痛風と高尿酸血症の治療について    戻る

看護婦佐々木 改定 羽鳥   00/08/06    更新

 

  血液中の尿酸が異常に高くなった状態を高尿酸血症といいます。

 痛風は高尿酸血症が原因となり急性関節炎症状(痛風発作)を繰り返し,痛風結節,慢性関節

 炎を起こし,肥満,高血圧,高脂血症,腎臓障害,尿路結石,心筋梗塞などを合併する全身性

 尿酸代謝異常症です。

  痛風は美食家に多く,プリン体を含む食物(美食)の摂り過ぎが痛風の誘因となります。

 今日のわが国の飽食時代において痛風は著しく増加しています。

 

   (1)分 類:産生過剰型高尿酸血症

         排泄低下型高尿酸血症

         混合型高尿酸血症

   (2)血中尿酸正常値:(男 性)4.0- 7.0・/dl

             (女 性)3.5- 6.0・/dl

         異常値:(境界域)7.5- 8.5・/dl

             (要治療)   8.5・/dl以上

   (3)プリン体は核酸を構成している含窒素化合物で,核酸(RNA.DNA)代謝に関連する物質です。

     RNA(リボ核酸)      細胞内でタンパク質を合成するとき重要な働きがある。

     DNA(デオキシリボ核酸)  遺伝を支配する。

   (4)尿酸は核酸代謝の終末産物で,尿中に排泄される。

   (5)痛風と僞痛風の違いについて

     僞痛風はピロリン酸カルシウムの結晶が軟骨に沈着し、高尿酸血症の有無にかかわらず

     痛風発作に似た急性関節炎症状が膝,股,肘,手,足の各関節に起こる。

     血中尿酸値:正常.レントゲン上:点状〜線状の石灰沈着を示す。

     発作時は鎮痛剤の投与.炎症の激しい場合はステロイドを関節内に投与する。

 

[A]症 状

   (1)急性痛風発作(何らかの誘因のあと,突然起こる。)

   @ ■関節痛:足の親指の関節の痛み,赤く腫れて熱をもつ。

          (関節痛は足の親指が最も多い。足首,膝,肘,手首の関節の場合もある)

     ■発 熱:ほとんどの場合は微熱,希に39℃以上の高熱が出る。

   (2)間欠期から慢性期

      (間欠期:高尿酸血症であるが,痛風発作と発作の間の無症状の時期である)

     ■関節の変形:痛風を繰り返すことにより尿酸ナトリウム結晶ができ,沈着により

      徐々に関節の変形がおこる。

     ■痛風結節(尿酸の結晶による節):耳たぶ,皮膚,軟骨などにできやすい。

     ■腎臓障害:蛋白尿と血尿

 

[B]治 療

   (1)治療薬

     ■痛風発作防止剤  :コルヒチン

     ■尿酸降下剤             ※副作用

      尿酸産生阻害剤:アロシト−ル     胃腸障害(胃部不快感,吐き気,嘔吐,下痢)

      尿酸排泄促進剤:ユリノ−ム      じんま疹,発疹,肝機能障害など

     ■酸性尿改善剤   :ウラリットU

     ■鎮痛剤      :インドメタシン

     ■副腎皮質ホルモン剤:プレドニゾロン

 

 

                           はとり内科クリニック(006-1)

   (2)通風発作の治療

     ■関節炎急性発作の初期には鎮痛剤(インドメタシン)を多めに投与し,炎症を抑える。

      3時間毎に通常用量の 1.5 -2倍を投与する。1日3回まで。

      疼痛が軽減したら常用量に戻す。

      鎮痛剤が無効の場合はプレドニゾロン錠(5・)を1日2〜6錠を投与する。

     ■関節炎急性発作の前兆(局所の異和感)のある時は

      痛風発作防止剤(コルヒチン - 0.5・)を1〜2錠を前兆期から遅くとも

      発作発現2〜3時間以内に投与する。関節炎が治ったら中止する。

      関節炎急性発作が治まってから高尿酸血症の治療を開始する。

   (3)高尿酸血症の治療

     ■産生過剰型高尿酸血症:アロシト−ル

     ■排泄低下型高尿酸血症:ユリノ−ム

     ■混合型高尿酸血症  :アロシト−ル、もしくはアロシト−ルとユリノ−ム

[C]日常生活で注意すること

   (1)内服について

     ■指示に従って規則正しく内服して下さい。

     ■副作用が出たときは、すぐに連絡を。

     ■経過を診るために血液検査を行うこともありますので月に1回は必ず受診して下さい。

   (2)食事について

     ■栄養のバランスに心がけ,規則正しく摂りましょう。

       *決められたエネルギ−の中で,蛋白質,脂質,糖質,ビタミン,ミネラルなどの

        栄養素が過不足しないようにバランスよく摂りましょう。

       *脂肪は尿酸の蓄積を促し,尿中への尿酸の排泄を抑えますので,動物食品を

        摂り過ぎないように注意しましょう。

       *外食は1日1食とし,比較的バランスのとれた定食を選ぶようにしましょう。

     ■プリン体含量の多い食品を制限しましょう。

      肉や魚の内臓,肉,いわし,えび,かき,大豆,納豆,肉汁や魚の煮汁など。

     ■水分を十分に摂りましょう。(水分補給の目安量:1日2・くらい)

