1
病気の一口メモ 高血圧の治療目標
1. 新しい高血圧の基準 < 正常血圧130/85oHg以下 >
JNCVI(米国合同委員会第6次報告)
降圧目標:140/90oHg以下
WHO/ISH(世界保健機関/国際高血圧学会)
降圧目標:中年高血圧 130/85oHg以下
高齢者高血圧 140/90oHg以下
日本の高齢者高血圧(日本高血圧学会 ―高血圧治療ガイドライン2000年版)
これは、日本独自の案で、欧米では、若年者と同じにするべきといわれています。
降圧目標:60代 140/90oHg以下
70代 150 〜 160/90oHg以下
80代 160 〜 170/90oHg以下
2.合併症のある場合
糖尿病 降圧目標:130/85 oHg以下
@ 130 〜 139/85 〜 89 oHgの場合
血糖の管理と生活習慣の改善を行い、3 〜 6ヶ月で効果が
不十分な場合、降圧薬治療を開始します。
A 140/90oHg以上の場合
血糖の管理と生活習慣の改善と同時に、降圧薬を開始します。
腎臓病 降圧目標:130/85oHg以下
尿蛋白( 1g/日) 以上では、125/75oHg以下を目標。
高血圧は腎臓病の進行を促す重要な危険因子であり、血圧のコントロールが腎不全の予防に極めて重要です。
※ 生活上の注意では塩分の制限と蛋白の制限が是非必要です。
腎不全では激しい運動や過労を避けることが大切です。
狭心症、心筋梗塞 降圧目標:140/85oHg以下
狭心症や心筋梗塞の発症や進行をおさえるためには、高血圧の治療と同時に、その他の危険因子(高脂血症、糖尿病、喫煙)の治療が重要です。
脳血管障害 @ 急性期(発症1〜2週以内)
降圧治療対象 最低血圧: 140oHg以上持続
血 圧: 220/120oHg以上
A 慢性期(発症1カ月以降)
降圧治療 一次目標:150 〜 170/95oHg以下
最終目標:140 〜 150/90oHg以下
※ 日常生活動作の改善には早期からのリハビリテーションが必要です。リハビリテーションを行なう場合には、それに伴なう血圧の変動に注意することが大切です。
高脂血症(高コレステロール血症、高中性脂肪血症)
生活習慣の改善と同時に、薬物療法を開始します。
気管支喘息、慢性閉塞性疾患(慢性気管支炎、肺気腫)
β遮断薬、αβ遮断薬は喘息を悪化させることがあるので使用しません。ACE阻害薬は気管支の過敏性に影響を与えないと言われ、安全に使用できます。
またACE阻害薬で空咳が出る場合はAU遮断薬に切り替えます。
2
3. 降圧剤の種類と特徴および副作用
1) カルシウム拮抗剤
血管の収縮を防ぎ、血管拡張作用により血圧を下げます。カルシウムは心筋や血管の収縮を引き起こし血圧を上昇させる作用があります。
[ ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬 ]
ノルバスク 2.5r アムロジン 5r ヒポカ 5r、10r、15r
アテレック 10r シスカード 10r ニバジール 2r、4r
*バイミカード 5r *バイロテンシン 5r コニール 2r、4r
*アダラートL 20r *アダラートCR 10r、20r
*セパミットR 10r *ペルジピンLA 20r、40r
*アダラート 10r ランデル 10r、20r
カルスロット 10r ムノバール 2.5r、5r
[ ベンゾチアゼピン系拮抗薬 ]
ヘルベッサー 30r ヘルベッサーR 100r
〔*印〕は、グレープフルーツの影響を受け、Ca拮抗薬の作用を増強する薬です。薬の内服中はグレープフルーツやグレープフルーツジュースを摂らないことが望ましいです。
★ 妊婦又は妊娠の可能性のある方は服用できません。
