指導者のためのスポーツ医学 基礎 00/05/20 更新 戻る

少年野球

2000.5.20

 

川崎市医師会健康スポーツ医部会 会長

(財)神奈川県予防医学協会人間ドック部長

(医)  はとりクリニック 羽鳥 裕  

TEL 044-522-0033

川崎市幸区鹿島田1133−15 

mailto:yutaka@hatori.or.jp

homepage : http://hatori.or.jp

 

スポーツにおける "医学" の位置付け

 

 

スポーツのゴールをどこに置くか?

トップレベルを目指すか?

趣味のスポーツ?

健康のため(一次予防)?

病気が悪くなるのを防ぐ(二次予防)?

 

スポーツによる内科障害・事故と対策

急性の障害

心臓死

循環不全

熱中症

運動誘発性アナフィラキシー

低体温

高山病

潜水病

横紋筋融解症

 

慢性の障害

スポーツ貧血

オーバートレーニング

スポーツ心臓

高尿酸血症

 

体型の分類

肥満(皮下脂肪型、内臓脂肪型、かくれ肥満)

筋肉質、標準、やせ

過体重(筋肉、肥満)   BMI>24

除脂肪体重(LBM)

除脂肪体重/身長    加齢の変化が少ない。

体脂肪の評価

水中体重秤量法   水中で息を吐く、残気量の推定、酸素再呼吸法

キャリパー法    摘み方により誤差、肥満者で難しい

超音波法        6部位の測定、内臓脂肪の推定

インピーダンス法 食事、排尿、発汗、姿勢に影響

 

体脂肪の役割

断熱作用  筋肉の温度低下を防ぐ

クッション

エネルギー貯蔵

効率のよい貯蔵法

総貯蔵エネルギーのうち80%以上

糖質  筋肉、肝臓、血中

糖質、蛋白4kcal/g  脂質は9kcal/g

身体に蓄積された脂肪は、塞翁巻く、水分が多いので7kcal/g

 

体脂肪量の測定

インピーダンス法

除脂肪体重の73%は電解質を含む

水中体重法を対照にしている

食事、発汗、姿勢など修飾因子が多い

水中体重秤量法

残気量の測定  酸素再呼吸法

キャリパー法

測定の熟練度

超音波法

皮下脂肪量    体密度D=1.087-0.00056x 

D=1.083-0.00048x  fx  6部位の総和 

上腕前後  大腿前後  腹部  肩甲骨下

 

筋肉のタイプ

白筋: 瞬発力、酸素の貯蔵は低い 脂肪を分会する力は弱い。

赤筋: スタミナ 酸素の貯蔵が多い、脂肪を分解する

基礎代謝が活発になって酸素消費が多くなる。

                                               

ジョギング

ウォーキングと異なるところ、両足が地面から離れる

膝、腰への衝撃負担は2倍

ランニングハイ   セカンドウィンド  

目標を設定しやすい、long slow distance と インターバルトレーニング

 

レジスタンス運動

筋力、筋パワー、筋持久力などを総称してレジスタンストレーニングは、インスリン感受性を改善する。

NIDDM 、レジスタンスエアロビクス運動

負荷をあげるとき concentric,

負荷をおろすとき  eccentric    1.4倍の負荷がかかる。

加齢で筋繊維(瞬発筋  type2)は萎縮しやすい

体を支える大きな筋群(大腿四頭筋、腹直筋)の萎縮が大きい

神経系の低下よりも筋断面積の減少が影響大きい 

過負荷の原則   拮抗筋もあわせてトレーニングする

レジスタンス運動は、インスリン感受性を改善する。

 

アクアエクササイズ

水中運動の特徴

浮力   膝などの負担が減る。体重が10分の1

水流、水の抵抗  マッサージ効果、エネルギー消費の増加

血流再分配による心臓への静脈還流量の増加、左室前負荷の増加

呼吸制限性(水泳)、非呼吸制限性(歩行)

