はとりクリニック   羽鳥 裕   212-0058 川崎市幸区鹿島田1133-15  TEL&FAX 044-522-0033 yutaka@hatori.or.jp


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フォラム2

日常診療における生活習慣病の診断ガイドラインと治療

実地医家がどこまでやるべきか 高血圧、高脂血症、糖尿病

スライド(パワーポイント)

高血圧 実地医家 どこまでやるか? 羽鳥裕

 スライド2
 近年、多くの高血圧に関するメガトライアルの成績が出ており、EBMに基づく治療が求められている。
1997年 米国高血圧合同委員会第6次勧告案(JNCY)、1997年 世界保健機関/国際高血圧学会治療ガイドライン(WHO/ISH)さらに日本における高血圧基準JSH2000高血圧治療ガイドライン2002改訂が発表された。
 若年性高血圧、治療抵抗性高血圧、高齢発症の高血圧などでは、腎実質性高血圧、腎血管性高血圧、原発性アルドステロン症、Cushing症候群、褐色細胞腫なども考慮する。血圧の変動の著しい例、白衣高血圧が疑われるときには随時血圧だけでなく、24時間血圧、家庭血圧も測定すべきである。

心疾患リスクの喫煙、肥満、糖尿病、高脂血症など是正可能なものは、非薬物療法を試みるが、JNCY、WHO/ISHの勧める6g以下、あるいは厚生省の10g以下の減塩、肥満是正、節酒、運動、禁煙で、JNCY、WHO/ISHが軽・中等症高血圧では3−12ヶ月非薬物療法につとめるとある。 一般外来で十分な降圧に至るものは少ないことを、臨床スポーツ医学会などでもかつて発表した。

 高血圧治療に際しては、血圧値のみならず、他の心血管疾患のリスク、臓器障害、合併症の有無によりここの患者のリスクを層別化し、JNCYでは、高値正常血圧は130−139/85−89であり、ステージ1は、140−159/90−99、ステージ2,3は160以上、100以上であり、さらに標的臓器障害、心血管障害、糖尿病の有無により、危険因子のないA群から危険因子のあるC群までの3群に分け、リスクのない軽症高血圧の投与開始基準は140−90mmHg以上である。そして、ハイリスク群では、より積極的な降圧治療を行うことが示されている。WHO/ISHでも同様にグレード1の基準をあわせている。あるが、リスクを4群に分けている。また降圧薬投与開始の基準は、150−95以上となっており若干ニュアンスが異なる。至適降圧値の設定を目標に行われたHOT(Hypertension Optimal Treatment)研究では、降圧目標値をDBPを90,85,80の3群に分けて長時間型CCBで検討し、138。5−82.6で虚血性心疾患の頻度は最低となりJ型減少はないとされ、糖尿病では、目標値をさらに低くする方がよいという結果を得ている。

 そこで、最初に、外来血圧の目標を訊いた。
糖尿病、腎障害合併では、より低くと、各ガイドラインに準じている。脳血管障害では、合併症のない場合よりは低く、超高齢者の場合は、欧米のそれよりも、日本高血圧学会の高齢者高血圧の基準に近い。超高齢者については、薬物による降圧効果が乏しくなるという報告もあり、薬物投与そのものが考慮される必要もあるが、SCOPE,PROGRESSなどからは積極的な降圧が求められており、CCBのランデルを用いた日本臨床内科医会の高齢者高血圧研究による至適血圧の成果が待たれる。

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 欧米のガイドラインについてどのように治療の参考にしているかを問うたものであるが、積極的に取り入れている 24%をどう解釈するか見解が分かれる。
 PROGRESSを除くと、欧米の研究には脳卒中を一次エンドポイントにおいた研究に乏しい。節約遺伝子の食塩感受性遺伝子の頻度が高く、脳血管障害、特にSMALL VESSEL DISEASEの多い日本人は、脳卒中に一次エンドポイントを置いた研究が必要である。LOWER THE BETTER,LOWEST THE BEST であるのか、日本では数多くの介入試験が不成功に終わっているが、自前のデータも必要である。
 NICS−EH試験は、我が国の数少ない無作為2重盲検試験である。414例でニカルジピンとトリクロルメチアシド 5年間追跡、降圧の程度、心血管にベントに差はなかった。また、短時間型CCBが心血管イベントに悪影響するといわれているが、NICS−EHでは1例もなかった。
 2002の人本循環器学会で、J−MIC(B)が発表され、徐放型ニフェジピンとACEIの比較で1650例、3年間の追跡で一次エンドポイントの心臓死、心血管イベントで差がなかった。さらにサブ解析で心筋梗塞既往群で有意によかったなどCCBが日本人に適した薬剤であることが証明され、欧米の大規模試験が日本人に適応できない場合もある。

