h00/02/04 更新
内分泌のページ
甲状腺機能亢進症(バセドウ病) 作製 佐々木看護婦
羽鳥 補追
No.1
1.甲状腺機能亢進症(バセドウ病)とは
甲状腺自身の機能亢進により甲状腺ホルモンの産生と分泌が高まった状態である。
TSH(甲状腺刺激ホルモン)受容体を自己抗体とする自己免疫疾患と考えられ,
血中の刺激性TSH受容体抗体により甲状腺が刺激されて機能亢進症となる。
(1)自覚症状
動悸,るいそう,発汗,手指振せん,食欲亢進,イライラ,神経過敏
高齢者は典型的な自覚症状に乏しくうつ状態,心不全症状などで受診する事もある。
(2)他覚所見
甲状腺腫,頻脈(心房細動),皮膚湿潤,収縮期血圧↑,眼球突出,落ち着きがない
青壮年の男性では四肢脱力,周期性四肢麻痺があることがある。
(3)甲状腺検査
■甲状腺ホルモンの測定
血中サイロキシン(T4 )
トリヨ−ドサイロニン(T3 )
トリオソルブ (↑)
遊離サイロキシン(F−T4 )
遊離トリヨ−ドサイロニン(F−T3 )
甲状腺刺激ホルモン(TSH) (↓)
■甲状腺ヨ−ド摂取率,増加
■TSH受容体抗体測定(TB11),陽性
■サイロイドテスト,ミクロゾ−ムテスト,陽性
(4)一般検査所見
*胸部X線 心拡大,肺うつ血の有無
*心電図 頻脈,心房細動の有無
*尿 糖,蛋白陽性の時がある
*血算 白血球減少
*生化,血清蛋白
コレステロ−ル 減少
総蛋白 アルブミンの減少
GOT,GPT 軽度上昇
アルカリフォスファタ−ゼ 上昇
TTT,ZTT 上昇
電解質 Kの減少
*血糖値 空腹時正常,食後30〜60分で高値
2.治 療
(1)内科的治療
■抗甲状腺薬
PTU(Propylthiouracil)(チウラジ−ル,プロパジ−ル,チアマゾ−ル)
MMI(Methimazole)(メルカゾ−ル)
無顆粒細胞症が短期間に突然起こる事がある。
出現頻度(MMI: 0.1 %)(PTU: 0.4 %)
■交換神経抑制薬(β遮断薬),塩酸プロプラノロ−ル
■ジギタリス,利尿薬
■精神安定薬
(2)手術,放射性ヨ−ド療法
No.2
3.看 護
患者への指導
(1)基本的に一生の病気であるが,治療法,付き合い方いかんで十分治癒可能である。
内服開始後1〜2ヶ月で効果は著しく軽快するが治療を中断すると再発する。
(2)抗甲状腺薬の内服の指導
初期は1日3回分服し,規則正しく内服する事。
(3)抗甲状腺薬の副作用出現時の指導
顆粒球減少症を起こす可能性があるため,血液検査を含め,月に一回は必ず受診する。
また内服開始後,4〜5週間目に高熱,咽頭痛の出現した時は内服を中止し,
直ちに受診する事。
(4)眼症状の強い時
■副腎皮腎ホルモン剤(全身投与)
■塩酸プロプラノロ−ル(点眼薬)
■光線からの保護のため,サングラスを使用する事。
(5)食事についての指導
■内容のバランスに心掛け,規則正しく摂る。
甲状腺機能が亢進している当初のうちは栄養価の高い食品,ビタミン,
ミネラルの多い野菜を十分摂る。但し腸蠕動が亢進のため,下痢,軟便の時は
過食を慎み,消化吸収の良い食べものを摂る。
■ヨ−ド含有食(海藻など)は摂らない事。
■コ−ヒ−、アルコ−ル、タバコの制限。
■甲状腺機能が正常化してから食欲に任せて食べていると肥満化するため注意する事。
(6)心身の安静が大切で,機能正常化までは激しい運動,過労を避けるよう指導する。
(7)妊娠とパセドウ病について
■甲状腺機能を正常にしてから計画的に懐妊を考えるよう指導する。
■パセドウ病で妊娠した場合,一刻も早く甲状腺機能を正常化する事が大切である。
■一般に妊娠後は総甲状腺ホルモンが増加する。
そのために生体活性を持つ非総合ホルモン(遊離サイロキシン・遊離トリヨ−ド
サイロシン)を指標にしてコントロ−ルする。
(8)甲状腺クリ−ゼ
■未治療放置,治療不十分の場合,感染症,外傷,手術などが誘因となって発症する
重篤な状態である。[死亡率(50%↑)]
■早期発見の目安:高熱(40℃)頻脈(150/Min.↑)心房細動,著明な発汗,
手指振せん,全身痙攣,下痢・腹痛,嘔気・嘔吐,心不全(肺水腫),意識障害
(9)甲状腺中毒性周期性四肢麻痺
■未治療、コントロ−ルの悪い男性パセドウ病に多い。アルコ−ル,ストレス,
眠前の炭水化物の過剰摂取などが誘因となり発病する事が多い。
■飲酒や眠前の過食を避けるよう指導する。
抗甲状腺薬の説明
1.無顆粒細胞症が起こり,血液検査が必要になる場合があり
ますので,月に1回は必ず受診して下さい。
2.無顆粒細胞症の発症頻度は0.1〜 0.4%位です。
突然に高熱,激しい咽頭痛,全身倦怠感,出血傾向などの
症状が発現した時は服薬を中止し,無顆粒細胞症の可能性
を考えて,直ちに連絡するか受診して下さい。_