同一強度ならば、水泳中のほうが血圧が高い、

心拍数の低下  11%低い

 

熱 中 症 と は 

   

ウオーミングアップとクールダウン

ウオーミングアップ

障害の予防、パフォーマンスの向上

内科、循環器 虚血、不整脈

整形  筋、靭帯、骨、 

ATを超えない、長すぎると疲労蓄積

筋温を暖める、後ストレッチング

クールダウン

静脈還流の減少、脳貧血

乳酸を除去、運動源とさせる VO2maxの30%

10分、心拍数<100

 

ストレッチング

スタティックストレッチング    

 伸展反射を起こさぬようゆっくり伸ばす

バリスティックストレッチング  反動を利用して伸ばす、柔軟体操、 安全性に問題

コンビネーションストレッチング  拮抗筋を緊張させると弛緩する原理

 

メディカルチェックはなぜ必要か?

トップレベルのスポーツ選手の場合 

スポーツ愛好家 

健康のためのスポーツ 運動

病気を治すためのスポーツ 運動

病気の人が運動してよいかの判定

トップレベルのスポーツ選手

オリンピック、バスケット、Jリーグ、競輪選手など

トライアスロンの場合

トレッドミルなどが義務づけられている。

一般市民マラソンの場合

きまったフォーマットがない。 

コンタクトスポーツ

 

国体出場選手 神奈川方式

40歳未満の場合   最大パフォーマンスを引き出す

40歳以上の場合   事故を防ぐ

ジュニア強化選手   今後に向けて育てる

内科系、外科系、筋力、体力

各種のメンタルテストと臨床心理、栄養士による診断とメニュー作成、アスレチックトレーナーとの連携

 

現場における救急、 心肺蘇生

スポーツの突然死はほとんどが心臓死

心停止10秒で意識なくなる、1分以内に心肺蘇生へ、

心肺停止5分以上たったら頭は回復しない

早くやりすぎることを恐れない

正常の人にやって悪くなることはない!

意識は? 大声で声をかける、つねる、たたく

名前?何日何曜日?今何している?  息をしているか?

目で胸、腹の動き、耳で呼吸の音を聞く

吐物がつまってないか? 舌根がおちてないか?

人を呼ぶ、救急車を呼ぶ

救急車を呼ぶときには、意識がないことを必ず伝える

Airway,Breathing,Circulation  の実習

外傷の救急処置

頭が痛いか?吐き気は? はっきりみえるか? 二重に見える

痺れがあるか? 手は動かせるか? 足は動かせるか?

応答は正確か?あばれる、痙攣、走る方向、動き鈍い

頚髄損傷 頚椎の何番目の損傷か?症状がすべて違う。

肋骨骨折、肺損傷、、心停止 ボール

腹部の外傷、いたみ、ショック

 

健康スポーツ医部会の活動

1999.8.30 スポーツ現場でのテーピング 正地巌先生

1999.9.26 日本体力医学会 熊本

1999.10.9 (土) 16:00 講演会 

武蔵小杉 ホテルザエルシー

東京女子医大 アルピニスト 今井通子

中高年の登山の医学

1999.11.6,7 臨牀スポーツ医学学会総会 座長

2000.6.24 地域講習会 コンタクトスポーツとチームドクター(宮前区休日診療所)

2000.10.24 地域医師会とスポーツ医(日本臨牀スポーツ医学会総会 総会 

 

野球肩:

