学校スポーツの内科スポーツ障害と必要な救急

1999.11.16

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タイトル 3

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タイトル 4

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医療法人社団はとりクリニック 羽鳥 裕 

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参考資料

99/08/02 第2回「病院前救護体制のあり方に関する検討会」の概要

http://www.mhw.go.jp/shingi/s9908/s0802-1_10.html

 

急性障害

1. 死亡事故

 学校でのスポーツ活動に関連した死亡事故は,学校安全会などの調査から年間100〜200件,その50%以上が突然死である.また,突然死の中で,運動中に起こるものは70%くらいである.突然死をよく起こすスポーツ種目としては,持久走や陸上競技,次いでバスケットボール,水泳などである.原因疾患としては,肥大型心筋症心筋炎冠動脈奇形、川崎病後遺症などが比較的多くみられ,特に水泳中では QT 延長が多い.例示

2. 暑熱障害

 暑熱障害は,熱疲労(体温38℃以下),熱痙攣(38℃以上),日射病(42〜43℃)に分類される.暑熱障害は,高温多湿の環境で起こりやすく,湿球温度が25℃以上の時は要注意である.特に,下級生や肥満者は気をつけなくてはならない.水分や電解質の十分な補給が,暑熱障害の予防には大切.例示

3.横紋筋融解(rhabdomyolysis)

 過激な運動により筋肉が壊死に陥る障害である.大量のミオグロビンが血中や尿中に流出し,腎不全をひき起こすこともある.黒褐色尿が認められたら本疾患を疑い緊急の精査が必要である.稀ではあるが,重い急性のスポーツ障害の1つであり,死亡率は20%くらいといわれている.運動に未順化の新1年生の男子に多くみられ,注意が必要である.例示

4.発作性血色素尿症

 剣道で好発するスポーツ障害である.剣道練習の直後より紅茶様の赤色尿が出現する.剣道練習による下肢への衝撃が溶血をひき起こし,ヘモグロビンが尿中へ流出したものである.尿の所見のみで,特に自覚症状は認められない.安静と練習量の制限にて数日で軽快するが,ごく稀に,腎不全に発展することもあり,赤色尿が消失するまでは要注意である.

5.過換気症候群(過呼吸)

 過換気症候群は,練習や試合の中で,過度に緊張した時に誘発され,女子選手で好発する.呼吸困難,しびれ感,脱力,痙攣などが起こり,失神に至ることもある.治療は 5l くらいの紙またはビニールの袋の中で再呼吸させる.5分くらいの再呼吸でたいてい軽快するが,軽快しない時には病院へ搬送する.繰り返し本症を起こす選手は,心理療法としてのカウンセリングが必要となる.

6.運動誘発性気管支喘息(EIA)

 運動により誘発される気管支喘息のことである.運動誘発性喘息をもつ選手は,ある程度の運動制限が必要であるが,発作を誘発することの少ない水泳,剣道,エアロビクスなどを取り入れた運動で予防も可能である.運動を開始する前に気管支拡張薬を内服したり,マスクを着用して運動することなどにより,発作の軽減や予防が可能である.大きな競技会では,ドーピングテストが実施されることがあり,気管支拡張薬の使用には注意が必要である.

7.運動誘発性アナフィラキシー

 昼食でカニ,エビ,セロリ,貝類などを食べた後で運動した時に誘発されることがある.呼吸困難,蕁麻疹,腹痛などを訴え,救急車にて搬送されることが多い.ショック症状に陥ることもあり,輸液,吸入,ステロイド静注などが必要とされる.

 

慢性障害

1.貧血  貧血は女子選手に多く認められ,慢性スポーツ障害の中では頻度の高いものの1つである.原因に関しては,鉄分や蛋白質の摂取不足,物理的溶血,汗や便への鉄分排泄増などがいわれており,病態としては,鉄欠乏性貧血であるのが大半である.血中のヘモグロビンが 10g/dl 以下になると,運動能力が低下し,スポーツ成績の不振を理由にして来院する選手が多い.鉄剤の内服と食事指導により回復するが,スポーツ選手では定期的な貧血のチェックが必要である.

