パネルディスカッション 抄録 00/07/10 掲載

スポーツ医療ー外来の現状と今後の課題 (座長 山崎 元先生 慶応大学)

演題名

開業医の立場から見たスポーツ外来の現状と今後の課題

 

川崎市医師会 健康スポーツ医部会

部会長 羽鳥 裕

 

 【外来の現状】 内科系の開業医が、日常臨床のなかでスポーツ医療へどう関っているかを述べたい。競技スポーツに対しては、都道府県レベルのスポーツ医学委員会を介してスポーツ医事相談、B/C級スポーツ指導員講習、国体選手の負荷心電図などメディカルチェックを行なう。Jリーグなどでは試合会場に医師がいる事が開催条件となっているものもあり、内科系医師も積極的に出動している。国体、インターハイ、国内国外の遠征随行を求められるが開業医には時間的束縛から困難であるが帯同するものもいる。競技力向上を目指して、整形外科医、運動生理、トレーナー、栄養、心理の専門家と各種競技に対してチーム活動を行なう。健康スポーツ医部会においては、一般市民、受診者を対象にスポーツ医学、生活習慣病予防の運動療法の啓蒙に努め、高血圧、高脂血症、糖尿病について運動療法指導管理料が設定され、地域医師会での具体的な指導方法を提示している。また、草の根地域スポーツ振興のために、体育協会、教育委員会と連携して、種目ごとのパネルディスカッションを行ない好評を得ている。マラソン大会、小中学校の連合体育祭、中学校駅伝大会では、行政、主催団体から大会会場での出動が要請されている。昨年秋に連続して起きた中学高校の学校体育授業における1,500m走の死亡事故を前向きに検討し再発防止にむけて選手、指導者への救急の実技、スポーツ医科学の講習を頻回に行なった。

 【今後の課題】 スポーツ医は、学校医、産業医のような法律、経済的な裏づけがなく、自分たちの会費で工面している。競技団体から競技力向上の予算獲得も難しい。スポーツにかかわる重大事故・ニアミスは、繰り返し頻発するため、行政も再発防止を重視している。メディカルチェックでは予防できないという報告もあるが、亜最大運動負荷心電図を含むメディカルチェックが一部の競技種目では義務づけられた。肉体ストレスの強い競技においては、これが必須であることの医療、競技関係者のコンセンサスが必要ではないか?また、学校医のように、地域スポーツにおいてもチームドクター制度、競技における医師派遣の義務化をめざしてはどうか?