スポーツにおける非外傷性疾患の代表である野球肩は,肩関節が複合関節として機能しているために単一の病態ではなく複数の組織損傷を呈する.この損傷は関節窩上の上腕骨頭の非生理的な動きが機械的刺激として関節に加わり起こりうる.また,スポーッ活動における身体運動は,正確に,効率よく,最大限のエネルギーを伝達するようにすべての関機能を便う運動連鎖であり,足関節や股関節の可動域制限があってもフォームの破綻や肩関節への過負荷から野球肩を生じることがある.比較的多い病態は関節唇損傷,腱板部分断裂,閏節包あるいは肩峰下滑液包の滑膜炎,上腕二頭筋長頭腱炎で,機能的には腱板機能や肩甲胸郭関節機能の低下を伴うことが多い.診断に際しては病態発生のメカニズムと機能回復のために必要な情報を得ることが大切で,障害が発生し症状が発現した状態では,病態部位の治療を行う以外に肩関節を含めた全身の関節機能の再建と,パフォーマンスと身体機能との関わり合い,さらに病態部位に対する影響などの再考が必要である.(筒井展明)

 

野球指:槌指・マレット指と同義である.いわゆる突き指で受傷し,末節骨に停止する指伸筋終末腱の断裂や剥離骨折により遠位措節間関節(distalinterphalangealjoint:DlP)の伸展が障害されたものである.関節面のl/3を越える大きな骨片を有するものは観血的治療が適応となるが,多くの場合は装具療法など保存的治療が奏効する.(正官降)

 

投球骨折

投球骨折は投球動作時に回旋力が上腕骨骨幹部に作用して起こる螺旋骨折で,腕相撲骨折,戦争中の手榴弾骨折も同様の機序により発生するものである.本骨折は,女子,若年男子には少なく,20−30歳代の男性野球愛好家に好発することから,ある程度の筋力があり,手投げになるなど悪いフォームが発生に関与していると思われる.骨折型から二つに分類される.

1型:中下1/3の上外方から内下方に起こる骨折

2型:中間部に内上から外下方に向かって起こる骨折

1型は加連初期に発生しやすい.上腕骨近位部が肩関節周囲筋群により固定あるいは内旋している状態であるにもかかわらず,上腕骨遠位部にはボールと前腕骨の重さが外旋力として働き,骨折は力学的に弱い腕榛骨筋,上腕筋と上腕二頭筋の間の樟骨神経溝に沿って中下l/3で外上方から,内下方に向かって起こる.2型は,加速末期に発生することが多い.この時上腕骨遠位には前腕骨とボールの重さが慣性で内旋力として働くために起こるとされている.投手に発生することが圧倒的に多いが,捕手,外野手が全力投球した時にも起こる場合がある.

治療:螺旋骨折のため骨折面が広く保存療法により比較的良好な骨癒合が得られる.

手術療法:スクリュー固定,プレート固定法が用いられる.

(斎藤明義)

 

野球肘

外側型は離断性骨軟骨炎(いわゆる野球肘),内側型は内側上顆の骨軟骨傷害QitUeleagure’selbow)・尺側領側副靱帯損傷(槍投げ肘),後方型は肘頭インピンジメントがその代表である.これらは成長期に起こる傷害が多く,的確な診断・治療が遅れると不可逆性の傷害を残し,選手生命を短縮するのみならず変形性関節症を惹起し,日常生活をも障害することとなる.(正宮陸)

 

打撲

冷やしてあたためる。  打僕は,コンタクトスポーツでのけがとして頻度の高いものです。打僕した直後の急性期には,RlCEの基本治療で冷やしてから圧追包帯問定します。冷やす時間は打僕の程度により異なりますが,一般的には数分から数時間でしょう。けがをした日の人浴は避けたほうがよいのですが,シャワーでさっと洋を流すくらいがよいでしょう。受傷後l〜3日して痛みと腫れが少しやわらいだら,今度は風呂であたためるようにします。打僕の治療の基本は,急性期には冷やしで,回復期にはあたためることです。

 