2.スポーツ心臓  スポーツ選手では,左室肥大を呈したり,徐脈,房室ブロックなどの不整脈を呈することがある.スポーツ心臓は,病的なものではなく,激しいトレーニングに適応した変化であり,運動を中止すれば,自然に消失していくものである.左室肥大の場合は,心エコーにて精査して,特に基質的疾患が発見されなければ,スポーツ活動の制限は不要である.不整脈の場合は,運動負荷テストにて軽快すれば,運動制限は不要である.

3.オーバートレーニング  練習が過度になり,休養が不十分になると,精神的にも肉体的にも疲労が蓄積し,運動能力が低下して,競技成績も悪化する.軽症の場合は,気分の不調で,ちょっとスランプに陥ったくらいであり,休養をとれば短期間に回復する.重症のオーバートレーニングでは,休養だけでは回復が困難であり,カウンセリングや心理療法が必要とされ,治療が長期にわたることがある.成績の不振,オーバートレーニング,バーンアウトなどから気分の不調に陥り,不眠や食欲不振,いらいらやうつ症状を訴える選手がみられる.また,チームメイト内での人間関係の悪化やいわゆるしごきなどが,いじめや不登校に発展することもあり,注意が必要である

4.月経異常  激しいトレーニングや厳しいウェイトコントロールの必要なスポーツをしている女子選手では,初経の発来が遅れたり,月経の不整が起こってくることがある.初経発来の遅延は,原発性無月経に至ることもあり注意が必要である.月経不整は,発来していた月経が停止し,続発性無月経に至ることもあるが,スポーツを中止すると回復することが多い.

 

心筋炎

 心筋炎は心筋細胞の壊死を伴う心筋の炎症と定義される.スポーツの現場では注意の必要な疾患である。原因は多岐にわたるがコクサッキーウイルスやエコーウイルスなどのエンテロウイルス感染が主な原因である.ほかには自己免疫疾患に基づく心筋炎などがある.拡張型心筋症への移行にも留意し,経過観察の必要がある.新生児のエンテロウイルス感染に基づく心筋炎は新生児室での流行を生じる可能性があり,さらに無菌性髄膜炎や DIC の合併を生じ致死率も高く,要注意である.

 

気管支喘息

 気管支喘息の発作は小児の救急疾患のなかでも頻度の多い疾患である.その症状は急速に増悪し,時にCPAOAの状態で来院することもある緊急性の高い疾患である.救急の場にあって,いかに早期に的確に診断し,治療を行うかが重要なポイントとなる.

 また,気管支喘息の経過そのものは慢性であり,多くは継続的に薬物療法を行っており,急性増悪時の家庭での対応ならびに救急受診の指導も必要となる.ピークフローに関しては,最近では家庭での測定を推奨し,その低下の程度により家庭内管理,受診の目安として用いられている.

 

熱中症

 体温調節機構

 適切な体温を維持するためには熱産生と熱放散が等しくなければならず,通常バランスがとれている.熱産生は代謝熱と環境温度の和であり,熱放散には輻射・伝導・対流を利用して熱を放散する皮膚血管反応と,発汗や不感蒸泄による蒸発性熱放散がある.

 体温中枢は視床下部にある.皮膚や身体内部の温度受容器からの上行性の伝達が視床下部に至り,一方下行性の刺激は自律神経を介し視床下部より伝えられる.交感神経による血管収縮・拡張は皮膚血流を調節し,発汗の調節は副交感神経の支配による.

 これらの生理的変化は活発で皮膚血流は低温環境では0.2〜0.5l/分だが,高温環境では7〜8l/分にまで増加する.心拍出量も体温の上昇により有意に増加するが,もし十分に増加しないと血圧低下をさけるため血管収縮が生じ,熱放散は障害されることになる.

 一度体温調節機構が崩れ,深部体温が上昇すると代謝需要は増大し,体内エネルギー予備量は早期に枯渇する.

 42℃になると細胞内酵素系は停止し,細胞膜透過性は進行性に亢進する.

 さらに体温が上昇すると蛋白は変性し,臓器不全が発症する.

体重の3%を越える脱水は体温上昇に関連する.高温環境での運動は時間当たり2.5l以上の発汗を来すため,もし十分な水分の補給がなされないと,脱水は徐々に進行し,熱中症を発症しやすい準備状態となる.

