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##カンデサルタン(ブロプレス)##

 

 

02/10/21 に更新しました。

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SCOPE研究

●SCOPE概要
○ 年齢70一一89歳(平均76歳、約20%が80歳以上)の高血圧
患者でSBP160〜179mmHg/DBP90〜99mmHg、認
知機能の指標であるMMSE 最大30)24以上の患者4,964例を対象にカンデサルタンによる降圧治療の有効性を検討した二重盲検無作為対照比較試験


O l次エンドポイント:主要心血管イベント(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)の発生率
02次エンドポイント:認知機能、総死亡率、心血管死亡率、致死性・非致死性心筋梗塞発症率、致死性・非致死性脳卒中発症率、糖尿病発痒率、QOLなど


Q 投与群:カンデサルタン群(8mg/日、2,477例)vsプラセボ群(2,460例)。降圧度が不十分な場合は投与量を倍増。それでも不十分な場合は利尿薬ヒドロクロロチアジド(HCTZ)12-5mmHgの追加を推奨。


○ 追跡期間:平均2.5年
注)1999年のWHO/ISHガイドラインで高齢者を含む降圧目標値が140/90mHg未満に引き下げられたことにより、試験の途中から両群でHCTZ以外の複数の降圧薬が投与される結果となった。

非致死的脳卒中は減少した。

(降圧不十分例には利尿剤がいずれの群にも追加されている。)

カンデサルタン群は、SBP3.2mmHg低かった。11%診・腎でのイベントが少なかった。

LIFE研究と同じように、心臓イベントは変わらず、脳血管イベントが減少した。

カンデサルタン単独例は25%に過ぎない。



高齢者高血圧治療におけるSCOPE 2002.10

SCOPEは、80歳以上の超高齢者を含む高齢者高血圧患者
においても、ARB・カンデサルタンをベースとする降圧治療を行う
ことで、心血管イベント、特に非致死性脳卒中を減少させるとい
うことを明らかにしたはじめての大規模試験といえる。これまで、
高血圧患者は脳の自動調節能が高血圧側(右側)にシフトして
いることから、過度の降圧は危険との見方があった。特に高齢
で長期に高血圧状態が続いている対象では、目標降圧値に関
する明確なエビデンスがなく、積極的な治療を危ぶむ向きもあっ
たが、今回SCOPEにおいて新たなエビデンスが生まれたといえ
よう。また、カンデサルタン群では認知機能の低下抑制作用が認
められたことも大変興味深い点である。高齢の高血圧患者では、
無症候性の脳血管障害が高率に認められるため、認知機能が
低下する可能性が高いと考えられるが、このような脳血管障害を
カンデサルタンが抑制した可能性がある。さらに、カンデサルタン
は非常に忍容性が高く、患者のQOLも改善した。高齢者高血
圧治療において、以上の点を明らかにしたSCOPEの意義は大
きいと感じている。


ガイドラインの降圧目標の変更による予期せぬ影響が?


SCOPEでは、ITT解析により心血管イベントがカンデサルタン
群で約n%低下したが、有意差は認められなかった。これは、試
験中の1999年にWHO/ISH高血圧治療ガイドラインの改正があり、
これに則って降圧目標値をWHO/ISHが設定した140/90mmHg
未満まで引き下げるよう両群とも多数の症例でさまざまな降圧治療
薬が追加されたことが原因の一つと推察される。
また今回の対象のように、70歳を超える高齢者で血圧もそれ
ほど高くなく、心血管疾患や認知機能の低下といったリスクをも
たない症例は、心血管イベントの発症においてレニンーアンジオテ
ンシン系の影響は少ないことが予想されるうえに、追跡期間が短
いことも心血管イベントで明確な差が出なかった原因と思われる。
当日の発表でもオリジナルプロトコルに近い「カンデサルタン±利
尿薬(HCTZ)とプラセボ±HCTZ」での解析では、カンデサルタ
ン群で心血管イベントが32.1%(ρ=O.O12)も低下しており(図2)、
当初の計画通りに進めば、ITT解析でも有意差が生じた可能
性は高い。

SCOPEでは、カンデサルタン群で良好な忍容性とQOLの有
意な改善が認められた。治療を継続していく上で、副作用が少
ない、QOLを悪化させないということは極めて重要である。カン
デサルタンを含めてARBは一般的に副作用の発現が非常に少
ないといわれるが、これは症状のない高齢患者に投与する薬剤
として理想的な特徴といえる。

 今後の、高齢者の高血圧治療において、ARBも第一選択薬にあげられるのは当然と思われ、高齢者高血圧治療の問題点と今後の方向
実地臨床においては、高齢者、特に80歳以上の超高齢者に
関して、これまで大規模臨床試験がほとんど行われていないた
めに、降圧治療を行ったほうがよいか否かの指針がないことが
問題であった。

 血圧を下げすぎると逆にイベントが増加するとい
う「Jカーブ現象」が存在するかどうか危倶があり、この点の可
能性を考慮して、わが国の高血圧治療ガイドラインでは、高齢者
の高血圧治療に関して非高齢者とは異なる基準を設けている。
SCOPEでは、カンデサルタン群で最終血圧値にしてSBPを
145mmHgまで低下させたことでイベントが抑制されるという結果
が得られている。

 SCOPEは、今後軽症の高齢者高血圧例でも
積極的な治療も必要であろうと いう結果を示唆した貴重な研究
であったといえる。施設によっては、一般の外来患者の平均年
齢が70歳近いところも多いと思われる。70歳の患者の約半数が
高血圧で、血圧値はSBPで150〜160mmHg程度であるが、
今までは未治療の場合が多かった。このような年齢層でSBPを
140mmHgまで低下させることの有用性が確立されれば、高齢
者の高血圧治療はずいぶん違ってくるだろうと感じている。