肉ばなれ

ハムストリングに多い。 ダッシュ,ストッブ,ジャンプ,着地などで急激に妨肉が収縮するときに肉ばなれが生じます。競技種自の発生頻度では,陸上の短距離が多く,次いで跳曜,中長距離,ハードルなどです。また,陸上以外ではラグビー,サッカー,体操の順に多く発生します。種目別の受傷部位にも特徴があります。陸上の短距雅やハードルではハムストリング(ふとももうしろの筋肉),跳躍ではハムストリングと大腿直筋(ふともも前の筋肉),中長距離では腓腹筋(ふくらはぎ)とハムストリングに多く発生します。ラグビーではハムストリングと大腿直筋,サッカーではハムストリング,大腿直筋,内転筋(ふともも内側の筋肉),腓腹筋などに発生します。中高年のテニス,バドミントン,ゴルフでは腓腹筋に生じやすく,テニスレッグ,ゴルファーズレッグと呼ばれています。筋肉別の発生頻度はハムストリングに約60%,大退直筋に約20%,腓腹筋に約10%,その他約10%です。復帰は痛みが完全になくなってから肉ばなれの症状は急に発生する痛みであり,腫れはあまり生じません。圧痛(押さえての痛み)と運動痛(動かしての痛み)が重要です。とくに運動痛は白分で動かしたときの痛みと筋肉をストレッチざせたときの痛みがあります。現場での処置はRlCEが基本で,冷やして圧追包帯固定します。受傷から数日した回復期の治療は,あたためてマッサージし,関節可動域訓練やストレッチ,さらに筋力トレーニングも徐々に行います。スポーツ復帰は,痛み(圧痛と運動痛)が完全に消失すること,筋肉の柔軟性が同復すること,筋刀が回復することの3点です。肉離れは再発が多いので予防が大切です。運動前にウォームアップとストレッチを十分行い,筋力と筋持久力を強化することです。

肩の脱白

初回の治療が重要 肩聞節の脱臼は,ラグビーでタックルしたとき,スキーで転倒して手をうしろについたときなどに発生します。90%以上は上腕骨頭が前下方へはずれた前方脱臼です。脱臼したときは肩が動かせなくなり,反対の手で支える姿勢をとり,肩の外側がくぼんでみえます。現場での処置は三角巾や包帯で上肢を体幹に固定し,整復のため医療機関に搬送します。

肩の脱白は反復性になりやすいので,初めて脱白したときの治療が重要です。初回脱臼峙の年齢が著いほど反復性になりやすいといわれています。一般的には整復後3週間固定をしますが,それでも反復性になって何度も脱臼することがあります。そこで脱臼しやすい種目や若い選手には初回の脱臼でも手術をすることがあります。脱自がくせになった反復性肩関節脱日では,肩周囲とくに「うしろ」と「うえ」の筋力強化を図るか,手術が必要です。

 

骨折の治療

あせらず,その他の部位を鍛える

スポーツで多い骨折は,球技での手指の骨折,格闘技やコンタクトスポーツでの鎖骨骨折,それに足関節の骨折です。骨折部には痛み,腫れ,とさには変形が生じます。現場での処置の基本はRlCEです。医療機関でレントゲン検査をして,骨の状態を詳しく調べ治療することが必要です。