☆ 副作用:顔が紅潮する、頭痛、動悸、腕や足のむくみ、便秘、
歯肉が厚くなる、ベンゾチアゼピン系拮抗薬( ヘルベッサー、
ヘルベッサーR )は除脈(60/分以下の脈拍)や心電図異常(房室ブロック)
2)ACE阻害剤( アンジオテンシン変換酵素阻害剤 )
循環血液中や心臓血管系などの臓器にあるアンジオテンシンを妨げ、アンジ
オテンシンU(血圧を上昇させる作用)を低下させ、血圧を下げます。
セタプリル 25r、50r タナトリル 5r コナン 10r
レニベース 2.5r、5r インヒベース 1r エースコール 2r
コバシル 2r、4r チバセン 2.5r ゼストリン 5r
ロンゲス 5r
★ 妊婦又は妊娠の可能性のある婦人、左右の腎動脈狭窄症、高カリウム血症は、服用できません。
☆ 副作用:咳、呼吸困難
3)AU受容体拮抗薬
アンジオテンシンUの受容体レベルで作用をほぼ完全に抑え血圧を下げます。
プロプレス 4r、8r ニュウロタン 25r、50r バルサルタン 40mg,80mg
★ 妊婦又は妊娠の可能性のある婦人、高カリウム血症、腎動脈狭窄は服用できません。
★ ACE阻害薬と比較して 咳がでない という良い点があります。
3
4)利尿剤 塩分などを尿とともに排出し、血圧を下げます。
サイアザイド系利尿剤 フルイトラン 2r
非サイアザイド系利尿剤 ナトリックス 1r
★ 痛風、糖尿病のある場合は、使用しない。
☆ 副作用:不整脈、痛風、低カリウム血症、高脂血症、高血糖症、脱水
日光過敏性皮膚炎、男性は勃起障害
ループ利尿剤 ラシックス 20r
☆ 副作用:低カリウム血症、高尿酸血症、高脂血症、高血糖症、脱水、
膵炎、発疹
カリウム保持性利尿剤 アルダクトンA 25r
☆ 副作用:男性は勃起障害、女性化乳房、女性は乳房痛、月経異常
腎不全傾向のある場合高カリウム血症、腎結石
5)β遮断剤 交感神経(β受容体)を遮断し、心拍数や血流を減らし血圧を下げます。
テノーミン 25r、50r セロケン、セロケンL、メインテート
※ 喫煙はβ遮断薬の降圧効果を減少させるので、禁煙すること。
★気管支喘息、心電図異常(心房ブロック)は、使用できません。
☆除脈(60/分以下の脈拍)、低血糖のときに、動悸などの症状が隠されてしまうことがあります。
αβ遮断薬 β遮断効果に加えてα遮断効果により、末端の血管拡張作用が加わり
血圧を下げます。 アルマ−ル 5r ローガン
※ 適応:褐色細胞腫、妊娠高血圧 ★ 副作用:立ちくらみ、めまい
6)α遮断薬 交感神経(α受容体)を遮断し、心臓や血管の収縮を防ぎ血圧を下げます。
デタントールR 3r、6r エブランチル 15r バソメット 0.25r
カルデナリン 1r、2r ハイトラシン 0.25r
※ 適応:前立腺肥大症 ☆ 副作用:立ちくらみ、めまい
【ワンポイント アドバイス】 減塩の工夫
高血圧症の中で塩分に敏感な高血圧の方が半分ぐらいおられます。塩分を厳しく制限すると血圧のコントロールがとても楽になります。適度な運動、体重の適正化と並んで塩分制限が基本です。
@ 塩分を多く含む食品を摂り過ぎないように注意しましょう。特に加工食品!
きゅうりのキューちゃん :20g、塩分1.1g たくあん :2切れ(20g)、塩分1.4g
まる干し(真イワシ):2匹(80kcal)、塩分1.0g ちくわ : 2本(80kcal)、塩分1.6g
アジ開き干し:小1匹(100kcal)、塩分2.4g ロースハム:2枚(80kcal)、塩分0.8g
A おひたしなどの料理にかける醤油は、割り醤油を使用すると塩分が半分減量できます。
醤油(1):だし汁(1)を合わせる。 ※ 保存は冷蔵庫!