 鬆通気性の悪い服装や過度の厚着は,対流や発汗による蒸発を阻止し熱放散を低下させる.十分なトレーニングを積んだ運動選手は1時間で1000kcalの熱を産生し,これは1分間に体温を0.3℃上昇させることになる.

 利尿薬やアルコールは脱水を助長する.

 鬚筋萎縮傾向の人や肥満の患者は熱放散が限られてしまう.肥満者は体重当たりの心拍出量が少なく,熱放散に利用できる皮膚の面積も身体の容積に比べ少ないためである.また,全身状態の悪い人は体温上昇に対応して心拍出量を増加させることができない.

 熱中症の救命処置

自発呼吸の有無・脈拍の有無をみて,必要なら直ちにその場で心肺蘇生術を開始する.心肺停止状態でなければ,ショック,意識障害の有無を確認し,必要であれば気道の確保,酸素吸入を開始する.体温測定後熱中症が疑われたら,患者を涼しい場所に移動させ,着衣をゆるめて,身体を濡れたタオルやスポンジでふき,可能であれば飲水を試みる.体温の上昇を伴わないもの(日射病,熱痙攣)と,体温の上昇を伴うもの(熱疲労,熱射病)である.熱射病が最も重篤で強力な集中治療を要する.熱疲労は熱射病の前段階と考えられる.

1) 体温の上昇を伴わないもの

・日射病sunstroke 炎天下で長時間立っていたり,運動中とくに頭頂部を太陽光線で直接照射された場合に発生することが多い.皮膚の血管拡張や運動による筋肉への血流増加により,相対的に血管内血液量が不足して起こる一種の循環失調である.皮膚は発汗が著明で,じっとり冷たく,体温は正常かむしろ低くなっている.

・熱痙攣heat cramp  熱痙攣は多量の発汗によって失われた塩分(NaCl)喪失性の脱水が中心である.多量の汗をかいて水のみ補給を行っていた場合に起こり,筋肉の興奮性が亢進して筋肉の痛みを伴う痙攣、平滑筋も攣縮を起こすため,腹痛や嘔吐を来すこともある.

2) 体温の上昇を伴うもの

・熱疲労heat exhaustion 髻熱疲労は発汗による脱水に加え,熱産生の増加に熱放散が追いつかなくなり,体温調節機能が破綻して高体温となった状態である.熱射病とは意識障害を伴わないことにより区別される.症状は多量の発汗,頭痛,めまい,嘔気,嘔吐,筋力低下,視力障害,皮膚紅潮等である.まず最初の治療目標は深部体温を39℃以下にまで下げることである.現場での処置としては余分な衣服を脱がせ,水道水を全身にスプレーしてエアコンで送風しながら搬送する.酸素投与し,必要であれば人工換気を行う.

 急速な冷却は蒸発乾燥法が最も有効である.ぬるま湯を全身に散布し扇風機で送風する.1gの水が気化すると,1gの氷が溶けるときの7倍の熱が放散するといわれている.氷水槽内への浸漬も急速な冷却が得られるが,患者の管理が困難で,ふるえを起こしやすい.

 

救命救急

一次救命処置は,呼吸および循環停止または機能不全をできるだけ早期に認識し,呼吸停止患者では緊急の人工呼吸を,心停止患者では心肺蘇生法を行うことである.適切な医療(advanced life support;ALS,二次救命処置)が開始されるまでに,脳と心臓に十分な酸素を送ることにある

1) 意識の確認と移動

 倒れている傷病者をみたら,意識のレベルを調べる.意識の有無を確認するためには,両肩をゆすって呼びかけを行う。 また,必要な場合には傷病者を安全な場所へ移動する.不適切な方法での傷病者の移動は,頸部損傷がある場合には麻痺の原因になりうる.

2) 救急車の出動依頼

 傷病者に意識がなければ,気道確保を行うとともに,周囲の人の助けを求め,119番通報を依頼する.初期治療開始時間の短縮が,その後の傷病者の予後を左右することから,早期に救急車の出動を依頼することが非常に重

 

気道の確保 A Airway

気道確保の手技

 頤部挙上を第一選択とし,これで不十分な場合に下顎挙上法または頭部後屈法を試みる.

