{rightdoc_diseasememo}
シニアのためのスポーツ医学
50歳からのスポーツ現場での最新知識
Sports
medicine for coaches and athletes
-older individuals amd athletes over 50-
M.A.Rogers,P.G.Wernicki,A.E.Shampoo
監訳 大西祥平、 訳 高尾良英、渡邉隆子
書評
羽鳥 裕 (はとりゆたか)はとりクリニック
川崎市医師会健康スポーツ医部会担当理事
マスターアスリートと非活動的な人の比較を通して、中高齢者のスポーツ指導において、実地医家が日頃感じる疑問に答えているタイムリーな書籍である。マスターズ大会など高齢者の活躍を見ると、何歳までトレーニングで鍛えることが可能なのだろうか? この疑問には、有酸素性トレーニングは、始めたときの体力の程度によりフィットネスレベルと運動耐容能は、20−25%増加する。50歳以上、さらに80歳以上であっても、20歳台と同じように酸素運搬能を改善すると述べている。筋力トレーニングは、数ヶ月持続すれば、30−40%骨格筋の筋力増加する。50歳を越えても20歳台と同じように筋力レベルを改善できる。85−90歳の高齢者にも筋力、筋持久力を改善したという報告がある。高齢になってもトレーニングの有効性を具体的に示してくれたことは、疾病を持つ患者さん、マスターアスリートの指導に勇気がもてる。
その一方で、中高年者の登山、マラソントライアスロンの疲労困憊による事故が相次いでいる。我々は、正確な情報をわかりやすく伝える義務がある。スポーツは個人の責任と言い切れない面もある。
スポーツ外傷の管理は、高尾先生の適切な訳注もあって、肩、腰、股関節、膝などの各論も、高齢者の相談を受ける事の多い内科医でも理解しやすい。又、炭水化物摂取の重要性、サプリメントへのコメントなど渡邉先生の訳もわかりやすい。
中高齢者の運動時体温調節は、加齢によって循環血液量・発汗量減少が暑熱耐性が減って、熱中症が増える。水分摂取法、対処法が具体的に述べてあり、熱射病が、アスリートにおいて、事故に次いで死亡率の2位を占める事は知っていなければいけない。
マスターアスリートと呼ばれる有酸素性トレーニングと筋力トレーニングエクササイズを良くしている40−80歳のグループは、若年からトレーニングを積んだものだけでなく、中高年になってから運動を始めたものにも、疾病の発病率が低く、若い運動選手と同様な健康状態を保つ効果があることが示されている。冠動脈疾患、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症にも言及してあるが、反論も多いところでもあり、説得力のある論拠が欲しいと感じた。運動生理学独特の用語の説明もあり、この分野に始めて触れる方にも親切である。著者も序文で読者の建設的意見を求めており、今後、この分野においては飛躍的な発展が期待されるので、知見を加えて精緻な増補改訂がでることを期待する。生活習慣病の保険活用も視野に入れたシニアスポーツ、運動療法の処方も待たれる。監訳の大西先生はこの分野にも精通されているのでご自身で書かれる総説を期待したい。
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}シニアのためのスポーツ医学
50歳からのスポーツ現場での最新知識
Sports
medicine for coaches and athletes
-older individuals amd athletes over 50-
M.A.Rogers,P.G.Wernicki,A.E.Shampoo
監訳 大西祥平、 訳 高尾良英、渡邉隆子