B 酸味や辛味を利用して、味をカバーする。焼魚や天ぷら、フライなどにレモンや
すだちの絞り汁をかけたり、みそ汁やきんぴらごぼうに生姜や唐辛子を加える。
C 汁ものは天然のだしを使い、実を沢山にし、麺のかけ汁は、全部飲まないようにする。
(一人分)みそ汁 -- 塩分1.0〜2.0g、 吸い物 -- 塩分1.0g、 麺のかけ汁 -- 塩分4.8g
4
〈高血圧症〉
生活上の注意
食事について
@ バランスのとれた食事を、1日3回規則的にゆっくりとした気分でとりましょう。
A 塩分を制限しましょう。
※食塩は7g/日以下、このうち調味料などとして添加する食塩は4g/日以下
みそ[一人分のみそ汁12g(小さじ2杯—梅干し位)、塩分1.0〜2.0g]、
しょうゆ(5t、1g)、 ウスターソース(5t、0.4g)、フレンチドレッシング(15cc、0.5g)
B 適正体重を維持しましょう。肥満を伴なう高血圧症は、まず減量しましょう。
標準体重(kg)=【身長(m)×身長(m)×22】の20%を超えないこと。
C 脂肪やコレステロールを摂り過ぎないように注意しましょう
D カリウムは、血圧を下げる作用があります。野菜類、果物類より摂りましょう。ただし、果物は糖分を多く含んでいるので摂り過ぎないように注意しましょう。
カルシウムの不足は、血圧を上昇させます。牛乳、乳製品、小魚、大豆、緑黄色野菜などから十分とりましょう。
Eアルコールは週休2日とし、飲み過ぎないように注意しましょう。
※1日のアルコールの目安量 --- ウイスキー(シングル):2杯
ビール(中):1本、ワイン:200ml、日本酒:1合
日常生活について
@ 適度の運動を心がけましょう。
運動しない人の血圧は運動をする人に比べて高い傾向にあり、運動療法(有酸素運動)は血圧を下げる効果があることが報告されています。
毎日30〜45分くらいの最大酸素摂取量(精いっぱいの運動)の50%くらいの軽い運動(早歩きなど)を、毎日あるいは週に3〜5日継続しましょう。
[ 1日8,000〜1万歩 ]、以上のような運動を続けると10週間で50%の人は最高
血圧20oHg以上、最低血圧10oHg以上、血圧を下げる効果があることが
報告されています。
※ 運動療法開始前には必ず心臓や血管病の検査を受けることが必要です。
A 禁煙しましょう。
喫煙はβ遮断薬の降圧効果を減少させます。
喫煙は狭心症や心筋梗塞、脳卒中の危険因子です。高血圧症の人は心臓血管の合併症の予防のためにも禁煙しましょう。タバコ1本-----血圧を10oHg位上昇
B 便秘を予防しましょう。
排便の時のいきみは血圧をあげます。適度の運動を心がけ、繊維の多い食品
(いも類、豆類、繊維の多い野菜類、海草類、きのこ類、コンニャクなど)を
十分に摂りましょう。場合によっては下剤で調節し、排便は1日に1回はある
ようにしましょう。
C ストレスは早めに趣味やスポーツで気分転換をはかりましょう。
D 入浴は半身浴で、38〜42℃位で5〜10分間位が目安です(冷水浴、サウナは禁止)
E 冬季の寒冷を避けるために暖房や防寒に気を配りましょう。(特にトイレ、浴室)
※参考文献:日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン ( 2001.10 )
〒212-0058 川崎市幸区鹿島田1133-15
(医)はとりクリニック 羽鳥 裕
TEL&FAX 044-522-0033