2) 気道確保の確認(呼気吹込みを 2 回行う。

 気道確保を行ったら,次に呼吸の有無を確認する.もし,自発呼吸があった場合には,そのままの体位にしておくか,または昏睡体位(図4鵤)にする.

 気道確保を行っても,呼吸がない場合には,呼気吹込みを2回行う.呼気吹込みは,800〜1200mlを1.5〜2秒かけて吹き込む.

3) 異物の除去

 呼気吹込みが行われない場合には,気道内異物を疑い,指先にガーゼまたはハンカチーフを巻いて,口腔内の清拭を行う。 さらに呼気吹込みを行

気吹込みが行われない場合には,ハイムリック法で異物の除去を行う.

 しかし,確固たるデータがないので,わが国では背部叩打法、側胸下部の圧迫法の組み合わせを踏襲している.また乳児の背部叩打法はアメリカでもそのままである.

 異物の除去と気道の確保が行われない限り,蘇生法の成功はありえない.

4) 体位の変換

 倒れている人が腹臥位の場合,頸部損傷の存在を疑い,後頭部,項部を片手で支え,もう一方の手を肩に回し,頸部をねじらないようにして仰臥位にする.

人工呼吸法 B Breathing

 異物の除去と気道の確保が行われているにもかかわらず,自発呼吸が認められない場合には,頸動脈を触知する,脈拍を触知しても,自発呼吸がない場合には,人工呼吸を行う.

 一般の人に普及させるべき人工呼吸法は,道具を用いない呼気吹込み法である.しかし,感染防止のための一方弁付呼気吹込み器具や,専用のポケットマスク等の補助器具や,バッグマスクによる加圧人工呼吸法の使用訓練を受けた人は,一次救命処置でも使用してよい.

1) 人工呼吸の方法

 人工呼吸は,成人では5秒に1回,すなわち1分間に12回の割合で1回800〜1200mlを1.5〜2秒かけて吹き込む.

 小児では4秒に1回胸が軽く膨らみ,胃膨満がみられない量を1〜1.5秒かけて吹き込む.

 乳幼児では3秒に1回の割で行う.

2) 呼気吹込み人工呼吸法の種類 人工呼吸の方法には,以下に示す各種の方法がある.

 口対口人工呼吸法 口対鼻人工呼吸法

 

 胸骨圧迫心マッサージ C Circulation

1) 胸骨圧迫心マッサージの開始

 頸動脈を触知しない場合には,心マッサージを開始する.

2) 心マッサージの意義

 心臓がポンプ作用を失い,脳に血流がなくなると,3分以内に適切な処置がなされないと蘇生できなくなる。

3) 心停止の確認

 成人では頸動脈,乳幼児では上腕動脈か大腿動脈で脈拍の有無を確認する.

4) 胸骨圧迫心マッサージの原理

 物理的圧迫によるとする心臓ポンプ説に代わり,胸腔内圧の変動が主要な原理とする胸腔ポンプ説が提唱されている

5) 胸骨圧迫心マッサージの方法

(1) 胸骨上の正しい圧迫の位置の決め方

 胸骨圧迫心マッサージを行うに際しては,正しい位置で,正しい方法でマッサージを行うことが必要である..

(2) 胸骨圧迫心マッサージの手技

 圧迫回数は,救助者が1人の場合も2人の場合でも,人数にかかわらず,1歳以上では毎分80〜100回である.

 圧迫する深さは,10歳以上では3.5〜5cm,10歳以下では片手で2.5〜3.5cm,乳幼児では,指1〜2本で毎分100〜120回の割合で1.5〜2.5cm押し下げる.

(3) 心マッサージと人工呼吸の組み合わせ

 a) 成人の場合

 髻救助者が1人の場合

 まず呼気吹込み人工呼吸を2回行い,頸動脈に脈が触れなければ,心マッサージ15回(毎分80〜100回)に対し,人工呼吸2回を繰り返して行う.人工呼吸の方法は前に述べた.一般人の教育には本法のみを教える.