 

 


高齢者高血圧患者の予後を改善することの社会的意義

SCOPEでは、80歳以上の超高齢者(約20%)を含む、70
歳以上の高血圧患者を対象とし、カンデサルタンをベースと
した降圧治療の有効性が検討された。これまで、このような
高齢者を対象とした試験はなく、まずはこれら患者群の降圧
治療の意義を示す成績が得られた点が高く評価される。
試験の結果としては、カンデサルタン群において、非致死性
脳卒中の発症頻度がコントロール群と比べて有意に(ρ=O`04)
抑制されたこと(図1)、認知機能の低下への影響は全体では
差がなかったが、痴呆予備群ともいえるMMSE(MiniMental
StateExamination、最大30)24〜28のサブグループにおいて、
認知機能の低下がカンデサルタン群で有意に(ρ=α04)抑制さ
れたことが最も注目される(図2)。
高齢者医療で一番問題となるのがQOLである。脳卒中によ
るさまざまな身体的機能障害から、いわゆる寝たきりとなることや、
認知機能障害が進んで、痴呆状態になることは、介護する家
族の負担などから大きな社会問題となっていbしたがって・
SCOPEで非致死性脳卒中の発症や認知機能の低下抑制が
示されたことは、医学的治療法として重要であるばかりでなく、
経済的、社会的な問題の解決の1つとなるという意味で、非常
に意義深いと考える。


ARBの脳への影響とメカニズム


SCOPEで示された非致死性脳卒中の発症率がコントロー
ル群と比べて有意に抑制されたことについては、どのような機
序によるものだろうか。降圧に関しては、カンデサルタン群とコ
ントロール群との差は、統計的に有意(ρ〈O.OOl)であったが
脳卒中の発症抑制、あるいは認知機能の低下抑制に好影響
を与えたのは間違いないが、それが全てともいえない。
その理由は、自験例であるが脳卒中ラットを用いた実験で、
カンデサルタンとCa拮抗薬の影響を同じ降圧効果レベルで
比較した結果、Ca拮抗薬よりもカンデサルタンのほうが脳卒
中の発症を有意に(ρくO.05)抑制することを示すデータが得
られていること(図3)、さらにカンデサルタンが脳の細動脈の
リモデリングを抑制し、認知機能に関係しているといわれる脳
の海馬領域で神経細胞の保護を示したからである(図4)。
ARBが心臓や腎などの臓器で血管のリモデリングを抑制す
ることや、臓器組織自体を保護することはよく知られているが、
脳においても直接的な同様の作用がある可能性がある。
最終的には臨床で証明する必要があるものの、以上の基
礎データをふまえるとカンデサルタンによる脳卒中あるいは認
知機能の低下抑制は、少なくとも一部は降圧以外の直接的
な作用を介しているのではないかと推察する。加えて、朝方
の血圧上昇(いわゆるモーニングサージ)が脳卒中の発症に
重要であることが臨床データから示唆されており、降圧作用の
持続時間が非常に長く、T/P比が約1というカンデサルタンの
特徴が、SCOPEで示された非致死性脳卒中の発症率低下
に関係している可能性もあると考えられる。
RA系と心血管イベントとの関係
SCOPEでは、ITT解析により心血管イベントがカンデサル
タン群でコントロール群に比べ約n%低下したが、統計的に
有意差は認められなかった。
動物実験レベルにおいては、ARβの心血管リモデリング
抑制など、降圧以外の心血管保護作用が明確に示されてい
る。いくつかの大規模臨床試験においても、ARBの直接的
がRA系抑制により心血管イベントの抑制をもたらす可能性
がある薬剤であることに確信をもっている。
今回、有意な結果に至らなかった原因としては、試験半ば
の1999年にWHO/ISH高血圧治療ガイドラインの変更で、高
齢者を含む患者の降圧目標値が140/90mmHg未満に引き
下げられ、両群の多くの患者に利尿薬以外の薬剤が追加
投与されたことが1つにはあったと推察される。
さらにSCOPEでは超高齢者がかなり含まれており、これら
の対象には心肥大などの他のリスクが認められていない。こ
のような軽症高血圧で超高齢となるまで心血管が健全であっ
た高年齢層では、心血管イベントの発生が意外に少なく、評
価自体が難しかったのではと感じている。
高齢な患者層においては、心イベントよりも脳卒中のほうが
日本に限らず欧米においても頻度が高く、経済的あるいは社
会的問題を含めてより重要ともいえよう。
今後の高齢者高血圧治療への影響
高齢者の高血圧では、特に緩徐に血圧を下げる降圧薬が
適しているとされる。ARBはRA系の遮断による血管拡張とと
もに、利尿、交感神経の活性抑制、さらに長期の使用におい
ては血管のリモデリング抑制、内皮機能の改善が相まって、
緩徐な降圧がもたらされる上に、長期に安定した降圧効果を
発揮する。SCOPEでは、カンデサルタンをベースとした治療に
より、高齢者で一番問題となっている脳卒中や認知機能の低
下が抑制され、副作用が少なく、QOLについても検討した3
試験のうち2試験で有意な改善(EQ-5DThermometer
ρ=O.OlEQ-5DTTOTariff〃=0.04)も認められた。
これらの結果から、今後の高齢者の高血圧治療を考えた
場合、積極的に使用する薬剤としてARBを位置づけること。

 

 

CHRAM試験

(Candesartan in Heart Failure Assessment of reduction in mortality and mordibidity)

 

 空咳などでACEIの使えない心不全患者にARB(ブロプレス)と」プラセボの割付 死亡をエンドポイントとした試験 進行中


 

 

 

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カンデサルタンとSCOPE研究

 

CHARM研究

 

 

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