 欧米の脳卒中:心血管イベント比が1:1であるのに、日本では4:1であることを考えると日本独自のトライアルの重要さが認識されている。

 長寿科学総合研究班による”老年者高血圧治療ガイドライン1995による治療開始は、160−90、JNCYのステージ2,WHO/ISHのグレード2以上に相当するが、高血圧学会の高齢者高血圧治療もこれらを反映している。一方、WHO/ISHガイドラインでは、高齢者においても降圧目標値を140−90未満に引き下げられた。久山町疫学研究などから、脳卒中の軽症化、ラクナ型梗塞の減少から、アテローム血栓型脳梗塞の増加があり、非致死性脳卒中発症の予防は、寝たきり痴呆老人を防ぐ重要なことであるが、SCOPE研究でも軽症高血圧の治療の意義が確認されたことは大きい。脳血管障害、超高齢者について、神経内科医の先生を含めて、脳血管自動調節能の低下を、どのように理解するか、JNCY、WHO/ISHの基準とも異なるものだけに、現在進行中の、日本臨床内科医会の JATOS 高齢者高血圧研究の結果が待たれる。


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 次に、現在、家庭血圧計が年間3000万台製作されており、誰でも、血圧計を所有しているが、(一説には体温計より多い)上腕だけでなく、手首、指血圧計を頼りにする患者もあって、主治医の意向が必ずしも反映されていない場合もあり、家庭血圧信頼に足るものとできるか疑問と思う先生が多いことがわかる。
 家庭血圧と随時血圧の乖離が大きく、整合性に悩む実地医家が想像される。また、家庭血圧の正常値も十分認識されていないことも一因であろう。


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 一方、家庭血圧を定期的に測定してしている患者さんに対しては、75%の先生が、大きな比重で治療の参考にしていることがわかる。
 JNCYでは、家庭血圧の135−85以上を高血圧としているが、早朝家庭血圧120−75が、随時血圧の140−90に相当するとするというデータもある。

 また、24時間無拘束血圧計で見てみると、
 JNCYでは、覚醒時では135−85,睡眠中では120−75未満を正常としている。

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 次に、降圧薬の第1選択を訊くと、CCBが51%、ARB 28%、ACEI 14%であった。
これは、後に示すが、2001年の降圧剤売り上げ実数の比較、1997年の川崎で行った高齢者高血圧治療の実際と比べても、本年の調査ということで、降圧治療が大きくARBにシフトしていることが感じられる。
 日本の脳卒中を劇的に減らしたのは、当時まだACEIがなかったこともあるが、CCBの功績は大きい。中国機における最近のSyst−China研究でもCCBは脳卒中の一次予防に有効であることを示している。

 また、PROGRESSなどでLower The Better とされるが、Entryの14%が、Hypotensionで 脱落している。Syst−EurのABPMサブ解析で見られるように緩徐に降圧しながら、120−70程度に持っていくのが良いとされるなど、血圧レベルを下げることと質的な介入が必要であるかの議論はこれから重要であろう。
また心不全などで、もう血流減少が認知度を下げることが発表されており、ACEIが心不全を改善することが、脳血流も改善することが期待される。
 PROGRESSもACEI+利尿薬の結果であること踏まえると、欧米に比べて、食塩感受性遺伝子の頻度が高く、脳血管障害特にSMALL VESSEL DISEASEの多い日本人は脳卒中に一次エンドポイントを置いた研究が必要である。

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 2001年の年間売り上げ100億以上の降圧剤を集計すると、CCBが2005億円、ARBが1179億円、ACEIが595億円であり、β-遮断薬、α1-遮断薬がそれに続く。利尿薬は、100億円以上を占める薬物がないので統計には出てこないが、重要な薬物である。ジェネリック薬品、ARBの一日常用量の金額から見てCCB,ACEI,ARBと推定される。

また、スライドには示してないが、
 1997年の川崎市内科医会30周年記念事業で、65歳以上の地域老人検診における症例を集計した、”高齢者高血圧治療の実際1800症例の解析”からみると、投薬数は、1.3種類で、加齢とともに投薬数が増加する傾向、投薬の種類による検討では、CCBが、54.2%、ACEIは、20.6%、β-遮断薬が10%、α1-遮断薬が5.2%、利尿薬が、7.1%(女性単独では9.2%)である。
 冠動脈疾患合併は、16.3%、高脂血症合併は、13.1%、糖尿病合併は、6%、高尿酸血症は、2.7%でという結果を得ている。対象年齢に差はあるが、ここ数年の降圧剤選択に劇的な変遷が感じられる。