 鬆救助者が2人の場合

 心マッサージ5回に人工呼吸1回を繰り返して行う.

 b) 小児,乳幼児

 心マッサージ5回に人工呼吸1回を繰り返す.心マッサージは小児では毎分80〜100回,乳幼児では100〜120回の割で行う.

颯 一次救命処置の効果の判定

 瞳孔径,対光反射,脈拍の触知を救命処置開始1分後および数分に1回の割合で行う.

颱 一次救命処置の中止と継続

1) 中止時期

呼吸が十分に回復した場合

第三者に引き継いだとき

2) 感染対策

 救命処置が傷病者の人命救助のために行われる意義については,衆人の認めるところである.しかし,最近素手で行われる一次救命処置によって,エイズ,肝炎への感染を危惧する声がある.現実には心肺蘇生法を行ったことによって,これらの疾患に感染することはないとされており,かつこれらの疾患への感染例は報告がない.しかし,血液に接触しないようにして,手袋の使用,呼気吹き込み人工呼吸には,一方弁付の呼気吹き込み用具の使用等が奨められる.

 

 人工呼吸・酸素療法

酸素療法の適応

心肺蘇生時

 心肺停止時は肺での酸素の取り込みも全身末梢への酸素運搬も低下しているため,酸素投与は必須である.この場合当然ながら,人工呼吸とともに酸素を投与する.

チアノーゼがあるとき

 チアノーゼは血中に還元ヘモグロビンが5g/dl以上ある場合にみられる.原因としては,肺での酸素取り込み障害による場合と,換気障害による場合があるが,いずれにせよ救急の場で患者にチアノーゼがあれば,酸素投与を行い,少しでも血中酸素含有量を増やす努力をする.

パルスオキシメータによるモニタリングで,あるいは動脈血採血によるガス分析で低酸素血症が判明した場合には,当然酸素吸入を行うべきである.

その他

 特殊な場合として,高山などの高地では,大気圧が低いため大気中の酸素分圧そのものが低い.したがって高地で救急医療を行う場合は,酸素吸入を行った方が安全である.

バッグマスク法  心肺蘇生の場合は,まずバッグマスク法での人工呼吸が行われる.この場合マスクをぴったり密着させてバッグを圧するのがコツ.

気道のトラブル  皮肉なことに,挿管する前は不十分ながら何とか自分で換気できていたのに,挿管して人工呼吸を開始した後,気道のトラブルで死亡する例も決して少なくない.急に換気ができなくなったら,直ちに気道吸引用チューブを気管チューブの中に通してみる.気管チューブ先端より先まで通れば,問題はそれより先(患者自身の気管・気管支)にある.前述した強い喘息発作による気管支痙攣・緊張性気胸等が考えられる.吸引チューブが通らなければ,気管チューブの閉塞・屈曲が考えられるので,直ちにチェックする.必要なら気管チューブの入れ替えを行う.

心肺停止

CPAとは、以前はDOA(dead on arrival)と表現していた.これは訳せば「到着時死亡」となる.しかし「心肺機能停止」イコール「死亡」なのではなく,患者が病院に到着した時点では未だ蘇生する可能性が残されているわけであり, DOA来院時死亡という表現は不適切であり,最近では病院到着時の病態をそのまま示すCPA(cardiopulmonary arrest:心肺停止)あるいはCPAOA(cardiopulmonary arrest on arrival:来院時心肺停止)という表現が用いられている. 

心拍再開率      心肺停止の30%

5 時間以上生存            20%

24時間以上生存            15%

7 日以上生存               7%

1 カ月以上生存             4%

完全社会復帰               1%

心疾患によるものは心拍再開率は低いものの,いったん蘇生すれば比較的予後が良い.しかし最終的に予後を決める最も重要な因子は,蘇生開始までの時間である.

心肺停止の診断

 一次救命処置の段階での心肺停止の診断は,

・呼吸運動の停止

・頸動脈を触知しない

・刺激に対して反応がない

が基準となる.   可能な限り人手を集めること

 30分以上の心肺蘇生を必要とした症例の,完全社会復帰率は著しく低い.低体温になった溺水などでは,長時間の蘇生術が功を奏した症例もある。

蘇生処置 を 止めないこと!!