ジュニアスポーツ選手における血液生化学の性状

 一般演題 186

(財)神奈川県予防医学協会精密総合検診部

羽鳥 裕、菊池 美也子、倉田 満

セクション 1
タイトル 1
タイトル 2
タイトル 3

セクション 2
タイトル 1
タイトル 2
タイトル 3
タイトル 4

セクション 3
タイトル 1
タイトル 2
タイトル 3
タイトル 4
タイトル 5

セクション 4
タイトル 1
タイトル 2
タイトル 3
タイトル 4
タイトル 5

タイトル 6


近年、人間ドックなど健診において、若年世代の高脂血症、高尿酸血症、糖尿病の増加が指摘されています。われわれは、平成10年かいおこなわれた、なかがわゆめ国体出場候補の選手を、出場前の2から5年間にわたって、神奈川県体育協会とともにフォローする機会を得ました。

若年スポーツ選手の血液生化学データを、同年齢の一般小児、および若年者の人間ドックの結果と比較検討しました。比較には、SSPS バージョン9.0を用いました。

 

スライド 3

 

対象と方法

 

国体出場候補956名のうち、陸上競技を中心としたジュニア指定強化選手の94名、男子54、女子40名(平均年齢16.7±2.5歳(平均±標準偏差)) です。 身長、体重、理学検査、整形外科検査、呼吸機能、負荷心電図、血液生化学、尿検査、食事調査などをおこなっています。さらに、選手のパフォーマンス向上のためにフィードバックを検査終了時に選手、コーチ、父兄にたいして、医師による結果説明、トレーナーによるトレーニング方法、栄養士による食事指導などを行います。

これらの若年選手の結果を、日本公衆衛生協会が平成8年に編集した104項目、11万件のデータをもとにした日本人小児の臨床検査基準値と、および神奈川県予防医学協会の人間ドックの平成3年、平成9年の、20歳台、30歳台の検査の平均または中央値の結果と比較検討しました。

 

スライド 4

 

これは、スポーツメディカルチェックの風景です。左上は一般採血、右上は、インターバルトレーニング中の乳酸測定、左下は、呼気ガス分析によるオールアウトまで行う最大酸素摂取量と負荷心電図、右下は、筋力測定などをしめします。

 

 

スライド 5

 

結果

身長と体重は、若年選手は、主に陸上という種目特性もあり同年齢に有意ではありませんが上回ります。

 

スライド 6

脂質の比較しますと、若年選手は、女子において中性脂肪が有意に高い結果でした。

また、一般の若年男子において、中性脂肪が有意に高い結果でした。

HDLcは、男女ともに高めでした。

 

スライド 7

平成9年の結果を、平成3年と比べると、男子で中性脂肪が高くなる傾向にありました。

 

スライド 8

尿酸値は、男子若年選手が、同年齢、20歳台、30歳台よりも高い傾向にあります。

 

スライド 9

糖尿病の指標としてのHbA1Cの比較では、若年選手の女子でほかより高く、若年者のドックでは、平成9年の20歳台、30歳のいずれも高くなる傾向にあり今後の変化が注目されます。

 

スライド 10

 

考察

 ここには示しませんでしたが、Hbが7.0をきる高度の貧血、肝障害などを多くの長距離女子選手や減量を必要とする体操などの種目にみられ、無理な減量、運動活動量に見合わない摂取カロリーの不足によることが原因にあると考えられる。

一方、急激な筋力増強をねらった栄養補助食品の使用、過食による血圧高値、高脂血症、高尿酸血症なども見られます。若年スポーツ選手でありながら、成人の生活習慣病に近い結果であり、スポーツ選手の現役はもちろん、引退後においても、きめの細かい運動量に相当する食事指導が必要です。また、人間ドックにおける最近と過去のデータを比べると、若年層においても、脂質、尿酸、耐糖能の変化があり、今後も生活習慣病の増加が予測されます。