病気の一口メモ ピロリ菌の検査と除菌療法
胃・十二指腸潰瘍の積極的治療
胃の中からヘリコバクタ−・ピロリという細菌(以下ピロリ菌)が発見され、これが潰瘍の発症や再発に大きく関与していることがわかってきました。
最近の研究によると、胃潰瘍では90%、十二指腸潰瘍では100%近い人に、ピロリ菌の感染が認められています。ただし、高齢者になるほど、感染の頻度が高くなるため、すべての胃潰瘍がピロリ菌感染によるとは言い切れないようです。
ストレスが胃によくないのは事実ですが、ストレスで胃炎になることはあっても、ピロリ菌に感染していなければ、潰瘍にまで進展することはほとんどないことがわかってきました。
治療法も大きく変わり、これまでも薬物治療によって、潰瘍を治すことはできましたが、くり返し再発するため、潰瘍の治癒後も胃酸分泌抑制薬などの抗潰瘍薬を長期にわたって飲み続けなければなりませんでした。また、薬を飲んでいても再発することもありました。
しかし、ピロリ菌の関与が明らかになり、ピロリ菌を除菌すれば、薬を飲みつづけなくても再発はほとんど起こらないことがわかってきました。しかし、中には、抗生剤に耐性を生じて、再発をおこすひともいます
※ ピロリ菌とは
1982年、オ-ストラリアの研究者によって発見された細菌です。らせん形(ヘリコ)をした細菌
(バクテリア)で胃の中の幽門(胃の出口付近=ピロルス)近辺に好んで生息しています。
胃の中は非常に強い酸(胃酸)が常に分泌されています。
そのため、胃の中にはどんな微生物も生息できないといわれてきました。ところが、
ピロリ菌はさまざまな方法を駆使して、うまく胃酸から身を守っています。
ピロリ菌は、ウレア-ゼという酵素をもっています。この酵素は、ピロリ菌の周辺をアルカリ性の環境にすることができるので,胃酸を中和することによって身を守っています。
感染経路は、おもに乳幼児期に、飲み水や食べ物を介して,口から感染(経口感染)すると考えられています。衛生環境の悪い発展途上国などでは感染率が高いです。
日本でも特に衛生環境の悪かった昭和30年以前に生まれた世代では8割近くの人が感染していると推定されています。
実際に潰瘍を発症する人は感染者全体の2〜3%にすぎません。ピロリ菌は感染するとほぼ
100%の人に軽い胃炎を起こし、除菌しないかぎり感染者の胃に生息し続けます。
しかし、通常ほとんどの感染者では特に自覚症状もないまま健康に生涯ピロリ菌と共に暮らします。ですので、感染している人が必ず潰瘍を発症するわけではありません。
ピロリ菌の検査
ピロリ菌の検査には、内視鏡を使う方法と、内視鏡を使わない方法があります。
内視鏡を使う方法
@ 迅速ウレア−ゼ試験:
ピロリ菌のもつ酵素の働きで作り出されるアンモニアを調べて、ピロリ菌がいるかどうかを判断します。
A 鏡検法:
採取した組織を染色して顕微鏡で観察することによりピロリ菌がいるかどうかを調べます。
B 培養法:
採取した組織を用いて培養し、ピロリ菌が増えるかどうかを調べます。
内視鏡を使わない方法
@ 抗体測定:
血液や尿を採取してピロリ菌に対する抗体の有無を調べることにより、
ピロリ菌に感染しているかどうかを判定します。
A 尿素呼気試験:
検査用の薬(尿素製剤)を飲み、一定時間経過した後に吐き出された
息(呼気)を調べて、ピロリ菌に感染しているかどうかを判定します。
B その他の検査法:
便を調べてピロリ菌感染を判定する方法もあります。
ピロリ菌の除菌療法
胃潰瘍、十二指腸潰瘍の人で、ピロリ菌に感染している人が対象です。
ピロリ菌の除菌療法とは、薬を服用することにより、ピロリ菌を退治する治療です。
2種類の「抗生物質」と「胃酸の分泌を抑える薬」の合計3剤(3剤併用療法)を
同時に1日2回、7日間服用する方法です。
治療が終了した後、4週間以上経過してから、ピロリ菌が除菌できたかどうか、もう一度検査する必要があります。
正しく薬を服用すれば、ピロリ菌の除菌は約90%の確率で成功するといわれています。
[3剤併用療法]
@プロトンポンプ 阻害薬 (タケプロンカプセル)
Aクラリスロマイシン (クラリシッド錠)
Bアモキシシリン (パセトシン錠)
※ピロリ菌の検査と治療が医療保険の適用になりました(平成12年11月より)。
(2000・12)
※ 参考文献 「ピロリ菌と胃・十二指腸潰瘍」
北海道大学医学部第三内科教授 浅香 正博
〒212-0058 川崎市幸区鹿島田1133-15
(医)はとりクリニック 羽鳥 裕
TEL&FAX 044-522-0033
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