 スライド7
 降圧不十分の時、同一薬剤を増量するか、他の薬剤を追加するか、変更するかを訊いたが、別の薬剤を追加するが55%であった。

 スライド8
 降圧不十分の時に追加または増量する薬剤で最も多いのはCCB31%、ARB27%,ACEI20%、利尿剤10%β-遮断薬7%,α1-遮断薬3%であった。

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 CCBで降圧不足の場合、  、ARB42% 、 ACEI29% 同一薬剤を増量8% であった。
質問形式が不十分だったため、同じ薬剤を増量しているか、同じ系統の薬剤に変更しているかははっきり掴めなかった。

 スライド 10
 ARBで降圧不足の場合、CCB 60%  ACEI 利尿剤13% β-遮断薬7% ACEI 7%、ARB増量 9%であった。


 スライド 11
 ACEIで降圧不足の場合、同一薬剤を増加、 、CCB 39%、 利尿剤17% ARB 15% β-遮断薬 9% α1-遮断薬 5%、ARB増量 15% であった。

 スライド 12
 ALLHATの結果が臨床家に衝撃を与えたが、α1-遮断薬が中間検討で外されたこと、CCB,ACEI,日本の常用よりも少量の利尿薬で、この三者に大きな差が出なかったことに対する解釈が多様である。

 黒人が30%ほどしめているため、塩分感受性遺伝子に関連する高血圧に対する反応が強く出たために、利尿薬、CCBに対して反応が良く、東洋人の降圧薬反応に近いものになった可能性もある。

 しかし、CCBは、黒人白人間で降圧反応には差がなかった。
 この結果を踏まえて、糖尿病、高尿酸血症、肥満症など代謝系に悪影響があると否定されてきた利尿薬が見直された結果となった。しかし、その後、  なども発表されたり、ALLHATの試験期間が4.9年と比較的短く必ずしも長期使用に好ましいとはいえないとの反論があり、まだ確定した結論には至っていないが、サブ解析が待たれる。

 スライド13
 自分のクリニックの実数を示す。
 今回のテーマである、実地医家どこまでやるか診断ガイドラインと治療であるが、アンケートを取ると、家庭血圧計を持つものは、約80%を超える。しかし、手首、指の血圧計を除く上腕計測型の家庭血圧計は70%程度となる。それらのなかで、早朝・就寝前の決まったルールで計測しているものが、全体の55%いる。

 また、東北大今井教授のHOMED−BPについては、導入説明したものは30名、同意したものは26名、基準を満たしてエントリーできたものは、22名、途中転勤脱落したもの4名あり、血圧値高値1名、拡張期血圧低値2名で、計15名が、継続中である。
 この試験を通して感じることは、随時血圧と家庭血圧の乖離であり、家庭血圧が130−85を切ってくると、自分で減量しようとする人の多いことである。まだ、家庭血圧の正常値が十分認知されていないことを痛感する。しかし患者さんの降圧治療に対する意欲は高まるため、患者さんを選択すればモチベーションの高い治療となる。

 臓器障害の評価のために、負荷心電図、心エコー、頚動脈・腹部大動脈エコー、大動脈、末梢動脈の評価のために四肢血圧・脈波測定、眼底網膜検査なども必須である。糖尿病、高脂血症、虚血性心疾患、脳血管障害など増悪因子があるものでは、先の基準に基づき積極的な降圧治療、抗動脈硬化治療が必要である。心疾患リスクの喫煙、肥満、糖尿病、高脂血症など是正可能なものは、非薬物療法を試みるが、JNCY、WHO/ISHの勧める6g以下、あるいは厚生省の10g以下の減塩、肥満是正、接種運動、禁煙で、一般外来で十分な降圧に至るものは少ないことを、臨床スポーツ医学会などでもかつて発表したが、JNCY、WHO/ISHが軽・中等症高血圧では3−12ヶ月非薬物療法につとめよ とあるが、これはなかなか難しい。12年間、あまり治療傾向に差は出なかった。。
 高血圧患者の平均年齢は、54.2歳±9.1歳(平均±SD)から59.2歳±9.8歳と高齢化している。男女比は、52:48から47:53と若干構成が変化した。


 スライド15
 2002年の降圧剤の使用をみると、CCB,ACEI,ARB、β-遮断薬となる。

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 1990年の調査では、CCB55%、ACEI29%、β-遮断薬10%、α1-遮断薬3% である。

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 合併症は、加齢とともに増加しており、高脂血症、糖尿病、虚血性心疾患、脳血管障害などの頻度がふえる。
また、地域で見ているので、消化器、肝炎、慢性閉塞性肺疾患などが増加する。しかし、12年前と出現頻度に大きな差はない、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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