肩周辺の筋力強化

@アウターマッスル(肩の表面の大きな筋肉):三角筋,僧房筋,広背筋など

Aインナーマッスル(肩の深部にある小さな筋肉):棘下筋,小円筋,肩甲骨など

アキレス騰断裂

アキレス腱断裂は,加齢によるアキレス腱の変性が示唆されており,これに足関節の急激な背屈と下腿三頭筋の強い収縮によりアキレス腱部が過伸展され断裂が生じると考えられている.スポーツ活動では,バレーボール,テニスやバドミントンなどのレクリエーション・スポーツ中に多く,また体操や剣道など毎日行っているスポーツでも起こることがある.スポーツ動作の場面では,踏み込もうとしたとき,後ろに下がろうとしたときやジャンプの着地などの瞬間に多く,アキレス腱部を他人に蹴られたとか同部に何かが当たったなどと感じていることが多い.診断は,その場の状況とアキレス腱部の陥凹を、触れることで容易である.足部の他の筋にも足関節の底屈作用があるため,足関節が底屈できるからといってアキレス腱の断裂を否定してはならない.断裂を確認するために,ふくらはぎをつかんでも足関節が底屈しない.応急処置としては足関節を底屈した状態に保持し(副木,シーネなど),荷重させずに病院へ送る.補助診断にはやはり画像が有用である、多くはヒラメ筋の遠位付着部付近で断裂している.治療は,ギプスとその後の装具を用いた保存療法と,断裂した腱を縫合する手術療法とに分かれる.治療法の選択は,明らかな結論が出ていない現状では,治療を行う医師にゆだねられている.いずれにしてもスポーツ復帰は6カ月程度かかることが多い.また再断裂が2カ月前後まで起こりやすいため,特にギプスまたは装具からの離脱時期は注意を促す必要がある.断裂したアキレス腱は,治癒が確認されたその後も,多少の軽滅はあるものの肥厚したままのことが多い.

オーバーユース(離断性骨軟骨炎,骨端線離開)骨軟骨が「弱い」発青期に肘関節を使いすぎると前項で述べたように離断性骨軟骨炎(上腕骨小頭)が起こります(図1)。同じような変化は,サッカーのキックで足関節(距骨)に,ジャンプ動作で膝問節(大腿骨内顆)にも起こります。10歳ぐらいで急にスポ一ツを始めたり,新しい靴を履いたり,普段と違う緯習をしたとさに,踵が痛くなることがあります。レントゲン写真をみると,スポーツによる衝撃で踵骨骨端線が不整になったり,分かれていたりします。また,リトルリーグで小さいころから硬球を投げると,肩関節(上腕骨近位骨端線)にストレスがかかり,利き腕でない方の腕と比べると骨端線が開いてしまいます(骨端線離聞)。身体が最も発育する時期はまた一番障害が起きやすい時期でもありますが,それは身体の部位によって異なっています。そのため,踵は8〜10歳,肘は10〜12歳,肩・膝は12〜14歳,腰は14〜16歳ごろに痛みが起こりやすくなっています。

反りがつくる腰椎分離症

小学生に腰痛はほとんどありません。腰椎は,四肢の骨より遅れて思春期に成長のピークを迎えます。そこで,この時期にサッカー,バレーポール,バスケットポールなどで腰椎を反らせる(伸展)動作を繰り返すと腰痛になります。このとき,ひねり動作が加わると成長部位である椎弓(脊椎後方)に亀裂骨折(疲労

骨折)が起こります。これが腰椎分離症です。腰椎分離症の治療には,まず早期発見,早期治療が大切です。発見が遅れると骨がつきにくくなり,慢件の腰痛になります。腰を反らせたときの痛みが2〜3週続くときはスポーツドクターを受診してください。分離症の程度と痛みの強さは,必ずしも一致しません。この骨折を早く見つければ,スポーツの中止とコルセットの便用で4〜6か月で治ります。治療せずに,腰痛を我慢して練習を続けると権弓が完全に分離してしまいます。その場合は,腹筋を鍛え,反り腰にならないような動きを覚えることで,痛みの発現を抑える

ことがでさます。

こどもの骨は軟骨で折れる(剥離骨析,骨端症)

スポーツ動作で,筋肉による牽引力が,その付着部の骨軟骨に働く際,急激に作用すると刹離骨折に,ゆっくりと繰り返して作用すると骨端症になります。剥離骨折は,トップスピードの動さで筋肉が強く収縮したり,届伸のタイミングがずれることで,急激に強い力が筋付着部に働き,骨軟骨が剥離するもので,骨盤によく起こります。サッカーのキックでは膝を伸ばす筋肉(大腿四頭筋)の力で下前腸骨棘が,ハードルでは膝を曲げる筋肉(ハムストリング)の力で坐骨結節が,幅跳びの着地では大腿四頭筋の力で脛骨結節が,投球峙には手首をてのひら側に返す筋肉の力で上腕骨内上顆が剥離します。骨端症は,スポーツ動作で筋肉を便うとその付着部に負担が徐々に蓄積して発症します。レントゲンでは,骨端線が不整になったり,分かれて見えます。スポーツで転倒したときは手首のすぐ上(模骨末端)に,また,強く足首をひねったときには足聞節に骨折が起こります。発育期には骨端軟骨を含んだ骨折となりますが,これを骨端線損傷といいます。

