http://jsrsai.envr.tsukuba.ac.jp/Annual_Meeting/M44/resume_d/rD06-4_ise.pdf
再生可能エネルギーによる発電を推進し,以上で述べた目標を達成するために
は何らかの公共政策が必要である.これに関して,欧米諸国では,発電事業者
や電力の小売事業者に一定量の再生可能エネルギー電力の調達を義務付ける制
度,ないしは再生可能エネルギーによる電力を化石燃料による電力に比べて高
い価格で買い取ることを小売事業者等に義務付ける制度が実施されている.わ
が国では,前者の制度がとられ,2003年に施行された「電気事業者による新エ
ネルギー等の利用に関する特別措置法」(通称RPS法2)に基づき,小売電気事
業者に対して一定量の再生可能エネルギー電力の調達を義務付けている.以上
のような規制による手段のほか,自発的にクリーンな電力の購入を希望する消
費者のために,再生可能エネルギーを利用して生産した電力を販売する,いわ
ゆる,グリーン電力プログラムが電気事業者によって自主的に運用されている.

太陽光発電の買取制度について
http://www.chugoku.meti.go.jp/energy/sun2/youshi/pdf/kaigi_shiryo/02/02-1_taiyoukoukaitori.pdf

米国におけるグリーンパワーマーケティング導入の現状と今後
―「クリーンな電力」の新たなマーケティングアイデアと
日本導入時の検討課題―
http://eneken.ieej.or.jp/data/old/pdf/enekei/gpm.pdf

電気事業起業家と九電力体制
https://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/kshimura30.pdf

東電は必要なら破綻も-電力会社は銀行ではない
http://d.hatena.ne.jp/ilems/20110420

揚水発電所
http://kamome.lib.ynu.ac.jp/dspace/bitstream/10131/1354/10/11734483-10.pdf

用語
-----------
http://cnic.jp/files/kwd.pdf
電気事業者:電気事業法に基づ
く電気事業を行なう者。表に示す区分がある。日本原子力発電(日本原電):
9電力と電源開発が出資している原子力発電専業の卸電力会社。

9電力(電力9社):北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、
九州の電力各社の総称。国営だった沖縄電力を含まない呼び方。

電源開発(電発):敗戦後の経済復興に向けて設立された卸電力の国策会社。
民営化されることが決まっている。

発送配電:発電所で発電した電気を需要地の近くの変電所まで送ることを
送電、最後の変電所から消費者まで送ることを配電という。

IPP(独立発電事業者):送配電網をもたず、発電のみを行なう事業者。

託送:発電者が電力会社の送電線を借りて電気を送ること。

負荷(ロード):電気設備で実際に使われた電力の大きさ。

ベースロード(基底負荷):電力需要の「底」の部分で、常に使われている電
力。

総括原価方式:電気料金の算定方式。回収すべき原価を積み上げた総原価(配
当の原資となる事業報酬=利潤をふくむ)を、高圧、低圧、電灯の需要種別に
配分したものを総括原価と呼び、これをもとに契約種別ごとの料金を決める。

レートベース:電気事業の事業報酬を算出する際の基礎となる資産など。レー
トベースに報酬率を掛けた額を事業報酬とする。

電灯需要と電力需要:表に示す電気料金の契約種別のうち、従量電灯、その他
電灯に相当する需要を電灯需要と呼び、業務用電力からその他電力までに相当
する需要を電力需要と呼ぶ。

基本料金と最低料金:一般家庭用の電気料金は、使用量に応じた料金(電力量
料金)と、定額料金からなる。定額料金には、北海道、東北、東京、中部、北
陸、九州で実施されている基本料金(契約アンペア数に応じて7段階の料金が
ある)と、関西、中国、四国、沖縄で実施されている最低料金の2種類がある。
後者では、最低料金のために定められた使用量を超えた分が電力量料金の対象
になる。

1段、2段、3段料金:一般家庭用の電力量料金の単価は、使用量の増え方に
よって段階的に高くなる。

グリーン電力料金:自然エネルギーで発電した電力(グリーン電力)の普及の
ための寄付金を通常の料金に上乗せした電気料金。

コジェネレーション(熱電併給):冷暖房給湯用などの熱と、電力を同時に
供給するシステム。発電の廃熱を有効利用するもの。コンバインドサイクル発
電(複合サイクル発電):ガスタービンと蒸気タービンを複合させ、効率を高
めた発電方式。蒸気タービンだけを使っている既設の発電所にガスタービンを
付け加えてコンバインドサイクルとし、効率と出力を増やすこともできて、こ
れをリパワリングと呼ぶ。

電気通信事業法関係審査基準
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/shokan/dentu.html