{rightdoc_diseasememo}
SCOPE(Study
onCognisionandPrognosisinthe
Elderly)
アンジオテンシンH受容体拮抗薬
(ARB)はレニンーアンジオテンシン系
の完全なブロックを目的とした新しい
タイプの降圧薬であるが、トライアル
によるエビデンスが十分ではなかっ
た。今回発表されたSCOPE(Study
onCognisionandPrognosisinthe
Elderly)は、ARBの脳心血管合併症
予防薬としての有用性をプラセボと対
照にして比較検討した最初のトライア
ルであり、最終成績がUppsala大学の
Hanssen教授によって発表された。
本試験は、ARBカンデサルタンの
高齢者高血圧患者に対する脳心血管合
併症予防効果と認知機能および痴呆の
予防効果を検討する目的で行われた。
ARBの降圧薬としての今後を占うと
ともに、70歳から89歳までの比較的
後期の高齢者を対象としている点や、
関心の高い認知機能や痴呆をエンドポ
イントとして取り上げた点でも注目す
べきトライアルである。
血圧値が160-179/90-99mmHgでか
つMMSE(MiniMentalStateEx-
amination)が24点以上の70歳以上
の高齢者4,964例を、カンデサルタン
最大16mg/日までによる治療群
(CAND群)2,477例とプラセボ群
(CONT群)2,460例にランダマイズ
し、3〜5年間追跡した。平均年齢は
両群とも73.4歳、80歳以上の割合も
21%前後であった。両群とも他剤併
用率が非常に高く、CAND群では
49%、CONT群では66%に他の降圧
薬が併用されており、カンデサルタン
のみは26%、プラセボのみは16%に
すぎなかった。このような他剤併用の
多さが結果の解釈を難しくさせたが、
血圧値はCAND群での収縮期/拡張
期血圧の降圧度が21.7/10.8mmHg、
CONT群18.5/9.2mmHgであり、降
圧度は有意にCAND群で大きかった
が、その差は3.2/1.6mmHgと小さい
ものであった。
結果は、1次エンドポイントである
脳心血管合併症発症に関してはCAND
群238例、CONT群266例と、前者
で11%少ないものの両群間に意外に
も有意差は認められなかった。疾患別
内訳をみると、全心血管死、全心筋梗
塞発症、致死的脳卒中などの発症数で
はいずれも両群間に差は認められず、
唯一非致死的脳卒中のみが68例対93
例で、CAND群で有意に少なかった
(ρ<004)。
しかし、併用薬剤を除いて、カンデ
サルタンとプラセボのみを服用してい
た症例だけを比較した場合、両群の症
例数は大幅に減少したにもかかわら
ず、カンデサルタンの脳心血管合併症
発症はCONT群に比較して有意に少
なかった。
本試験では、カンデサルタンの認知
機能障害の進展予防効果についても検
討している。MMSEが28点以上の群
ではCAND群とCONT群の間に
MMSEスコアの変化度に差は認めら
れなかったが、MMSEが24〜28点
の認知機能障害群ではCAND群のほ
うが有意にMMSEの低下度が少なか
ったという結果であった。しかし、こ
れはあくまで後解析であり、エビデン
スとしての価値は低い。
さに起因か:積極的降圧時代に
比較試験の解釈の困難さを象徴
主要な心血管エンドポイントの抑制
において、CAND群とCONT群の間
に有意差がみられなかったことは予想
と大きく異なる結果であった。その最
大の理由は、両群とも他の降圧薬併用
率がきわめて高く、利尿薬以外の降圧
薬の併用率がCAND群49%、CONT
群66%であり、CONT群において圧
倒的に多いことであろう。逆に、純粋
にカンデサルタン単独は25%、プラ
セボ単独例は16%にすぎないことか
ら、カンデサルタンとプラセボの純粋
比較はIntention-to-treat解析では困
難となっている。
本試験では、対象が70〜89歳の高
齢者であることから当初の降圧目標値
を160/90mmHg以下としていたが、
試験途中の1997〜99年に発表された
JNCIV、WHO/ISHガイドラインの
中で高齢者でも140/90mmHg以下に
積極的に下げるべきであるという指針
が発表されたことにより、より低い降
圧目標値を目指すようになったために
多剤併用のケースが増えたと考えられ
る。
そのために、純粋な単剤同士の薬効
比較は困難となり、むしろ降圧度の比
較によるイベント発症率の違いのみが
明らかになっている可能性が高い。事
実、合併症別のサブ解析において非致
死的脳卒中発症のみがCAND群に有
意に少ないという結果が得られている
が、降圧度がわずかながらもカンデサ
ルタン群で有意に大きかったことの結
果であろう。また、痴呆のハイリスク
群におけるCAND群の認知機能障害
進展予防効果も薬剤特性というより降
圧度の違いによると考えたほうがよい
かもしれない。
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Prognosisinthe
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