 

コンディショニングと予防: 運動選手のコンディショニングといえば,2つの意味があります。1つは運動への心身の最適化を図ること。2つ自は筋疲労を同復させたり体調を整えることをいいます。実際にコンディショニングを行う際は,運動前・中・後,帰宅後または合宿所など時期と場所に適した方法を選ぴ,テーピングやストレッチ,マッサージ,アイシング,温熱療法などを。テーピングは万能ではない:テーピングの自的は,けがの予防,救急処置と治療です。便用頻度の最も高い足関節のけがの救急処置としては間節の動きを制限するのがいちばんですが,予防のために巻くとさは足聞節の動さを制限しない方法が良いのです。しかしテーピングは万能ではなく,けががあってもテーピングをすれば運動できるというわけではありません。

とにかくストレッチ:運動前には,ウォームアップとしてストレッチを行い,これから使う筋肉や腱を伸ばし,関節を柔らかくしておきます。運動後は疲労して縮み柔軟性が低下した筋肉や腱の柔軟性をストレッチにより同復させます。とくに入浴中や入浴後のストレッチは筋肉や腱があたたまって柔らかくなるので非常に効果的です。慢性のけがで痛めた部位の治療や予防にもストレッチは大切です。疲れた箇所にマッサージ:マッサージは筋疲労の同復を目的として行います。ウォームアップの補助として,あるいは慢性のけがのケアとして軽くマッサージすることもあります。入浴や温熱と紺み合わせてマッサージすると効果的です。

けがの急性期は冷やす,回復期はあたためる:打僕,拾挫,肉離れなど受傷直後は冷やすのが基本です。ビニール袋に氷を人れたもの,タオルに冷水をひたしたものなどを便います。腫れのない軽症であれば数分問冷やすだけで十分ですが,腫れや皮下出血がひどいときは,数時間冷やすことも必要です。ただし時間冷やすときは凍傷に洋意しましょう。痛みや腫れが少しおさまり,けがから1〜3日ほど経過した回複期には,今度はあたため,軽くストレッチやマッサージを始めます。慢性のけがは運動前にあたため運動後に冷やす:慢性のけがは練習前あたため,繰習後はアイシングをするのが基本です。アイシングは練習後5〜15分間くらいで十分です。症状が強く,少し長めに冷やすときは凍傷にならないようタオルを間に入れるなどの注意が必要です。

柔軟度とけがの発生率との関連:運動によるけがの予防には,体調を調えるためのコンディショニングが大切です。なかでもストレッチにより柔軟性を高めることが重要です。これは,柔軟度とけがの発生率とに関連があるからです。また競技前後のウォームアップ,クールダウンも必須です。少しずつ運動強度を上げていき,競技レベルに近いところまでもっていきます。費やす時間は10−15分程度です。クールダウンも同様の時間をかけて筋肉や間節の疲労をほぐすようにします。

筋カと筋持久カを高める:筋力トレーニングも大切なポイントです。最大筋力を増すことが運動負荷に対する余裕を生み出します。また筋持久力を増すことで疲労による筋持久力の低下からオーパーユースの状態になるのを防ぎます。屈筋群と伸展筋群の筋力バランスを保つよう心掛けることも大切です。たとえば膝の脚伸展筋群である大腿四頭筋と屈筋群であるハムストリングの筋力バランスが悪いと膝の負担が大きくなり慢性のけがの原因となります。膝だけでなくすべての関節の運動に聞与する筋のバランスはオーバーユースを防止するうえからも大切です。