      尿量が増加すると尿酸の排泄量が増し,血液中の尿酸値を下げますので水分を十分

      に補給しましょう。

     ■野菜や海草を十分に摂りましょう。

      野菜や海草は尿のpHをアルカリに保ち尿酸の排泄を促すために十分に摂りましょう。

       ※野菜の目安量:1日 300g以上(その内,緑黄色野菜を 100g 以上含むこと)

     ■アルコ−ルを制限しましょう。

      アルコ−ルは尿中への尿酸の排泄を抑えるために制限しましょう。

       ※アルコ−ルの目安量(週休2日とし,次のいずれかとする。)

          ビ−ル(中):1本   ウイスキ−(シングル):2杯

          日本酒   :1合   ワイン      :200・.

   (3)その他

     肥満を予防し,過度な運動や疲労をさけ適度な運動を行い,ストレスをコントロ−ル

     しましょう。

 

参考文献

 

Cecilなどには、痛風発作を生じた経験のある患者にて適応。

日本のガイドラインと考えれるプリンピリミジン代謝学会では http://www.suninet.or.jp/~tarumi/isikai/kouennkaidata/gout/tuuhuu.htm     尿酸値の基準です。

高尿酸血症を見たら、即治療でよいか?

阪大グループが痛風専門 医に対してアンケート調査したものから導き出したもので、確たるevidenceに基 づいたガイドラインではありません。 当時のアンケートにも私は9mg/dl以上と記入した記憶があり、血清尿酸値8mg/dl 以上は全て薬物治療を導入するとの考えには賛成ではありません。副作用や医療 費の問題など薬の乱用は避けるべきであり、evidenceがあるわけではありません が、私は、合併症(高血圧、高脂血症、耐糖能異常)のある場合は8mg/dlから、 合併症のない無症候性高尿酸血症は9mg/dlから薬物治療を導入すれば良い。 尿酸は人体にとって本当に有害物質であろうかの疑問もありますが、JAMAの論文 によるとやはり独立したリスクファクターとして考えれる。

特に女性では、男性より高尿酸によるリスクは高い。

ここ数年JAMA以外にも尿酸が血管障害の独立したリスクファクターであるとする 報告を多く目にします。しかし基礎的研究によって明らかにされているものは尿 酸塩結晶による血管障害であり、可溶性尿酸による血管障害性は証明されていま せん。これで、尿酸による血管障害を酸化ストレス(活性酸素など)で説明している総説があり ますが、尿酸自身は活性酸素のスカベンジャーであり、むしろ活性酸素による生 体攻撃を防御している可能性があります。血管障害の起こっている個体では血管 局所での活性酸素の重要な発生系であるキサンチン酸化酵素の活性化が起こって おり、その結果として尿酸が増えているのではないかと考えることもできます。 すなわち尿酸の高い個体は活性酸素を発生しやすい状態にあり、これが原因とな って血管障害を発症させているとは考えられないでしょうか。   女性の尿酸の基準値ですが、7mg/dlを男女を問わず基準値と決定した背景には 6mg/dl程度の尿酸値でも薬物治療が導入されている例が少なからず存在すること を憂慮して、安易な薬物投与を戒める意味で導入された経緯があります。 痛風関節炎は間違いなく尿酸塩結晶によって引き起こされる有害事象ですが、血 管組織に結晶の析出がみられるケースはほとんどなく、血管障害性に関しては尿 酸の溶解性から基準値を導き出すことは難しいと思われます。 尿酸値を薬物で低下させるか否かは別問題として、尿酸を血管障害の起こりやす いマーカーとして認識した場合には、男女別々の尿酸値の基準値があっても良い のではないか。各検査機関で設定している正常値+2SDを尿酸値の 正常上限と考えて異常者を拾い出し、尿酸高値を引き起こしている原因を検討し、 それが生活習慣の異常に起因するようであるならば、生活習慣を是正するよう生 活指導を行っていくことが重要と思われる。

 

 

                           はとり内科クリニック(006-2)